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異世界転生に物申す!  作者: テンペスティア
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俺回想する。

 「・・・・・・」


 "あれ"から数時間。その後マリーとの会話は無かった。


 予想とは裏腹にジャンに殺される、という事は

 起こらなかったが、「事情は後で聞く」と言われて、マリーの部屋から

 一向に出てこない。


 「俺、取り返しのつかない事をしちまったな」


 溜め息と共に遥が呟いた。


 「引きこもり野郎の俺のクソッタレな煩悩がこの事を起こした」


 「だから、責任取って、出ていくよ。神様、一緒に来てくれるか?」


 −この度は、本当に申し訳ありませんでした。

  ここに服の分になる紙と銅が入っています。


  さようなら−



 遥はこの様に書かれたメモと日本の現金を置いて部屋から出た。


 「遥さん、これは少し卑屈なやり方ではありませんか?

 貴方はまだマリーさんに謝っていないでしょう」


 「・・・・・・うるさい」


 神の言葉も耳を貸さず、廊下を歩いていると前の部屋からマリーが

 出てきた。

 

 「ハルカさん」


 「マリー、さん」


 「その、えっと・・・」


 「ごめんなさい!」

 

 その言葉を残し、遥は家を飛び出した。神もそれに続く。

 

 (だから嫌だったんだ、こんな所!)


 バチイの都の大通りを駆け抜けながら、遥は思い出す。

 過去の自分の事を。





 それは、中学1年の夏だった。彼は初恋をした。

 中学校になって初めて知り合い、彼女の可憐な姿に心が揺らいだ。


 夏休みに入る前に彼女に告白をした。


 「君が好きです」


 しかし、それに対する返答は想像出来たものではあったが、

 虚しかった。


 「でも、私はあなたの事、全然知らないの。だから」


 「ごめんなさい」


 この言葉で遥は自分の自惚れに気付かされた。

 

 遥は幼い頃から様々な物に関して類いまれない才能を見せつけて来た。


 その為、自分に絶対的な自信を持っていたが、その意思は

 一瞬で砕けた。


 心に亀裂が生じた遥を最初に襲った試練は、いじめだった。

 前々から遥の才能をねたんでいたクラスメイト達は遥に復讐する

 機会を待ち望んでいた。


 告白した日の翌日、

 机には無数の傷と花瓶が置いてあった。


 最初は何かの悪い冗談だと思った。


 そして、休み時間。


 クラスの不良達に難癖を付けられ、女子には妙な噂をばらまかれた。

 周りの生徒は止める事無く彼と目を合わせようとしなかった。


 その陰湿かつ凄惨ないじめは1日中中続いた。


 その日から、遥は学校に行くことは無くなった。


 遥は家の中で未来への絶望感に囚われ生活するようになった。


 絶対行くと息巻いていた高校には勉強の遅れによって道を閉ざされ、


 親に反発する日々を送った。


 そんな彼を救ったのは、アニメと、一冊のライトノベルだった。


 「ハイパー召喚師テンペスティア!」


 書店に一冊、細々と置かれた本を彼は見つけた。


 適当ページをめくっていくと、いつのまにか、遥の目の前に

 新たな世界が広がった気分になった。


 前時代的かつ現代のラノベの王道展開もすかさずタッチした

 言わば混沌カオスと言うべき物語のテンポに遥は流された。


 早速購入し、何度もその物語を味わった。話は一巻で完結するも

 濃密に凝縮されたストーリーと余韻を残し、読者想像を膨らませつつ

 満足に足る最後、美しい挿絵。

 その本の全てが彼を楽しませた。


 そんなある日、15歳の誕生日。


 「ねぇ遥、お父さんがアニメの制作会社に勤めてるのは知ってる?」


 「それがどうしたんだよ、クソババア」


 遥の母親は顔を苦笑しながら話を続けた。


 「お父さん達が出したアニメ企画が採用されて、

 今度放送されるらしいわよ」


 それに続けて遥の父親も会話に参加する。


 「ああ。ハイパー召喚師テンペスティアって言うんだが−−」


 知らないよな、と続ける話を続けるつもりだったが、

 遥の「作るの?」という言葉にかき消された。

 

 「お、おう」


 「凄いよ父さん!俺の誇りだよ!15年生きてて良かった!」


 遥はその日は珍しく大はしゃぎし、夜も普段より寝付けなかった。


 

 しかし、そのアニメは大失敗に終わった。父親のアニメ制作会社は

 その件から一向にヒット作を打ち出せず、最近話題のラノベを

 原作としてアニメを制作しても売れる事は無く、

 結局は倒産。父親も転職を余儀なくされた。


 「何が、ラノベだよ・・・」


 「何が、アニメだよ」


 「あの、本さえ無ければ!」


 部屋の中で遥は呟き、机の上に置いてあった

 「ハイパー召喚師テンペスティア」を破り捨てた。


 「こんな紙屑さえ、無ければ」


 「親父だって苦労しなかったんだぁぁぁぁ!!」





 「・・・・・・ふぅ」


 「どうしたんです?遥さん」


 「嫌、俺の生前の事を思い出してな」


 「そうですか・・・私も貴方を異世界に転生させるに当たって

 貴方の人生を拝見させて頂いていますが、とても、空しくて・・・・・・」


 「神様に空しいなんて言われるなんてな。ま、生前の事だし

 どーでも良いよ」


 「なんかスッキリした。帰ろう、神様。マリーさんに謝らないとな」


 「はい!」


 彼らは来た道をまた戻るしかし、そこにはさっきまでの

 暗さは無かった。

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