セオリー無視の作戦
じぇにぃとコンビで戦うようになってから、俺達紫苑軍の快進撃は続いた。
一日一要塞攻略の目標は、ほぼ確実に達成してゆく。
しかしまあ、如何せん戦力が少ないわけで、勢力を拡大しても空き巣を狙われればいっかんの終わりでして。
結局は重要拠点を守るのが精一杯だ。
コロニーシオンとカテーナ、そしてコロコロコロニー。
この三カ所を結ぶラインだけが、はっきりと我が領域と言える場所。
紫苑「…」
スピードスター「♪」
紫陽花「はぁ~」
アライヴ「やっぱりプレイヤの味方がほしいな。」
じぇにぃ「ぅちらさぃきょぅなのにぃ~まもれるひとがぃなぃもんねぇ…」
この悩みは俺達だけではない。
ダイユウサク軍だって、身内だけでやっているから、そこそこまで勢力を広げたけれど、そこで行き詰まっているし、ジーク軍も今はおとなしい。
サイファさんところは、何故か友好関係が多いから、少しずつ巧く広げているけれど、それでもそろそろ手詰まり感がある。
いくら国力があっても、今回はプレイヤの数が圧倒的に必要なシステムなんだ。
人が増えない事には、勝負がつかない。
誰かを誘う?
って、これがこの会社の作戦だったのかもしれない。
人がいないと攻略できないゲーム。
参加していない人を誘うと、ユーザが増えるって寸法だ。
そんな事がわかったところで、どうにもならんのだけれど。
紫苑「ネットで集めるか。」
スピードスター「うむ~♪」
この考えは、実は前々からあったが、結局やめた方法だ。
理由は、いくら裏切りが少なくなったとは言え、やはりジークのように現金で寝返りを求められれば、おそらく寝返る可能性もあるし、なによりまじめにやるかどうかが疑問だ。
やりたい奴はおそらくすでにやっているだろう。
13192有る拠点と3つの要塞戦艦。
その全てにプレイヤを配置するだけで、プレイヤ13195人が必要だ。
それもアクティブな人が。
でないと何処かしら守りができない場所がでてくる。
現在このゲームの戦闘時間の、戦闘に参加しているユーザー数を見ると、ほとんど拠点の数とイコールだ。
それは、攻めるもひとり、守るもひとりで成り立つ計算で、そもそもこの人数でゲームのクリアが可能なのだろうか?
それでも統一となると、単純に一陣営にこれだけの人数が必要になる。
これは戦って戦って、勝って勝って、他よりも圧倒的に高いレベルと、戦力を得るしかないな。
アライヴ「先は長いな。」
紫苑「まあ、20億だからな。」
紫陽花「この会社の年間の純利益を考えると、5年以上は続けて貰いたいところね。」
スピードスター「なるほど♪」
じぇにぃ「はなしがぁむずかしぃからわかんなぃよぉ。」
アライヴ「とにかく俺とじぇにぃで勝ちまくるしかないって事よ。」
じぇにぃ「なるほどぉ。」
紫苑「なるほどそれだ。」
俺とじぇにぃの会話を聞いて?いた紫苑さんが、何か思いついたようだ。
紫苑「サイファと相談してくる。」
紫苑さんはそう言うと、しばらく通信を切った。
通信を切る必要が有るのかどうかは知らないが、何かしらの交渉に集中したいのだろうか。
それよりも・・・
アライヴ「紫苑さんどうするつもりだろう。」
スピードスター「任せておけば大丈夫♪」
紫陽花「私が伝えるね。」
そっか、紫陽花さんは紫苑さんの奥さんで、紫苑さんとならんでゲームしてるって言ってたもんな。
アライヴ「どうですか?」
はっきり言って気になる。
ファーストの時、四天王が裏切らなかったらおそらく優勝していた紫苑さんと、もっとも優勝に近かったサイファさん。
このふたりで相談。
どんな作戦なんだろうか?
紫陽花「言えない。(笑)」
なんですとぉ?!
しばらくしてから、紫苑さんが通信回線を開いた。
紫苑「作戦決定。」
アライヴ「言えない作戦ってなんです?」
紫苑「(-_-メ)」
紫陽花「汗」
スピードスター「♪」
なんだ?
味方にも内緒の作戦なのか?
紫陽花「話しても良いよね?」
紫苑「わかった。話すよ。」
スピードスター「♪」
どうやら話してくれるようだけど、これは結構やばい作戦なのかもな。
紫苑「まず、サイファ軍との同盟関係を解きます。これは次回期限の更新をしない事でやります。1週間後。」
なんと、サイファさんと話して、同盟を解消するのか。
これは・・・
紫苑「もちろん、裏では友好関係は維持するので、決して戦闘は行わないように。」
やはり。
紫苑「そして同盟解消後、俺と紫陽花は、親のIDでサイファ軍に入り、直接勢力拡大に協力します。」
なんと、そんな事すると、この軍の大将と中将が共にいなくなるって事じゃん。
アライヴ「IPアドレスが同じになるから、自宅からだとできないんじゃ?」
紫苑「もちろん。その間、紫苑および紫陽花は一切行動できません。」
それで、紫苑軍はどうするんだ?
実質俺とじぇにぃ、そして星さんだけになるって事だ。
これは厳しいんじゃね?
アライヴ「しかし何故そんな事をする必要が?」
紫苑「理由は、サイファ軍を、ジーク軍とダイユウサク軍に匹敵する勢力にする為。できれば星、おまえも別IDでサイファ軍にきてくれ。」
ええ!!
それでどうやってやっていくのだろう。
スピードスター「♪」
紫苑「了解と受け取った。(^0^)/」
おいおい、了解しているよ。
アライヴ「何故匹敵する勢力に?」
紫苑「もしアライヴが死んだとして、何処の軍に入る?」
アライヴ「そりゃ、紫苑さんのところに戻りますよ?」
紫苑「でももう滅亡していていたり、優勝の望みが全くなければ?」
アライヴ「う~ん。やっぱ強いところかな。ダイユウサク軍は無理だし、ジーク軍はあまり好きじゃないから・・・そっか!」
紫苑「そゆこと。サイファ軍を第三勢力にすれば、死んだ人の多くはサイファ軍に流れる。」
アライヴ「後はジーク軍と、他に強いと認めた人のところに行くわけだ。」
紫苑「だから、俺達がいない間に、アライヴとじぇにぃで、がんがん攻めまくって、殺しまくってくれ。それも強さを見せて。」
ははは、殺すって事をすっかり忘れていた。
人型が手に入らないし、経験値が大きく無くなるわけでもないから、殺す事にデメリットはあっても、メリットは無いと思っていた。
どの攻略サイトにも、どの掲示板にも、プレイヤを死亡させる事、完全破壊をする事は愚考として言われている。
紫苑「この作戦は、君たちの強さにかかっている。」
これは、完全に紫苑さんが、俺とじぇにぃを信頼しているからこそできる作戦だ。
この信頼に応えないで、何がエースパイロットだ。
アライヴ「俺はやるよ。じぇにぃも良いか?」
じぇにぃ「ふふははぁ~やるにけってぃ~!!」
こうして俺達の作戦は始まった。
って・・・
アライヴ「で、何処が言えないような作戦なの?」
紫陽花「この人ね、もし紫苑軍がそれで駄目そうだったら、そのままそっちに入れてくれって言ってたのよ。」
紫苑「君たちが強ければ問題ない。」
・・・
まあ、俺達が強さを見せれば、やられた奴らの一部は紫苑軍に志願してくるだろうし、問題ないから良いって言えば良いんだけど・・・なんかしっくりこないな。
これが紫苑さんの強さでもあるから、驚きも反感もないけどね。