しゃこたん追撃
紫苑さんからの通信によると、紫苑軍領域に入っていた美菜斗軍も、撤退を開始したようだ。
こちらが追撃をかけている事を伝えると、紫苑さん達も追撃するとの事。
図らずも再び、絆連合が結成されたと言う事か。
と言っても、同盟関係はサイファ軍だけだし、ジーク軍とダイユウサク軍は、最大の敵であるわけだが。
さて、現在敵を追撃中のキャンサーだが、俺はこの人の事を正しく評価せず、まだまだ軽んじていたようだ。
いや、素晴らしいプレイヤなのは先ほども言ったとおりだが、そんなに簡単に言い表せるような素晴らしさではない。
この追撃戦の中で、既に敵艦船を4隻も落としていた。
しゃこたんの実力は、紫苑さんや紫陽花さん以上かもしれない。
小麗さんと戦っても良い勝負をしそうだ。
艦船同士で戦って、どんな勝負になるのかわからないが、そんな事を思った。
いくらか時間が流れた。
俺は既に飽きていた。
逃げる敵を追撃しているわけで、俺は戦況を見ているだけ。
特にチャットで世間話をする事もないし・・・
いや、言いなおそう。
特にしゃこたんとチャットできるわけでもないし、なんてもったいない時間を過ごしているのだろうか。
まあ、前のグリード軍の方々のように騒ぐのもどうかと思うけれど、ちょっとくらいはねぇ。
そんな事を考えていたら、俺はふと思った。
俺って何気に、女の子に囲まれてゲームしてないか?
パープルフラワーには、紫陽花さん(人妻)チョビ(女子中学生)みゆきちゃん(女子大生?)と、主力は全て女性。
その前はじぇにぃ(女子中学生)とコンビを組んでいたし、サイファ軍と一緒に戦う時は、いつも今日子さん(女子大生)と一緒だ。
ダイユウサク軍と関わる時は、いつも夢さん(若奥さん)だし、意外と良い環境なのではないだろうか。
前作では、群青さんの元、むさくるしい男どもの中で戦っていたけれど、運が向いてきたのかな。
でもよく感がたら、こんなゲームに熱中できる時間があるのは、女性の方が多いかもしれない。
大人の男性って、なかなかディープに参加するのは辛いだろう。
紫苑さんがどんな仕事をしているのかは知らないが、定時に帰ってこれるから、これだけ参加できるのだし。
俺もそうだが、サイファ軍の主力はみんなニートだし。
ま、そのおかげで、20億円争奪戦ができているわけだから、ニートから賞金稼ぎにジョブチェンジできるかも。
「ニートはネットゲームで賞金稼ぎしなさい!」なんて親に怒られる時代がきたりして。
でも、人に凄いと思わせうる事は、必ず金になるはずだ。
歴史がそれを証明している。
将棋や囲碁は、もともと単なる遊びだったはずだ。
その遊びで強い人が現れて、みんなから尊敬されるようになる。
そこでその戦いを見たい人が増えてきて、収拾がつかなくなってきて、見たい人から金を取って調整しているうちに、プロというものができたに違いない。
スポーツ選手もそうだ。
人を引き付ける魅力以外に生産性は何もないが、その人を引き付ける魅力が、プロスポーツ選手という職業になり得る。
広告塔だ。
そう考えるなら、近い将来、ゲームで強い人が人々の尊敬を集め、その戦いを見たい人が増えれば、プロゲーマーもきっと認められるのだろう。
既に、ドリームダストはそれだけでも生きていけると言われているし、ゴッドブレスの人達は、賞金で生活していると言っていた。
もしプロができたら、俺はプロゲーマーになりたいのだろうか。
そしてなれるだろうか。
きっとなれる。
なんせ、ドリームダストや、ゴッドブレスと、同じステージで戦っているのだから。
長きにわたり、頭の中で色々と考察をめぐらせていたら、いつの間にか、決戦の地へと到達していた。
此処まで俺の出番が無かったって事は、いくつかの要塞はスルーしてきたのだろう。
今更ただの要塞を攻略したところで、戦略的意味は少なくなっている。
基本的に、必要なのは生産性のある場所だけだ。
ただの要塞は、艦船の駐留場所として後方に必要なだけあれば良い。
このゲームは既に、成熟期に入っているのだ。
さて戦場は、おそらくは敵の最前線基地、コロニーふにょにょにょだ。
コロニーふにょにょにょと聞いて、全く誰がこんな名前をつけるのだろうかと思うが、ネット上では色々な人が集まってきてるので、この程度ならまだまだマシな方。
それよりも今回の戦いでは、コロニーってところがポイントだろう。
前線基地は、できれば有人要塞が最善だ。
でもこの辺りは意外と小さな軍が多い空域で、有人要塞を手に入れる事が出来なかったとみえる。
美菜斗さんは、カリスマであるが故に、小さな軍をむやみに攻めたりはしない。
誰が見ても明らかに、戦略上必要な場合は攻めるが、基本は話し合い重視だ。
だから今美菜斗軍が攻める可能性のあるのは、優勝争いに残っている、今戦っている軍だけだけと言える。
カリスマは維持するに値するスキルではあるが、それが今回あだとなるかもしれない。
コロニーの守りは、要塞のように防衛システムがほとんど無いし、地の利も全く無い。
同じ戦力なら、通常は守りの方が有利ではあるが、コロニーだけはそのイニシアチブはほぼゼロに等しかった。
長々と話したが、要するに俺達に有利な戦場って事だ。
今日子「やるよ!みんな出撃!」
アライヴ「了解~」
キャンサー「頑張れよ!w」
しゃこたんに頑張れよと言われたら、頑張るしかあるまい。
なんでもないただのコロニー戦だけど、俺にとっては少し気分が盛り上がる戦いとなった。
そんなコロニー戦が、この宇宙の絆Ⅱの戦いを大きく動かす事になろうとは、この時はまだ、知る由も無かった。