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あーどうも…一応自己紹介なるものを…藤堂 蒼哉…僭越ながらアイドルグループのリーダーというものをやっています……という訳で(どういう訳?)ボサボサのかつ…もといいウィッグとモノを着け、これまたぎゅう…強いて言うなら実に個性的な眼鏡をかけさせらています。
「…でけぇ、無駄に」
なんで驚いているかと言うと季節外れの転校生とベタな展開で…とにかく言おう…校門でか!税金の無駄遣い…。
「声に出てますよ…と言うかここは私立です…個人などが運営管理をする学校ですので税金は使われていませんよ?」
校門を見上げていると前方から線の細い美人さんが俺を見ながらクスクスと笑っていた。
「馬鹿で悪かったな!」
「そこまで言ってませんよ…私は九条 司です…僭越ですがここの副会長を務めています…よろしくお願いしますね?」
にこにこの笑顔で手を差し伸べられるが俺はそれを振り払う。
「あのね?そんな作ったような笑顔するなら他の人呼んでよ」
一応アイドルですよ?作り笑いのひとつふたつくらいは簡単に見破れますって。
「面白い…転校初日でこの俺をここまで楽しませるとは…気に入ったぜ!」
あれ?いきなり俺様口調?
「むぐッ…」
いきなりのキス!?…と思っているとくちゃくちゃと音をたてる九条…。
「むぐってなんだよ…」
「うるさいよ、九条先輩…」
俺は真っ赤にして怒鳴るが九条は聞いてるのか聞いてないのか分からないが楽しそうに笑ってやがる
「蒼哉…特別に俺のことを名前で呼ばせてやる」
ちょッ…何様!?
「お言葉に甘えさせて変態と呼ばせて頂きます」
…口調はムカつくがせっかくの好意を無駄にすることは出来ない…。
「……なら俺もその期待に答えるとしよう」
嫌味を言ったはずなのに九条先輩が笑ってるのは気のせいか?
「……分かりました、謹んでふたりの時くらいは司って呼ばせて頂きます」
身の危険を感じた俺はすぐさま訂正…なんだか俺…軽くあしらわれてないか?
「…俺も蒼哉と呼ぶぜ、分からないことがあれば何でも聞けよ」
「……さっそく尋ねているのに疑問符が無いのはなぜですか?」
「確認作業だからだ」
なるほど…分かります、俺の意見は無視なんですね?
「案内してやるからさっさと行くぞ?」
俺は何故か手を引かれながら馬鹿でかい校舎へと足を踏み入れた。
……………。
……視線が痛いのはどっかの変態が俺の手を離さないせいだろう。
「…どうしたんですか?蒼哉くん…体調でも悪いんですか?担いで行きますか?」
冗談じゃない…大体知っててこういうこと言うか?普通!?
キィと睨むと若干顔を崩し笑う司…おかげで…。
「なにあのオタク…九条副会長に微笑まれて…生意気よ」
この…なら今すぐ女口調やめて俺と立場変われ!。
「ホントだよね…ボサボサ眼鏡くせに…九条様が穢れる」
この人は元々穢れてますよ?
「……穢されるのは蒼哉ほうだけどな?」
「何か言った?」
なんか悪寒が走ったのだが…。
「気のせいです…理事長室に行きますよ」
なんだかはぐらかされている気がしたが理事長と聞いて俺は気を引き締めた…。
……………。
ただいま理事長室前…。
「…さて魔境にたどり着きましたよ…さ、司先輩?俺のために魔境の扉をお開けください」
「は?頭でも…ぐはぁ!?」
魔境の扉を開けるといきなり司先輩が突き飛ばされる…危なかった。
「ソウたん、ソウたん、今日も…あれ?………誰コイツ?」
尊い犠牲は忘れない…。
…てか、抱きついた相手が俺じゃないと分かった途端態度を急変させたぞ?一応愛すべき教え子だろ。
「私めが愛してるのはソウたんのみです」
「堂々と言うな…しかもお手製のはっぴとか持参するなキモイ!………と忘れかけたが俺の心を勝手に読むな」
俺は落ち着いて司先輩の上にいる理事長目掛けて回し蹴りを放つ…うっとり顔で俺の蹴りを受ける理事長…威力が弱かったか?
司先輩はこめかみに青筋を走らせながら俺を睨む。
「こうなることを読んでたろ?」
「はい、助かりました」
「(コイツ…オタクみたいのに艶っぽい)」
「(チッ…ソウたんの色気の前ではたとえオタクルックでさえ鬼の副会長も一日で骨抜きか…特にソウたんのクラスは曲者揃い…生徒会ほどではなとはいえ気を配っていて損は無いな…)」
俺がペコリと頭を下げると真っ赤になって怒る司先輩……あれ?理事長も心なしか機嫌悪い?
「ちょっとソウたんと話がありますので司くんは先にここまで結構です」
「分かりました」
俺が首を傾げてると話が…待て!こいつとふたりっきり!?
まずいぞ…何されるか…。
「……なにか考えてるようだけど…もう司くん行ったからね?」
人が怯えているというのにさっさと帰ったのかあの腹黒…。
「さぁ……さっさと理事長室に入ろうか?」
俺は無理矢理腰に手を回され理事長室に引きずりこまれた。