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日本皇国、日章旗を胸に  作者: 海空陸一体
形成期(明治~大正初期)
9/19

第五話

ふう。

やっとオリジナル艦が出せた。

1908年2月12日

まだ冬の寒気より、空から雪が降り積もる中。

成彦は帝国海軍横須賀ドックを視察していた。


「これが、新造戦艦薩摩型一番艦、薩摩か」

成彦がドックの最上階から見下ろす先に、日本海軍初の弩級戦艦が、巨体を静かに誇示していた。

史実では就役した時には、既に旧式の烙印を押された、薩摩型であったが、この世界では違う。

設計段階で、上層部から大規模な設計変更を通達され、艦船本部は更に一つの設計図を渡された。

それは、艦船本部を大混乱に陥れた。

確かに設計や建造のプロフェッショナルの、彼らから見れば子供の落書きの様な設計図だが、彼らの常識を超える設計をした戦艦の設計図だった。

それは、史実の長門型戦艦の設計図であった。

艦船本部は薩摩型を長門型の縮小改良した戦艦として、建造してしまった。

そのため薩摩型は、船体が長門型を模範した形になっていた。

船体長201メートル船体幅27.5メートル

基準排水量24500トン

武装は、国産30糎45口径連装砲を四基背負い式に装備。

前部艦橋前に二基、後部艦橋に連なる様に二基配備している。

副砲は新開発の15糎砲50口径をケースメイト式に片舷五門、両舷合わせ10門搭載。

対小型艦艇用に同じく新開発の7.6糎45口径単装砲を船体各所に14門配置している。

装甲は対30糎防御として完璧に近い。但し傾斜装甲式は技術的にまだ無理があり、実施されなかった。

機関は金が掛かるが、蒸気タービンで重油で動いてたため速力24ノットの高速を獲得していた。

居住性は良好、航海能力もクリッパー型艦首により高い。

たが、その長大な船体に対し、主砲が小さく見え、不似合いであった。

日本海軍はこれ程の戦艦が建造出来たのは理由があった。

それは、成彦の進言を受けた、明治天皇は軍官民問わず基礎技術の向上に努める様に勅令を出した。

基礎無くして応用が上手く行くはずがないと、成彦の言葉を受けた結果だった。

その結果が、目の前の薩摩であった。

薩摩は世界最良の30糎砲級戦艦として産声を上げた。

二番艦、安芸は呉で、建艦中であったが5月までに就役する予定である。

薩摩型改良型の河内型戦艦は来年の初めに一番艦、二番艦両艦共に実戦配備になり予定であった。

河内型戦艦は薩摩型で発生した、不具合を可能な限り改良した戦艦として就役する。

帝国海軍は自力でこれ程の艦艇を配備出来るようになった。

しかし、金剛型は史実通りイギリスに発注することになった。

限界であった。

4隻もの弩級戦艦の建造は人員的にもドックの質的にも限界だった。

だが、金剛型は薩摩の経験を多大に反映するのが決まっている。

金剛型、扶桑型、伊勢型の36糎砲超弩級戦艦群を建造する時には、ドックの新設、近代化,人員増強も終了する。

いわば、薩摩型、河内型は此れから建造される、超弩級戦艦のプロトタイプなのだ。

私は海軍軍令部で、これから始める列強による大規模にして無計画な建艦競争に対し、我々日本海軍は計画的に建艦するべきであると主張した。

海軍上層部は私の意見を無視する事が出来なかった。

陸海軍両大学校を主席で卒業し、しかも明治天皇のお気に入りだからなお更だ。

私の存在を妬む者も複数いる。

しかし、私は止まってはならないのだ。

日本に訪れる悲劇を無くす為にも、立ち止まる事は許されない。

私はそう思いながら、その場から立ち去った。


その姿を薩摩は名残惜しそうに船体をキラリと光らせた。





私がドックから出ると日本人ではない者が待っていた。

「ツァーリ、オ待ちシテ居ましタ。」

話しかけて来た男は帝国陸軍の制服を着て、訛りが激しい言葉使いだった。

肌は白く、身長も190センチはある白人であった。

彼の名は、ビクトリアル・コンスタン・ゲルビル少佐。

日露戦争で捕虜と成り、そのまま日本人として生きることを決断したロシア人の一人だ。


日露戦争で捕虜になったロシア将兵達の中で、日本人が武士道や軍規もしくは純粋なる好意さまざまな理由で世話をした結果、捕虜生活をした者達が、ロシアに戻るのはイヤだ。このまま捕虜として扱って欲しい、と監視していた日本兵に頼み込む姿が収容所各地で見られた。

ポーツマス条約により終戦が決まり、帰国が決まると自殺を図る者が多発した。

しかも彼らは日本への移住を熱望していた。

日本政府は、それを黙殺し、強制帰国させようとした。

そこに待ったを掛けたのが、成彦だった。

成彦は彼らの移住を認めるよう説得した。

日本政府はそれを必至に断り続けた。今の日本には、そんな余裕がないと。

成彦はそれに対しこう言った。

ならば私が纏めて面倒を見てやる。

唖然とする、政府の官僚達を前に颯爽と部屋を出ていくと、その足で皇居に向かった。

明治天皇は、成彦の意見を聞くと苦笑いしながら、認められた。

彼らが住む場所は、珠洲宮家が所有する長野の別荘がある山の麓に、町を作る事にした。

しかし、移住希望者は軍人だけで3000人以上、その家族を合わせれば、8000人を超えた。

私はその中から軍人1600人、家族も合わせると4500人を移住させることにした。

移住を外れてしまった者は、正規の移住手続きを優先して出来るよう、外務省に取り計らった。

そして移住してきたロシア人達の為に、新しく街が作られた。

そこは自然との共存を目的に、日本中の大工を集め、突貫で作られた。

街のあちこちに人口林があり、様々な木々が花を咲かせ、鳥達が飛び回っていた。

ロシア人達は新しい街を見て、泣き崩れる者が続出した。

建物はロシア風であるが、屋根は日本伝統の雪退け屋根になっていた。

一つ一つの大きさもそこまで大きくない。

しかし、ロシア本土の厳し過ぎる生活と比べれば、そこは天国だった。

彼らは新しい新天地を与えてくれた、成彦をツァーリと呼んだ。

成彦自身は嫌だったが、止めてもツァーリ、ツァーリと呼び続ける彼らに根負けした。

そして移住してきた、ロシア将兵から編成された日本初の外人部隊、「ロシャーナ」が出来た。

彼らは、成彦を頂点とする独立部隊であった。

人員、1600名で一個連隊で、指揮官はビクトリアル・コンスタン・ゲルビル少佐が務める。

そう言う訳でロシア人が、帝国軍人をしているわけだ。



自分、ビクトリアル・コンスタン・ゲルビルがツァーリに初めて会ったのは、マツヤマの収容所だった。

ロシアに帰国する事が決まり、隠し持っていた拳銃で自殺を図った。

その時、ツァーリに殴られこう言われた。命を粗末にするな!

ツァーリは私の今までの人生を真剣にお聞きになられた。

孤児院で育った事。生活の当ても無く、軍に入り士官に上手く成れた事。軍人に成れたはいいが貴族士官優先で生活を苦しかった事。日本の捕虜に成り初めて人間らしい生活をする事が出来た事。

全て語った。

そしたらツァーリは、私が面倒見てやるから来い!!

そう言われ自分を含め多くの戦友達が家族を引き連れ日本に移住した。

自分は家族もいないのできのみきのままできたが。

そこで新しい生活を初めて間もなく、自分は「ロシャーナ」連隊の連隊長を務めることになった。

マツヤマに居た時、お世話になった日本人女性を妻に迎えることも出来た。

しかし、ツァーリには辞めてもらいたい事がある。

山から、オオカミを6匹も連れ街に来ないで欲しい。

子供達は無邪気だから、ペタペタと触れる事が出来るが、大人は恐ろしくて近寄れない。

ツァーリは時々この様なことをするから、困ってしまう。

だが、暫くしたらツァーリは新型艦の乗り込むと言っておられた。

色々と不具合がある艦らしいが、良い艦だ、と嬉しいそうに語っている。


自分はツァーリが帰られる時まで留守を守るまで。

全てはツァーリの導きのままに。






1945年長野県「ロシャーナ」連隊駐屯地

彼らはボロボロだった。

戦前、4000人居た将兵も、今では連隊発足当時の1500近くまで数を減らし皆、怪我をどこかしらにしていた。

沖縄で米軍を叩き潰した代償だった。

しかし、彼らそれ以上にツァーリが亡くなったことに悲しんだ。

自分達はこれからどうすればいい?

そんな疑問を頭がよぎった。

そんな彼らの前に、ツァーリのたった一人の肉親が立った。

「なにを落ち込んでいる!」

その声に全員が頭を上げた。

「貴様ら!父上は命を掛けて!沖縄を救った!確かに父上は死んだ!しかし!それで父上の志しが!無くなる訳でない!」

その人物が、掲げた物を見て全員、眼を見開いた。

そこには、打鉄があった。

「私は父上の意志を継ぐ!その証として打鉄を今!ここに抜く!」

打鉄が引き抜かれ、輝きを放った。

彼らは思い出した。

そうだ、我らにはツァーリの子がいる。

我々はそれを必ず守る。それこそがツァーリへの恩返しなのだ。

「義のマント、打鉄、この二つを証に!私は珠洲宮の名を受け継ぐ!!」

ツァーリの子は、紫の軍服に赤で義と大きく書かれたマントと打鉄を身につけた。

その瞬間ビクトリアル・コンスタン・ゲルビル中将が声を挙げた。

「新たなツァーリ誕生に!ウラァァァーーー!!」

ウウウウララララァァァァーーーーーー!!!!!

1500人の、将兵の雄叫びが轟いた。




あと一話やって、戦争の回かな?

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