6話 超偉い人『ユウタさん』
真夜中トイレに行きたくなった。
「いやー真っ暗だな〜」
こう言う時こそ独り言を言ってないとやってられない。そもそもここは王宮でありえげつないくらいの広さがあるのだ。
「あーやっとついた」
相当な時間がかかりやっとトイレにたどり着いた俺はドアを開けようとする。ガチャ。
「開かない。カギしまってね?これ。」
ガチャ。ガチャガチャガチャ。ガチャッガチガチャ。
「開かない…」
これカギしまってんな。どうしよう。…そう言いば、王宮は兵士達が一定のペースで見回りをしていると言っていた気がする。だがここまで真っ暗な場所にあまり居たくないな。だって怖いし。それに今でさえ結構もれそうなのにあまりにも兵士がこなかったら限界がくるかもしれない。
「仕方ない。見回りの兵士達の休眠所まで行くか。」
お、そこの君。なぜ俺が兵士達の休眠所の場所を知っているか気になるようだね。教えてあげよう。昨日…いや、今日か?まぁ、いい。図書館で読んだ本の中にはこの城の案内図もあったのさ。
「あーやっとついた。」
相当な時間がかかりやっとたどり着いた。トイレとは階が違ったので結構疲れた。とりあえずノックしてみる。コンコンコン。
「誰かいませんかー?」
ドアがゆっくりと開き、俺と同じくらいの年に見える美青年が出てくる。
「なんだい、こんな夜中に…勇者か」
「トイレってどこっすか?」
青年はあきれたような顔をした。
「トイレくらい見回りの兵士達に聞いて欲しけどな。」
「え、あなたは兵士じゃないんですか?」
確かによく見てみるとそんなにゴツい防具は着ておらず、なんか華やかだ。
「あぁ、王直属の兵士だよ。」
あぁ〜、やらかした〜。この人偉い人だ。
「まじすか」
「あぁマジだ、まじ。ついでに言うとこの国の軍隊の総責任者だよ。ん?そう言えば君を見たことがあるような気がするなぁ。え〜と、君はあれか?スキル無しの子か?」
そーいえば周りの人からすればスキル無しってことになってるんだった。
「はい。そうです。」
男の双眼が知性の満ち溢れるような緑色に強く輝いた。
「『鑑定』」
「あ!!!」
やばいやばいやばい!
「なんだ。そこそこすごいスキル持ってるじゃないか。」
やばいやばいやばいやばい!どうするどうする?!こう言う時は取り敢えず強気になってみよう。
「ほう。私のスキルを見破るとは…お前なかなかやるな。名はなんという?」
男の口角が少し上がった。
やばい失敗したか?!
「ハッーハッーハッーハッハ、この俺に名を聞くとは! よかろう。教えようじゃないか。俺の名は『ユウタ』だ!」
やばい反応に困る!
「ほう、元祖勇者か…」
男の口角がもっと上がる。
「そうだな〜!この国の最初の勇者と同じ名だ!」
やばい。反応とか何よりもトイレ行きたい!
「まぁそんなことよりトイレへ案内してくれないか?」
そのままトイレまで案内され、最終的には部屋まで送ってくれた。ユウタさんはいいひとだった。まぁ1つ気になる事と言えばユウタさんの首元にずっと禍々しい色の魔法陣が浮かんでたけれど、おそらく身体強化や暗視などの魔法だろう。