表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失った時間  作者: MAMI
2/13

狂っていく

 時は流れた。

中学三年生。

部活も引退し、受験シーズンに突入した。

幸運にも、塾に通わせてもらっていた。

塾講師に恵まれたこともあり、地域で一番と言われている進学校も模試でいい判定だった。

お父さんもお母さんも嬉しそうだった。

一番仲良くしていた友達も、同じ高校を目指すとのこと。

モチベーションも上がり、すべてがうまくいっていた。

ように思えた。

一月。

受験も目前。

誰もが勉強モード。

私は今だから言えるけど、割と余裕があった。

と、いうのは、信頼できる塾講師が『この調子で勉強していたら、大丈夫』と言ってくれたおかげでそう思えた。

もちろん、自分自身はそれほど自信があったわけではない。

その言葉だけを信じてマイペースに焦らず勉強に取り組んでいた。

そんな日々を送っている中での悪夢の始まり。

 いつもと同じ朝。

少しだけ英単語の復習をした後、お母さんが用意してくれた朝ごはんを食べる。

食べ終わったら歯磨きをして顔を洗い、軽く化粧する。

髪の毛にアイロンを当てて、結ぶ。

それから制服に着替える。

あとは毎日一緒に学校に行く友達が迎えにくるのを待つだけ。

まだ時間がある。

トイレに入った。

トイレの中には歴史の年表を置いている。

自分なりにクイズを出して答えた。

…当たり。

大丈夫、大丈夫。

二問目外したら自信を失くすからやめよう。

そう思い、トイレから出ようとした。

その時、どこからか音がした。

ブブブブブ。

え?

何?この音。

ブブブブブ、ブブブブブ。

バイブ音だ。

PHSの音。

そう思った。

私、こんなところに置いたっけ?

まさか、お父さんの?

いや、確かお父さんはいつも定位置に置いているはず。

ブブブブブ。

まだ鳴り止まない。

どうやら頭上からのようだ。

便座に足をかけて、上った。

揺れている、その物体は、初めて見るものだった。

PHSではない。

携帯電話だ。

サブ画面に、名前が映し出されている。

見なくても分かっていた。

だけど、確認した。

違うかもしれない。

違うと思いたい。

携帯電話を手に取る。

震えた手。

いや、バイブで揺れているんだよね?

落ち着け…。

自分で言い聞かせながら、じっとそれを見る。

サブ画面にはあの女の名前だ。

『めぐみ』

あぁ。

やはり、終わっていなかった。

私は携帯電話を開き、電源を落とした。

バイブは止んだ。

そして、優しく携帯電話を閉じた。

制服のポケットに無造作に放り込む。

トイレから出たところで、ちょうどお母さんが私にこう言ってきた。

「まだお迎えこないのね、今日、遅いんじゃない?」

そう言えば、既にいつもの時間になっていた。

そこで、チャイムがなった。

ピンポーン。

「あ、はーい!じゃ、行ってくるね!」

「行ってらっしゃい」

お母さんは微笑む。

「行ってらっしゃい」

部屋の奥からお父さんの声がした。

でも、私は返事はせずに出て行った。

外に出ると空気はひんやりして、肌に突き刺さるようだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ