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宇宙の絆Ⅱ  作者: 秋華(秋山 華道)
33/60

美菜斗の狙い

美菜斗軍にクマクマ軍が吸収されたのを皮切りに、次々と弱小軍が美菜斗軍へと吸収されていった。

吸収や合併には制限がある。

クライアント側で発表するランキングで、50位以内の軍同士では、合併も吸収もできない。

更に、吸収される側の軍に所属する者は、査定ポイントが大きくマイナスされる。

それは、その後優勝しても、たいして賞金は貰えないほどの、大きなマイナスだ。

優勝しそうな軍に吸収されようとする者を防ぐ為の処置だが、当然吸収される事を良しとしない人が多くなるペナルティだった。

だから、俺の頭の中には、合併や吸収という戦略は端から無かった。

しかし、冷静に考えれば、美菜斗さんらしい戦略だと思う。

ブラウザ戦国大戦の時も、同じような手を使って、一気に勝負を決めていたのだから。

それを知る者なら、この話を持ち掛けられれば、優勝できると思うだろう。

そして優勝すれば、査定で大きくマイナスがあったとしても、多少は賞金を手にできるかもしれないし、なんと言っても優勝だ。

ゲームだから勝ってなんぼだ。

賞金ばかり意識していたが、やはり勝たないとゲームは面白くない。

 紫苑「うはwドンドン美菜斗軍がでかくなっていくよ(^0^)」

紫苑さんの言葉に、全体マップを開いてみたら、秒単位で領域が塗り替えられていくのが分かった。

もう凄いとしか言いようがない。

これだけ多くの人を巻き込んだ作戦は、ジークでも無理だろう。

ふとジーク軍の勢力図が気になった。

マップ左下ブロックをみると、ジーク軍領域を、着実に美菜斗軍が取り囲んでいくのが分かる。

そう、美菜斗軍へと塗り替わるのは、もっぱら左下ブロックが多かった。

 アライヴ「美菜斗さんの狙いは、もしかしてジーク?」

なんとなく思った事を書いただけだったが、それは的を射た発言だったようだ。

 紫苑「おお!間違いない。ナイスアライヴ。これはできるだけ早くERROR軍を殲滅しないと。よろしく!(^0^)」

どうやら紫苑さんは、ERROR軍との決着を早めなければならない何かに気がついたのだろう。

 アライヴ「了解w」

俺はマップを閉じて、ERROR軍との戦闘に集中した。


23時を過ぎ、チョビがネットから落ちた後も、激しい戦闘は続いていた。

チョビがいなくなると、俺達の戦力はガタ落ちだ。

それでも俺達優位は変わらないが、今までより敵機を墜とすペースが落ちる事は必至だった。

 紫苑「曹操軍完全無視でも良かったな。(^0^)」

それは、レイズナーさんや光合成さんも、こちらに回せば良かったと言う事か。

俺は今のままで良い感じだと思うのだけどな。

しかし、ERROR軍を早く倒さないといけない何かがあるのだろう。

 紫苑「ん~どしよ」

紫苑さんは悩んでいるようだった。

すると直後吉報が入る。

 スピードスター「しゃにゃ軍撤退していく♪サイファが動いたかな?♪」

星さんから入った通信は、今あった懸念を払拭するものだった。

 紫苑「サイファ来たかwよし!星、こっちに戻ってきてくれ!」

 スピードスター「♪」

星さんがこっちに戻ってくる。

これで再びペースが上がりそうだ。

なんだかわからないけど、とにかく良かった。

そしてこうしてる間も、美菜斗軍は吸収を繰り返し、どんどん大きくなっていた。


0時を過ぎた頃、美菜斗軍の拡大は、ようやく終わりを迎えていた。

発表されている同盟ランキングでは、既にジーク軍を遥かに追い越して、1位になっていた。

そして、どうやらジーク軍へ大攻勢をかけるべく動き出したと、情報が入ってきていた。

情報発信者は、サイファさん。

サイファさんも、美菜斗さん同様、多くの人達と良い関係を築く事で勝利をものにするプレイヤだ。

だから今日この事態を、事前に知っていたのかもしれない。

ちなみに、サイファさんのところにも、美菜斗さんからID宛てにメールが届いていたそうだ。

我々に届いたメールと同じような内容で。

実際侵攻してきたようだが、サイファ軍は攻撃してこないと信じて無視したらしい。

するとすぐに撤退を開始したようだ。

撤退の完了を見届けた後、空家になったしゃにゃ軍を攻めてたという話。

しゃにゃ軍が撤退した理由は、やはりサイファ軍の侵攻だったわけだ。

美菜斗さんは今、ジーク軍を攻める。

その際、紫苑軍とサイファ軍を介入させない為に、こういった小細工をしたとすれば、我々は、この戦いに参戦する事こそが、美菜斗さんの計算を狂わせる最大の行為。

だから紫苑さんは、できるだけ早く、ERROR軍と決着をつけたいのだろう。

マップ右上ブロックにあるERROR軍の領域を全て取れば、先ほど美菜斗軍領域になったばかりの場所と隣接できる。

簡単に言えば、ジーク軍を攻める美菜斗軍の背後をつけるって事だ。

美菜斗軍は、ERROR軍を壁にして、しばらく凌ごうとでも思っていたのだろう。

だからもしかしたら、曹操軍をあおって戦闘へとかきたてたのかもしれない。

それでも実際、曹操軍、ERROR軍、しゃにゃ軍が全て全力で攻めてきたら、俺達が負ける事だって可能性としてあっただろうし、そのあおりは良い助言であったとも言えるのか。

サイファ軍も、きっと同様の事態だったのだろうか。

ただ、美菜斗さんに計算違いがあったとすれば、サイファさんもまた人気の高いプレイヤであった事と、紫苑さんを侮っていた事。

それでも、美菜斗さんの大きな優位は揺るがないわけだけどね。

せめて少しでもダメージを与える為に、俺はこの戦局に関係ないERROR軍との戦闘を続けた。

マップ上では、先ほどまであわただしく塗り変わっていた勢力図が、完全に沈黙していた。

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