俺騎士団に入る?
マリー、ジャンの家へ向かう道を歩いていると、神が何かを発見した。
「ん?遥さん、あそこで何か人だかりが出来てますよ」
「そんな事よりマリーさんに謝る方が先でしょ!」
「いや、あれは喧嘩ですよ!」
遥はおいおい、と神に心の中で突っ込みを入れながらも
トラブルの現場へ向かった。
周りの人をかき分け、その様子を見ると、
女性が今にも男性に殴られそうになっていた。
「お願い、止めてください!」
「うるさい!」
「ちょっと待ったぁ!」
男性が拳を女性目掛けて当たりそうになったその時、
いても立ってもいられなくなった遥が叫んだ。
「何だお前?」
「え、えーと、状況が上手く飲み込めないんですけど、
話し合いで解決出来ませんか?」
「はぁ?おちょくってんのか?」
「いやだから、ここで争われるのは困るから言ってるんですけど」
「もういいわ。癪に触るなぁ、お前。ここでシメてやる!」
話がこじれた結果、男性を更に興奮させる結果となった。
しかし、遥にはこの状況を打開する手段が思い付いた。
「妄想!」
遥が叫ぶと同時に、男性の体は軽くなり、そのまま遥は
投げ飛ばした。
「うぎゃぁっ!」
「ふぅ、このチート技のコントロールも大体理解したな」
「神様、早くマリーさんの元へー」
「おい貴様」
遥が走りだそうとしたその時、後ろから何者かに肩を掴まれた。
「うぇ?何でしょう」
そこには、甲冑を身に纏ったいかにも騎士と言う風貌の男が立っていた。
「先の貴様の行動、見ていたぞ」
「今暴れていた男は有名な強盗でな。奴に商品を盗られそうになった
店の女将が乱暴されていた」
「はぁ・・・・・・そうなんですか」
「貴様の勇敢な行動は我等が騎士団に必要なファクターだ」
「ファクター、要因ですか・・・。で、その騎士団と言うのは?」
「エーカム宮廷騎士団、この国の王族に仕える気高き勇傑の集まり、
だったんだが・・・」
エーカム宮廷騎士団、彼らはこの国の治安を守る組織として
結成されたが、昨今の表の場での平和と均衡が保たれた日々によって、
次第に重要視されなくなり、騎士達の士気が低迷し、"腐敗"
してしまっていたのだった。
「・・・・・・という訳でだ。今からそこの騎士と組み手をしてもらう」
男の視線の先には、1人の若い騎士が立っていた。
こちらと目が合うと、無愛想な顔をさらにしかめた。
「えっと、あそこのイケメンは何者です?」
「彼はリシア。この騎士団最強の騎士だ」
「え、え、何故俺が最強と?」
「貴様を見込んでの事だ。"お手柔らかに"頼む」
「・・・・・・」