二年生の始まりと、奇妙な噂の三人
青空学園の正門をくぐった瞬間、俺――高村ユウキは、深いため息をついた。
新学期のはずなのに、校内はやけに騒がしい。
いや、騒がしい理由は分かっている。毎年恒例の“あれ”だ。
「ゆ、由莉さん!ずっと前から好きでした!俺と付き合っ――」
「ごめん。無理。」
即答だった。
告白した男子はその場で固まり、次の瞬間、顔を覆いながら走り去っていった。
その後ろで、見物していた生徒達が一斉に盛り上がる。
「うわ、また綾咲由莉に振られたぞ!」
「しかもあいつ、人気のイケメンじゃん……」
「はい、失恋クラブの新メンバー確定~!」
俺は眉一つ動かさず、その光景を横切った。
(朝っぱらからこれかよ……。ほんと飽きたな。)
綾咲由莉。
そして、赤崎真子、星川美奈。
この三人は学園で「三大美少女」と呼ばれ、同時に「絶対に誰とも付き合わない三人」として有名だった。
だからこそ、振られた男子が集まって妙な集団を作り、
「三人全員に振られたら正式メンバー」
なんてルールまであるらしい。
(……まあ、楽しそうに騒いでるのはちょっと羨ましいけど。)
教室に入ると、ちょうど由莉と目が合った。
だが彼女は特に表情を変えず、そっと視線をそらす。
俺と話したことなんて、もちろん一度もない。
席につこうとした時、周りにいた女子三人がこそこそと近寄ってきた。
「ねえ、高村ユウキくんだよね?」
「名前、可愛くない? 完全に女の子の名前じゃん」
「最初名簿見たとき女子だと思ったよ〜」
俺はため息を押し殺した。
「……もう聞き飽きたよ、それ。」
女子達がくすっと笑ったとき、
教室の外からまた騒ぎが聞こえてきた。
「真子が振ったぞ!」
「また一人入部候補だ!」
(ほんと、あいつら元気だな……。)
ぼんやり天井を見上げていると、突然肩を軽く叩かれた。
振り返ると、軽い笑顔を浮かべた男子が立っていた。
「なあ、君さ……入ってみない? 俺たちの“振られ同盟”。」
「は?」
「条件は一つ。三大美少女全員に振られること。簡単だろ?」
簡単じゃねぇよ、と言い返そうとしたが、男子はそのまま続ける。
「君、いつも一人だろ? 俺たち仲間になってやるよ。」
その言葉に、少しだけ胸がざわついた。
(……友達、か。)




