1-1 ワールドトラベラー
初投稿作品になります。誤字脱字や、変な日本語にならないよう努力致しますので、暖かく見守って下さい.......
【この無数の世界は、一種のパラレルワールドのようなもので、誰もが入れる訳ではない。しか、何億と存在する世界の中で、ごく稀に世界を自由に移動できる力を持った者が現れる。
それを知る者達は、その力を持った者を、
《ワールドトラベラー》と呼ぶ。
ーディオス・ヴァーデンの日記ー】
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絶壁。
目を開けて、初めての光景だった。綺麗とも不細工とも言えぬ、古びたレンガの壁は彼、
レイン・オルタナティブの視界を遮った。
また、変な所に飛んだか。
とりあえず一歩下がって、壁と距離を取る。そして左右を軽く見渡す。両脇ともに壁に囲まれている。
では上はどうかと、首を少し上に傾ける。
視界の両端は壁に囲まれているものの、透き通った青空が広がっているのを確認した。
自分の背後も確認する。
そこには道があり、軽く進むと、両脇にカーテンのしまった窓や、木で作られた立て付けの悪そうな扉が付いていた。奥はT字に道が分かれている。
どうやら路地裏に飛んできてしまったらしいな。と小さく溜息をつく。
「まあ...こういうのは慣れているけどな」
彼は右手を出し、魔術師特有の詠唱を短めに済ませると、紫色の鬼火のような小さな炎を掌の上に形成した。その炎の中央ではギョロリと不気味な目が忙しなく、周囲を見渡しているようだった。
それを真上に放ると、炎は上空へとふわふわと上がっていき、路地裏を作る建物の上まで登ったと同時に、そこでピタリと停止した。
「周囲はどうなっているかな....」
彼は目を閉じ、炎と精神を繋げる。
炎の目は彼の視界となり、彼に周囲の情報を伝える。
そこで、彼はそう遠く無い所に、生物の集団を見つけた。
「見た感じ、市場ってところか...人間が多いが、ドレイク型の半人や、エルフもいるな...」
一通り確認した彼は、再び詠唱し、炎を消した。
危険なデーモンやゾンビの多い「世界」では無いようだ。と彼は少し安堵した。
「(今まで、色々な世界を見てきたが、どこもかしこも故郷のデオザロッサみたいに、ゾンビやらデーモンやらが多すぎて新鮮味が無かったからな....今回が初めてじゃないか、こんなに穏やかなスタートは!)」
彼は軽く笑みを浮かべると、
黒い革の手袋をはめた左手で、自分の薄く茶色がかった髪を軽く整え、一呼吸した後、ゆっくりと歩き出した。
藍色のその目は、好奇心に駆り立てられた子供のように輝いていた。
「さて、この世界には、どんな未知が待っているのだろうか?」
未知に誘われた、ワールドトラベラー:レイン・オルタナティブの物語とその運命は、此処、帝国 グリアナより大きく変わり始める。