疲れた一日
翌朝、ユウキはミナと一緒に学校へ向かって歩いていた。朝日が東の空に昇り始め、涼しい風が顔を撫でる。教室の前に差し掛かると、ユウキは扉の近くに人だかりができているのに気づいた。
「新しいメンバーが来るらしいよ」
「がんばれ!」
そんなささやきや声援が飛び交っていた。どうやら、人気者の女の子に告白しようとしている男の子を応援する「失恋クラブ」が集まっているらしい。
ユウキは眉をひそめた。こんな人だかりはめったに見ない。
「多分、人気者の女の子に告白するだけだろう」と、ため息をつく。
やがて、群衆の中から一人の男子が歩み出て、ユリの前に立った。彼は目を閉じ、軽くお辞儀をし、震える声で言った。
「ユリさん…お願いです…僕の彼女になってくれませんか?」
ユリはいつもの冷たい目つきで彼を見つめた。迷いもなく、鋭い視線。
「だめ」
男子は肩を落とし、しばらく固まった後、後ろに下がった。群衆の失恋クラブたちは彼を励ますように拍手を送る者もいれば、慰める者もいた。そして、これで「失恋者の仲間入り」を果たしたのだ。
しかし、群衆がまだ散らばる前に、別の男子が前に出た。
「綾崎さん、僕と付き合ってくれま—」
「だめ!」 ユリは即座に切り返し、さらに強く言い放つ。視線は冷たく動かない。
群衆は固まった。互いに目を見合わせ、驚きを隠せない。ユウキはただ立ち尽くし、教室へと歩き出した。
すると突然、ユリの表情が切り替わった。冷たさが消え、明るい笑顔になる。
「あ、ユウキくん!もう来てたのね。ノート貸してくれる?昨日ちょっと寝ちゃって、授業の説明を少し聞き逃しちゃったの」
「は?だめだよ、他の人をあたって」 ユウキは無表情で視線を逸らす。
ユリは眉をひそめ、少しイライラしながらも机に向かって歩く。群衆はその様子を見て唖然とする。ユリの態度の変化、そしてユウキの断り方に驚きを隠せない。
ユウキは長いため息をつき、鞄を開けて数枚のノートを取り出す。
「はい…これ。次は授業中に寝ないでね」と、無表情で手渡した。
ユリは少し赤面しながら、笑顔でノートを写し始めた。ユウキは黒板を見つめながら座る。群衆は小声で感心しつつ散っていった。
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休み時間、ミナが元気いっぱいにやってきた。
「ユウキ、いっしょにお昼食べよ!」
ユウキはため息をつき、諦めた。
「わかった、ついていくよ」
「じゃあ、ユリとマコも誘おうよ」ミナは笑顔で言った。
しばらくして、ユリとマコも加わり、四人で賑やかな廊下を歩く。ミナは楽しそうに話し続け、ユウキをからかったり、マコやユリの様子を覗き見たりして、小さなドラマを楽しむかのようだった。
食堂では、人混みから少し離れた席に座った。ユウキは真ん中に座り、諦め顔。ミナは教師の面白い話や変な生徒、他クラスのちょっとした噂などを次々に話す。マコも時折、鋭いコメントや冗談を挟む。ユリはほとんど黙っているが、時々ユウキをちらりと見る。
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昼食後、マコが突然言った。
「ねえ、みんな、限定商品の新しいのが出たらしいんだけど、すごくいいって聞いたの。放課後に買いに行きたいな」
ユウキの目が輝いた。やっと…少し静かにできる。
しかしマコはにやりと笑って言う。
「もちろん、ユウキも来るんだよね?」
ユウキは顔を曇らせる。
「これは女子だけの話だ…俺は行かない」と、無表情で断る。
だが三人は息を合わせ、可愛らしい理由や純粋なお願い、ちょっとした甘えで彼を説得。ユウキは心の中でぶつぶつ言いながらも、結局仕方なくついていくことにした。
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放課後、四人はショッピングセンターへ向かった。今日は勉強なし。欲しいものが限定品だからだ。
店内で必要な物を買った後も、マコ、ミナ、ユリは店内をうろうろ、洋服やバッグ、小物を見て回る。ユウキはただついて歩き、明らかに不満そうだ。
「先に帰るよ」と言って立ち去ろうとするユウキ。
「ダメ!待って、ユウキ!」ミナが笑顔で呼ぶ。
「ユウキも来て!これ見せたいの!」マコも手を握る。
ユリもついてきた。表情はいつも通り冷静だが、少し赤面している。ユウキは深いため息をつき、
「わかった、外で待つよ」と言った。
「心配しないで、すぐ終わるから」と三人。
ユウキは外に出て、近くの書店にふと目を留めた。ちょっと立ち寄ってお気に入りの本を見ることにした。中に入ると夢中になり、時間を忘れて読みふける。気づけば1時間も経っていた。
「やばい…読みすぎて忘れてた、彼女たちもう帰ったかな…」と焦るユウキ。外に出ると、三人はちょうど会計を終えたところだった。
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帰り道、マコが突然言った。
「あ、忘れるところだった!もう一つ買おうと思ったんだけど、間違えて棚に戻しちゃった…」
「私も一緒に行くよ、困らないように」とミナ。
ユウキも行こうとしたが、ユリに少しトイレに付き合ってほしいと言われる。
その後、みんなで飲み物を買った。ユウキは喉が渇いていたので快諾。周りの人々が二人を見てささやく。
「うわ、あの子たち可愛いな」
「女の子の趣味、変わってる…」
「あの男より私の方がいいでしょ」
「まさか彼女じゃないよな」
ユウキは小声で聞こえて、消えたくなった。
やがてミナとマコが戻り、四人で家に向かう。
途中、マコが笑顔で言った。
「あ、そうだ、これもユウキくんに買ってきたんだ」
ミナとユリもそれぞれユウキに渡した。初めてのプレゼントに、ユウキは驚きつつ嬉しかった。
先に歩き出すユウキ。早く帰りたかったが、三人が近くのケーキ屋さんを見つけ、呼び止めた。仕方なく店内へ。
店内でそれぞれお気に入りのケーキを選び、笑いながら談笑。ユウキも少し微笑むが、諦めた顔。
最後に会計を済ませ、四人はそれぞれの家へと帰った。ユウキは深いため息をつき、長い一日の後に少しだけ安らぎを感じた。




