ジーク再び
最近の俺は、フェンネルダガーと、シールドフェンネルを試していた。
あの大人気アニメのファングと、シールドビットをパクったものだが、今一使い勝手が悪いからか人気は無く、使う人はドンドン減っていた。
まずフェンネルダガーから説明すると、大きさはフェンネルの約3倍で、フェンネル3機のスペースに1機しか搭載できない。
攻撃は、簡単に言えばフェンネルの突撃で、それで相手を斬りつける。
それなら、フェンネルでビームを撃った方がコストも良いし、スピードも速く、要するに、バリア対策のミサイル程度にしか役に立たないと分かった。
それでも俺はあの大戦で痛い目をみたので、フェンネルダガーを4機ほど、テンダネスに搭載する事にしていた。
次にシールドフェンネルだが、こちらも微妙だ。
大きさはフェンネルの約4倍で、専用の搭載ボックスが必要となる。
この時点で、人型の動きが落ちる事が想像され、あのアニメと同様、狙撃タイプの人型でしか使えそうにない。
数が無いと大きな効果も望めず、シールドフェンネルを使うくらいなら、盾を持った方が使えるってのが、一般プレイヤの評価だった。
だけど俺は、フェンネルを盾にして攻撃を防いだ経験もあったので、2機だけ、フェンネルのスペースを削って、搭載ボックスを肩のあたりにつけた。
さて、今日もまた俺達は、地道に領地拡大する為に出撃する。
最近はどの軍もおとなしく、積極的に動いているのは、俺達くらいなものだ。
もちろんあちこちで、小さな戦いは行われているが、どうでも良いような要塞の取り合いで、戦略性が見受けられない。
俺達が領地を拡大するのは、生産性の拡大の為に有人要塞とコロニーを取る事もそうだが、強さを誇示する事も大切な目的だ。
美菜斗軍だけではないって事を示さなければ、みんなあちらに味方しかねない。
それでなくても美菜斗さんはネットゲームのカリスマなのだから、得意になって見せつけるくらいでないといけないと思った。
アライヴ「そろそろ出るよ!」
紫陽花「了解~よろしく!」
俺は再び、紫陽花さんのパープルフラワーと行動を共にしている。
大戦の時は久しぶりに紫苑さんのパープルアイズに乗ったけれど、どうもしっくりこなかった。
俺の帰る艦船は、もうパープルフラワーなのだな。
今日も必ず此処に戻ってくる、そう決意して出撃した。
戦闘は今日も絶好調。
なんの問題も無い。
フェンネルダガーを使ったり、シールドフェンネルで何処まで守れるか試したり、それでも楽勝なのは、俺が成長した証拠だろう。
今なら水陸両用のモノトーンで戦ってもそれなりにやれそうだ。
俺は勢いにのって、敵の要塞内へと入って行った。
外にもまだ敵は残っていたが、楽勝だし、あとはチョビとみゆきちゃんでなんとかなるだろう。
それにチョビはもう完全体だ。
何かあっても、戦闘終了まで戦える。
チョビの話によれば、毎日のように、母親から200万円は?なんて聞かれるらしい。
ご安心くださいお母さん。
おそらく今では、金利で400万円くらいに増えてますよ、きっと。
そんな事を考えながら、楽しく要塞の防衛機能を無力化していった。
もうすぐ20時になろうかという頃、要塞エリアから、拠点エリアへと入ろうとしていた。
その時、紫苑さんから通信が入る。
紫苑「ダイユウサク軍の最前線コロニーが、ジークに落とされた。(^0^)」
なんと、とうとうジークが動き出したのか。
それにしても、よくもまあ2カ月で立て直して、ダイユウサク軍のコロニーを落とせたものだ。
やはり地球に拠点を持つ事は、かなり有利だという事か。
ちなみに、ダイユウサク軍や美菜斗軍は、未だに地球に拠点を持っていなかった。
ただ、美菜斗軍に関しては、息のかかった軍がいくつもあるだろうから、機会があれば一気に美菜斗軍へと変わるだろうし、あると言って差し支えないだろうけどね。
それにしても、ダイユウサク軍の拠点がこんなに簡単に落とされるとは、どうも信じられなかった。
アライヴ「ダイユウサク軍、何かあったのかな?こんなに簡単に落とされるなんておかしいよね。」
俺の疑問は、当然の疑問だと思う。
だから紫苑さんも、その辺りの情報を集めていた。
紫苑「どうやら、今、地球降下作戦を決行中らしいよ。チャレンジャーだね。ま、空家を狙われたって事かな。」
アライヴ「ジークはそれを知っていたのかな?」
身内だけの軍、情報が漏れる事はないと思うが、そう考えなければ、説明がつかない。
紫苑「どうやらジークは、地球周りの空き要塞を占領して、宇宙に返り咲くつもりだったって話も。」
アライヴ「そしたらたまたま、ダイユウサク軍のコロニーが空き屋同然だったんで、攻めた感じ?」
紫苑「うん。」
まさか、そんな偶然が。
でも、実際そうなっているのだから、これに対してなんらかの対応が必要になるかもしれない。
本来、ジークとダイユウサク軍の戦いは、現状あまりよろしくない。
美菜斗軍に有利になるからだ。
こんなタイミングなら、美菜斗軍も自由に動けるというもの。
俺達4軍と、美菜斗軍がにらみ合っているから均衡を保っているが、4軍が内輪で争ったりしたら。
紫苑「くるか?」
アライヴ「美菜斗さんなら、きっとこんなチャンス逃さないかと。」
俺達がそう言った直後、嫌な予感は現実となった。
レイズナー「美菜斗軍が領内に侵攻してきたぞ。」
紫苑「紫陽花、チョビとみゆきだけ乗せて、ネコミミに急行!」
アライヴ「俺は?」
紫苑「自力できてくれwテンダネスなら、そんなに時間もかからんよね?」
アライヴ「いや、艦船と比べれば2倍はかかるかと。」
紫苑「頑張れ!」
こうして俺は、パープルフラワーに帰る事ができなかった。