総帥、徳を再投資(ベット)する~計算機は運命を書き換える杖です~
こう考えてしまう時点で僕には異世界転生とか書けない気しかしない
古龍の背中に設置された、特設の「ハミルトン・移動式CEO室」。
佐伯悠馬は、ショップスキルで低速制限を解除し、真っ先に注文した『カシオ製・特注実務電卓(ソーラーパネル付き)』を猛烈な速さで叩いていた。
「……お母さん。35万徳という数字は、個人で持つには多すぎ、一国を救うには少なすぎます。……何より、この『徳の蓄積』が世界からの重力(執着)を生んでいる。……ノア、これよりこの35万徳を、全額『世界の文明レベルの強制的引き上げ』に投資します」
「兄さん! ギャンブルっすね! 貯金を全部吐き出して、さらにデカいステージに挑む……まさに男のロマンっす!(野太い声での咆哮・古龍の鱗を磨きながら)」
「……悠馬様、全額投資だなんて! 私たちの『トイレ維持費』は大丈夫なのですか!?」
「……クラリス、安心しなさい。……計算によれば、文明が『中世』から『近代』へ進化する際のエネルギーをハミルトンが独占的に供給すれば、リターンは1,000倍……10億徳に達します」
『ピコーン☆ 悠馬くん、ついに「文明の加速」に手を出すんだね!☆彡』
女神が、今度は「証券取引所の立会人」の格好をして、派手な鐘を鳴らしながら現れた。
『今の異世界に「電気」と「蒸気」を無理やり導入するつもりでしょ? 成功すれば「産業革命の父」だけど、失敗したら「大気汚染の主犯」として徳がマイナス無限大まで落ちるよ♡』
「……了解。……ハミルトン・グループ、全「徳」を証拠金として開放。発注:『魔力駆動型・全自動蒸気機関ユニット・試作10,000台』。……これを世界中の主要都市に『無料サンプル』として配布します」
悠馬が電卓の「=」を叩いた瞬間、35万という数字がゼロになり、
代わりに空から巨大なコンテナが世界中に降り注いだ。
人々は、悠馬がバラ撒いた「規約(教典)
新しい「利便性(文明)」という名の魔導機械に夢中になり始めた。
ピコン!
【徳:一時的に 0 に減少 → 指数関数的に増加中……】
【理由:全人類に『労働からの解放』という名の、終わりのない『消費生活』をプレゼントしたため】
「……っ! 読み通りです。世界が私を崇める暇もないほど、機械のメンテナンスと経済活動に忙殺され始めました。……重力が……自分を縛る重力が軽くなっています!」
悠馬が、ついに自由への羽ばたきを感じた、その瞬間。
『あはは! 悠馬くん、大成功だね!☆』
女神が、今度は「ガスマスク」を被った作業員姿で、咳き込みながら現れた。
『でもね、みんなが機械を一斉に動かしたせいで、世界中の魔力が「排熱」として放出されて、北極の氷が全部溶けちゃった☆ 今、世界中の沿岸都市が「ハミルトン沈没」って叫びながら、悠馬くんに『排水ポンプ』の発注を求めて100億件のメールを送ってるよん☆彡』
「……ただの産業革命を、一瞬で地球温暖化(異世界版)に直結させないでください」
ピコン!
【称号:『文明を焼き切る男』『温暖化の元凶(笑)』が追加されました】
【現在の状況:氷が溶けたせいで、数万年封印されていた「古代の超巨大人型兵器」が、悠馬くんを「ご主人様」と認識して起動しました】
「……女神。一つだけ。……私は、ロンドンの……。……いえ、もう……。……なぜ、私が『世界を救おう(投資しよう)』とするたびに、世界は滅亡のカウントダウンを早めるんですか…………」
ハミルトン総帥、異世界(実質)六日目。
彼の「大博打」は、徳を稼ぐ代わりに、世界を「環境破壊」という新たな地獄へ叩き込み、自分を「古代兵器のパイロット」という、さらに逃げ場のないポジションへ追い込んでいた。
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