発表
今日の軍チャットは騒がしかった。
チャットだけではない。
2chや外部チャットでも、そしてテレビのニュースでも放送されていた。
いよいよ、このゲームの賞金と、査定ポイントの細かい内訳が発表されていた。
査定ポイントに関しては、ちょくちょく個別に発表があったので驚くところはない。
勝てば増えるし、負けたり、裏切ったりしたら減る、当然の配分だ。
テレビで騒いでいるのは、もっぱら賞金総額だった。
俺達から見れば、既に噂されていた事なので驚きは無かったが、20億という事でうわさどおりだった。
では、チャットで騒がれているのは、一体なんなのか。
それは、現状のランキングが発表された事だった。
そしてそれを見て、一番驚いたのは、俺だったかもしれない。
一生「俺が3位?」
テレビでは、このままいくと誰がいくら貰えるとか、予想までしている。
どうやら俺は3億貰えるらしい。
あり得ない。
ちょっと手が震えていた。
ちなみに1位は、多くの人が予想したとおり、ジーク、2位がサイファさんだった。
サイファさんと俺の差はほとんどなく、次いで4位が紫苑さんだったが、俺との差は結構大きかった。
ジークトップの内訳をみると、あらゆるポイントが多く、中でも買い物ポイントが多かった。
どれだけ買ってるんだとも思ったが、なんだかゲームに関係ないポイントが多いのもどうだろうか。
それがなくても1位だけどね。
サイファさんは、レベルの高さと、友好関係、共同作戦ポイントが多かった。
そして俺は、プレイヤキル、PKポイントが多かった。
プレイヤキルにデメリットが設定される前、俺は大量のプレイヤキルを続けた。
今では安易にプレイヤキルできないようになっているので、この3位は今だけのものであると理解できた。
ちなみに、一緒にプレイヤキルをしていたじぇにぃは、13位だった。
俺達二人は、いままでどおりやれば、確実にこの順位より落ちるのだろうと思った。
一生「でも、10位くらいはキープできるんじゃね?三千万くらいは貰えるんじゃね?」
俺はちょっと浮かれていた。
今日の戦闘は、なんでもない戦闘のはずだった。
しかし、金が目の前をちらつくというのだろうか、戦闘が雑になってしまっていた。
一生「しまった!」
俺が声を上げた時には、背後をとられていた。
テンダネスに乗っているので、冷静ならばすぐにカメラを切り替えればいいものを、何故か前方へ進んで距離をとろうとした。
すぐに距離を詰められ、背後から斬りつけられた。
みゆき「どうしたの?今日はなんだか調子悪いね。」
チョビ「そのぶんがんばる。」
2人から通信が入ったが、俺は返事をする余裕がなかった。
今の攻撃で、テンダネスのシステムに不具合が出て、動きが20%落ちていた。
金の事は忘れてやらないと。
やられて目が覚めた。
そこからは、チョビとのコンビネーションに集中し、上手く敵を倒していった。
致命傷でなくて良かった、強い敵がいなくて良かった。
運があるのかなと思った。
戦闘を終えて、テンダネスをパープルフラワーに帰還させた。
今回の戦闘では、久しぶりにかなりの修理が必要だ。
実際の時間で、1日では直らないように感じる。
こういう場合、リアルマネーをつぎ込めば、即時だったか早くだったか忘れたが、修理する事ができる。
一瞬リアルマネーをつぎ込みそうになったが、こんな簡単な事でつぎ込んでいてはきりがない。
三千万円くらい入ると思ったら、少し金銭感覚がくるってきたのかもしれない。
俺は自嘲し自重した。
修理は結局、次の日の戦闘には間に合わなかった。
これだけやられるのは、俺にとっては敗戦と同じだ。
この敗戦を忘れない為に、俺は切られた背中に、傷の形のペイントを入れた。
背中に稲妻を背負っているような感じになったが、格好良いとは思わなかった。
何処かの漫画に出てくる剣士が、背中の傷は恥だと言っていたが、ホントだなと思った。