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真綿
触れたい
もう一度触れてみたい
あの柔らかな真綿を
もう一度手にしてみたい
柔らかで温かい、まるで春の日差しのような綿に
私は包まれたい
苦しみが私を襲う
だけど、あの綿に包まれるためなら
私は心を決めて、ぎゅっと唇を閉じた
綿には脈がある
静かな命の鼓動
黒くて澄んだ眼が私を見る
ああ、綿の胸に抱き締められたい
温かな眼で私に微笑んで
それが叶うなら
私はどんな事だってしてみせる
叶うなら……もう一度でいいから……
瞼を閉じて思い出して見る
真綿の白くて柔らかい肌
ふっくらとしていて温かく
私に安らぎをくれてくれた
もう一度だけ
触れてみたい
包まれてみたい
抱き締めて
口から出た言葉は空虚に部屋に響くばかりで
暗い部屋に閉ざされる