愛の宣言
数秒だけ考えたあと、ユウキは深くため息をついた。
「……わかったよ。入るってば。」
勧誘してきた男子は、激安LEDみたいにピカッと輝いた。
「マジで!? よっしゃー! じゃあ今から皆に会いに行こうぜ!」
「え、今? なんでそんな急ぎ?」
「今は昼休みだぞ!? 告白→即失恋のゴールデンタイムだ! 逃したら損!」
ユウキは顔を手で覆った。
(……なんで俺の人生、こんなクエストみたいになってんの……)
それでも諦めたように頷く。
「どうせ断られるのわかってるし。さっさと終わらせるか。」
男は指差した。
「ターゲットその1、綾崎ユリだ!」
ユリは屋上の階段前にいた。
彼女へ向かう途中、【失恋同盟】の連中が忍者の真似事しながらついてきた。
もちろん、ユウキは即バレ。
振り返って片目をつむり、親指を立てる。
その瞬間、背後で爆発的ひそひそ声が飛ぶ。
「見た!? 今のタイミング!!」
「才能ありすぎだろ!!」
「失恋界の救世主きた!!」
屋上に着くと、ユウキは迷いゼロでユリに向き合った。
「綾崎ユリ。好きだ。付き合ってくれ。」
準備ゼロ。戦略ゼロ。勇気だけMAX。
ユリは数秒黙り、腕を組む。
「あなた、私に似合わないわ。最初からわかるでしょ? もちろん答えは――“無理”。」
ユウキは顔を上げた。
瞳がキラキラしていた。
ユリは思わず後ずさる。
「……は? なんでそんな目キラキラしてんの? 泣きそうなの? ほんとに男? 他の子もいっぱ――」
ユウキは全部無視して深くお辞儀した。
「ありがとうユリ! 一人目クリア!!」
「…………は?」
階下から轟く。
「ホォォォォレェェェェ!!」
「ユウキーー!! よくやった!!」
「新メンバー確定ぅぅ!!」
ユリの羞恥心は天井突破。
ユウキは堂々と屋上を去る。
男が肩を叩く。
「よし、次! 今日は歴史作るぞ!!」
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空き教室では、如月マコがひとり勉強していた。
同盟メンバーはユウキを押し込む。
「ほら行け! 今日中に三人だ! 明日はパーティー!!」
ユウキは深呼吸。
「マコ! 好きです! 付き合ってください!」
マコは一瞬だけ視線を上げ、冷静に言った。
「あなたじゃ釣り合わないわ。私は今勉強中。邪魔。答えは“NO”。」
ユウキの顔がぱぁっと明るくなった。
「ありがとう!! 二人目ぇぇぇ!!」
扉の方へ叫ぶ。
「おーーい!! 聞こえた!? あと一人!!」
マコは真っ赤になってユウキを追い出した。
ひとりになった彼女はつぶやく。
「なんであんなに嬉しそうなの……? 私のこと嫌いなの……?」
遠くの廊下で、その様子を星川ミナが見ていた。
(ふふ……変わった人。)
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授業前。
教室前でユウキはミナに声をかける。
「よ、ミナ。俺さ、変な同盟に入りたいんだよ。楽しそうだし。条件が“三人の人気女子にフラれること”。だからさ……放課後、空き教室で俺がお前に告白する。で、フッてくれ。」
ミナ「…………」
返事を待たず教室へ入るユウキ。
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放課後。
二人は約束の空き教室に立つ。
静かで、夕陽が優しい。
ユウキは拳を握った。
「よし、早く終わらせよう。」
「ミナ! 好きだ! 付き合ってくれ!!」
ミナは柔らかく微笑む。
「……うん。いいよ。付き合お?」
――教室が凍りついた。
窓の外の同盟がガタガタ震える。
「はあぁぁ!??」
「裏切り!? 誰が!? 何が!?」
「ユウキィィィィ!!!」
ユウキは叫ぶ。
「なんでぇ!? さっき“フッてくれ”って言ったろ!!」
ミナは一歩近づく。
「聞こえてたよ。でも……あなたをもっと知りたい。興味あるの。」
「やめろぉ!! あと一人なんだ!! ミナぁ!! 断れぇ!! 今すぐ!!」
「嫌。」
同盟は涙の撤退。
「ユウキ……俺たちの希望だったのに……」
「さよなら……永遠の候補生……」
教室は夕日色の絶望で染まる。
ミナは笑顔。
「帰ろっか?」
ユウキは魂の抜けた声で。
「……はぁ……俺の失恋計画……終わった……」
でもミナは嬉しそうに横を歩く。
こうして――
失恋同盟に入りたかっただけの少年、タカムラ・ユウキは、
なぜか “人気女子のひとり” に本気で好かれてしまい、
人生の予定をすべてひっくり返されることになる。




