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宇宙の絆Ⅱ  作者: 秋華(秋山 華道)
31/60

前触れ

土曜日の朝、紫苑軍はドタバタしていた。

原因は、紫苑さん宛てに送られてきた、1通のメール。

宇宙の絆Ⅱでは、メールに相当する機能は無かったが、銀河バリューネットの会員として、別の会員にメールを送る事はできる。

以前、ゲームのシステムに組み込む話もあったが、無駄な機能だとして、その話は無くなっていた。

まあそんな話はどうでもいい。

とにかく、問題は送られてきたメールの差出人と、その内容だ。

差出人は美菜斗。

内容は、紫苑軍領域に隣接する曹操軍が、今夜、我々に大攻勢をしかけてくると書かれていた。

狙いは、有人要塞カテーナ。

我が軍領域の後方に位置するこの要塞は、かつての最前線基地であり、後方を守る重要な場所でもある。

普通に今までどおり対応しても、そう簡単に落とされる要塞ではないが、落とされると流石に痛い。

とりあえず曹操軍への対応と、美菜斗さんがこういったメールを送ってきた意図を相談したいが、紫苑さんは「これから会社だから。対応は帰ってから(^0^)」と言い残し去って行った。

土曜日なのに仕事とは、全くついていない。

さて、どうしたものか。

誰かと相談したいが、こんな時間に相談といっても、相談できる人はおそらくいないだろう。

俺はぼんやりとモニターを眺めていた。

それにしても、とうとう美菜斗さんが動いた。

少し嬉しい気持ちもあった。

美菜斗さんと直接話をしてみるか?

いや、俺は戦国大戦の時と名前も違うから、話しかけても分からないだろうし、戦国大戦の時の名前を告げても、覚えてくれているかどうか。

それに通信じゃなく、わざわざIDナンバー宛てにメールを送ってきたわけだから、何か意図があるのかもしれない。

更にどうして、こんな情報を教えてくれたのか。

美菜斗さんの軍はまだまだ小さな軍なのに、現在3位の我が軍に有利な情報を、わざわざ教えてくれるだろうか?

これが、相手がジーク軍だとかなら話は分かる。

強い軍が更に強くなるのを防ぐ為って事だから。

でも、曹操軍が勝った方が、美菜斗軍には有利なはずだ。

だいたいこれは正しい情報なのだろうか。

いや、正しい情報だろう。

美菜斗さんが嘘を言うとは思えない。

美菜斗さんの人徳は知っている。

冷静に考えれば結論は一つ。

曹操軍は今夜、カテーナに大攻勢をかけてくる。

そして現在紫苑軍は、ERROR軍と交戦中だ。

今日も攻める予定だったし、向こうももしかしたら反撃を考えていたかもしれない。

マップ下側はサイファ軍との隣接地帯が多いから安全そうだが、以前戦闘状態だったしゃにゃ軍との隣接は切れてはいない。

曹操軍、ERROR軍との交戦を知ったら、空き巣狙いにしゃにゃ軍が攻めてくる事も十分あり得る。

だがこの中で、一番番厄介なのは、攻撃箇所、軍の規模、領域の場所、全てで曹操軍が際立っている。

ERROR軍も軍全体としては規模が大きいが、領域が二つに割れていて、我々と隣接している方は重要視されていない観がある。

俺の考えは固まった。

美菜斗さんの情報を信じ、今日は曹操軍に対応するべきだと。

紫苑さんが来たら、そう伝えようと思った。


18時頃、ようやく紫苑さんがあらわれた。

俺は既に他の人にも意見を話し、概ね同意を得ている。

だから紫苑さんも、そうする事に決定するものだと思っていた。

しかし紫苑さんは、ハッキリと言い放った。

 紫苑「今日もERROR軍領域に進行する!土曜日だし、今日と明日で、こちら側の領域を全部奪うぞ!(^0^)」

どういう事だろうかと思った。

曹操軍は間違いなく攻めてくる。

 アライヴ「いやでも、前面にERROR軍、後背に曹操軍、しゃにゃ軍もどう動くかわからないし、此処は曹操軍に全力であたった方が良くないの?」

 紫苑「曹操軍は別に怖くない。背後つかれてカテーナとか、シオンまで取られるかもしれないけれど、曹操軍なら簡単に取り返せる!(^-^)v」

紫苑さんは、カテーナも、そして最初の本拠地だったコロニーシオンさえも、取られて良いと考えているのか。

確かに、まともに戦ったら、俺達は確実に勝てる相手だけど、取られないに越したことはないのではないだろうか。

そこまでして、今日ERROR軍を攻める意味はあるのだろうか。

せっかく得た情報を無駄にする事もないようなきもするが。

 紫苑「レイズナー、もし曹操軍が攻めてきたら、カテーナ取られても問題ないから、なるべく損害を少なく、敵のダメージは多く、これだけ考えてくれ。」

 レイズナー「取られても良いのかよwだったら衛星兵器爆破してやるかw」

 紫苑「イイネ!まかせた!(^0^)」

マジでそんな事するのだろうか。

 アライヴ「そんな事したら、取り返しても、元に戻すまで時間も金もかかるよ。」

 紫苑「俺達は、既に地球に拠点を持っている。多くのコロニーや有人要塞もあるし、生産性は十分足りている。今更この程度の有人要塞を失っても、全く問題なし!(^0^)」

言われれてみればそうかもしれない。

俺は愛着ある要塞だったから、失う事が嫌だっただけなのだろうか。

 アライヴ「了解!じゃあ地球の人の作戦行動もそのままで?」

 紫苑「もちろん!(^0^)壁はガンダーラの守備、アブサルートはサハラの守備を、サラには地球での攻守全ての作戦指揮を頼む。宇宙はイゼルローンを中心に、てけとーとジークが駐留、レイズナーは後方全ての指揮を、前面は俺と紫陽花と星で。しばらくはこの形で大丈夫。」

此処までついてきた紫苑さんだ。

ファーストの頃からずっとやってきたんだ。

紫苑さんを信じよう。

俺はそう思った。

 アライヴ「美菜斗さんへの対応は?」

 紫苑「無視無視!(^0^)」

紫苑さんらしい。

そう思うと、なんだか安心してきた。

そして、程なくして、時計は19時をさしていた。

この紫苑さんの決定が、全ての人の勝敗を左右するほどの、大きな結果を、いや功績をもたらすとは、この時誰も知る由もなかった。

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