セオリー
俺達はようやくジーク軍の領域に入っていた。
此処も美菜斗軍の領域と同様、どこもかしこも無人の空域。
これの意味するところは、総力戦で対決しているって事だろう。
そこに俺達が入っていって、ジークに加担する。
もし、ジークが勝っていたらどうするのだろう。
ふと思った。
いくら戦力差があると言っても、ジーク軍にはあの四天王がいるんだ。
そう簡単にはやられないはず。
群青さん、元気だろうか。
もしかしたら今日、一緒に戦う事もあるのだろうか。
少しドキドキしてきた。
時間は16時を過ぎていた。
予定ではもう間もなく到着のはずだったが、戦闘で足止めされていたので、1時間近く遅くなりそうだ。
17時頃かな。
17時にチョビが戻ってくると言っていたが、果たして戻ってこれるだろうか。
とにかく、確実に戻ってこれる時間は、19時だ。
いつもは18時頃には顔を出してるから、それくらいには戻ってくるかな。
そんな事を考えていたら、時計の長針は、真下をさしていた。
16時半。
イスカンダルまであと30分くらいか。
いよいよ決戦だ。
此処から先は食事もトイレも行けないかもしれない。
食事はさっき、パンを食べたので24時まではもつだろう。
トイレは今のうちに行っておいた方がいい。
アライヴ「ちょっとトイレw今のうちに行っておかないとねw」
紫苑「行ってら~(^0^)」
紫苑さんの返事を確認して、俺はトイレに行った。
サクッと行って、サクッと済ませ、サクッと俺は戻ってきた。
特に慌てて行ったわけでもない。
きっと何事もないだろうから。
そう思って戻ってきたのだが、俺は画面を見てビックリした。
美菜斗軍の大艦隊が、索敵画面に映しだされていた。
紫苑「どうやらこっちにはまだ気がついてないようだな(^0^)」
紫苑さんの通信に何人かが返事を返していた。
ハルヒ「ジーク軍と戦闘中みたいですね。」
じぇにぃ「ぁのかずぅ~はんぱなぃぃ~」
暗黒天国「背後とれたし、奇襲するべwでもまさか、有人要塞阿蘇山で迎え撃っていたとはね。当たり前と言えば当たり前か。」
スピードスター「コロニーじゃ戦いにくい♪」
俺の思った事は、皆が代弁してくれていた。
そう、まずは数が凄い。
艦船がこれだけ集まるなんて、前作ファーストの頃のような艦隊戦でもしようと言うのか。
そしてどうやら美菜斗軍は、ジーク軍と交戦中らしい。
だからか、背後の索敵を怠っていたようで、こちらに気づく様子も無く、何か動きがあるわけでもない。
奇襲をすれば成功するかもしれない。
それにしても、戦い方はシンプルというか、織田の鉄砲隊のようだ。
艦船を3グループに分けて、補給しつつ攻撃しているのだろうか。
詳細はまだわからないが、そのような戦術に見えた。
紫苑「では星、暗黒天国いつものかましてくれ(^0^)」
なんにしても今がチャンス。
紫苑さんは迷わず、奇襲を指示した。
まずは俺達の攻撃パターンのひとつで、相手に先制パンチを食らわず。
星さんの艦船、スピードスターに、動きは重いが火力は最強の、暗黒天国さんの人型ボスを乗せて突進する。
スピード最強のスピードスターにボスを乗せる事で、火力のある高速戦艦の出来上がりだ。
少ししたところでどうやら相手も気がついたようだが、今更遅い。
紫苑「アライヴ達も、出撃よろw(^0^)」
じぇにぃ「もぅぃってるよぉ~」
ハルヒ「はいw」
アライヴ「俺も今出るところ!」
それぞれに返事を返して出撃し、星さんの後を追った。
先制攻撃は成功した。
敵はかなり乱れていた。
それでも数が多いわけで、すぐに体勢を整えてくる。
どうやら対応策は最初から用意してあったようで、ジーク軍への攻撃と、こちらへの攻撃、そして補給グループに分けて、ローテーションして対応し攻撃してきた。
大量の艦船が、一斉に攻撃してくると、俺達は近づくどころか、攻撃をかわすので精いっぱいになった。
向こうはただ、大量の艦船で、単純な攻撃を繰り返しているだけ。
こっちはコントローラーの操作に必死で、息つく間もない。
完全な物量作戦だ。
弾切れまで頑張ればとか、一瞬甘い期待ももったが、初めて見る要塞戦艦がそれをうち砕く。
一生「バカでかい・・・」
きっと今日の24時までは補給できるように、物資を積んである事は確実だ。
いずれ俺が操作ミスすれば、そこでジエンドって事かよ。
それにしても、敵の人型が見えないのは助かった。
いやこの作戦は、人型がいては、味方も関係なく攻撃してしまう。
最初から人型なんて使わない作戦なんだ。
要塞内にジークがいる場合は人型も出すのだろうが、今はまだ敵戦力を削ぎ落す時間なのだろう。
それにしてもなんて作戦だ。
人型で戦うのがセオリーのこのゲームで、艦隊戦を繰り広げるなんて。
美菜斗さんらしいと思った。
人型よりも、艦船の方が火力あるもんな。
より強いものを使うのもセオリー。
それを素直に実行する、それが美菜斗さんだ。
でも、このまま人型をないがしろにされては面白くない。
絶対、どこか隙をついてなんとかしてやる。
そう決意して、俺は我慢比べを続けた。