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とんでもなく非日常な教師たちの日常

「あーーーーー!!」

職員室にスグリの声が響き渡る。

「うるせぇよ」

すかさず、萩のツッコミが入る。

「あはは。今日も平和だねー」

「どこがだよ」

まだ、登校時間の2時間前なので、教室に生徒はおらず、教員陣が職員室に全員集まっている。

「それで、スグリはそんな大きな声出してどうしたの?」

「予備のライターのオイルが切れてた…」

「あぁ…」

スグリはいつも、ライターのオイル切れに気づかない。お陰で、ライターも持ち歩くクセがついてしまった。

まー僕にとって、ライターっていうのは数少ない貴重な武器だから、ある意味助かっているんだけど。

「はい、スグリ。」

「キバナ、ナイス」

慣れた手つきでタバコに火を付ける。

「にしてもさー、よく体、悪くしないよねー。健康診断とかで引っかからない?」

そこがずっと不思議なのだ。

「全然引っかからねぇよ。」

「スグリって、酒の耐性も結構高いよな」

「そうね。毒の耐性も人並み以上だから、ホント助かるわ」

「うへぇ」

でも確かに、僕が見てきた中で、春花の毒で死ななかった人間はスグリ以外知らない。

ほとんどの人間は、一滴飲んだだけで、最低でも数カ月は入院になる。

ちなみに、毒を使うのは敵のみだ。スグリは──まぁ別として。

春花がスグリを実験として使うときでも、なにかあった時用に絶対複数の解毒薬を用意している。

「ちなみに、毒の耐性が人並み以上って一般人のこと言ってんのか?」

「そんなわけないでしょ。殺し屋やマフィア内での話よ」

そういえば。

「タバコで思い出したけど、萩もたまにタバコ吸ってるよね。今は吸ってないけど」

ごくたまに、萩もスグリと吸っているところを見かける。

「あー。ホントにたまにな。気が向いたら吸ってるだけだ」

「あと、飲みに誘うと結構来てくれるよな」

「たしかにそうね。大学時代は仕事終わりに割とみんなで行ってたわよね」

「懐かしーねー。今度みんなで飲みに行こーよ」

「できれば、禁煙じゃないところ希望」

「あはは。そうだね〜」

呑気に会話をし、さてそろそろ仕事に取り掛かろうとした矢先。

ビー!ビー!

警報がなった。

「あー…俺、今回パス。仕事溜まってる」

「僕もパスだな〜。近接はそんなに得意じゃないんだよね。長距離も、誇れるほど上手くはないし」

「私もパスね。油断してるところを一気に突くのが得意なのよ」

「やっぱ、俺だよなー」

萩が棒読みで言う。

もう敵は数メートル先だ。グラウンドから一気にこちらに飛んでこようとしてくる。

萩はイスを足で軽く蹴って窓際まで移動する。

窓を開け、その2つ下にある小さな足場に着地すると、同じタイミングで飛んできた敵と鉢合わせた。1人が大きくナイフを振るう。

が、軽く避け足を蹴り飛ばした。

続々とやってきた敵を確実に殺していく。

ものの数秒で完全に片付いた。

「やっぱり、まだまだ現役だね~。”第六のセケル”は」

「萩ってどのぐらい留置所いたんだっけ?」

「知らん。でも、体感は4、5年ぐらい」

下から萩の声が飛んでくる。

「たしか、本来は6か月以内にやらなくちゃいけないけど、なんだかんだ言って6、7年ぐらいかかるのよね。死刑執行って」

春花が何かのカタログを見ながら言う。

「春花、それなんのカタログなの?」

「毒のカタログよ。」

「それ、学生時代は持ってなかったよな。いつ買ったんだ?」

スグリがタバコを吸いながら言う。

「卒業した後にたまたま後輩とバッタリ出会ったのよ。そこでもらったわ」

「お前に後輩なんていたのか」

いつの間にか戻っていた萩がこの後、絞められそうなことを言う。

「あ?テメェも実験台にしてやろうか」

春花の声がワントーン低くなる。

「お前が言うと洒落になんねーからやめてくれ」

本当にそう。

「春花が実験台とかいうとホントにやりそうで怖いんだよね~」

「だよな~」

うんうんとスグリが同意する。

「あれ…そういえば、そろそろ体育祭じゃないですか…?」

静かな声が聞こえる。

矢車(やぐるま)スミレだ。

「あ~そういえばそうでしたね~」

ちなみに、英語担当の矢車スミレと、社会担当の一井唐草(いちいからくさ)は東雲に来て、

初めて知り合った人たちだ。一井先生はともかく、矢車先生は少し知っているぐらいで、実際に見たのは初めてだ。そもそも僕は、戦闘員ではないため会う機会がない。

「体育祭って、体動かすやつだから殺し屋来ても大丈夫そうだよね〜」

「そもそも来ないでほしいところではあるけどね」

「それはそうだ。めんどく事が増えるだけだし」

「あの〜…」

一井先生が消え入りそうな声で言う。

「僕ってその体育祭に参加する意味ってありますかね…。だってみんなすぐ殺しちゃうじゃないですか。僕の専攻は拷問だから生け捕りにしないと…僕がいる意味ってないような…」

「あ〜なるほどね〜」

たしかに、拷問は生きたまま情報を吐かせるのが主であって、殺してしまっては出番がなくなってしまう。

「じゃぁ…みんなでできるだけ殺さずにする…?とか…?」

「俺はそれでもいいよ」

最初に行ったのはスグリだった。

「私も賛成。1人だけ出番がないっていうのも野暮だもの」

「俺も意見はねぇよ」

みんな意外と乗り気だ。

「僕は別に戦闘員じゃないし、どうこう言える立場にないからお任せするよ」

「あ…ありがとうごさいます…!」

「っていうかここの学校って拷問部屋みたいなところあったかしら…?」

「あります!地下の社会科準備室ってところに…」

「あれ、拷問部屋だったのか。知らんかったわ」

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴った。

「あ…もう予鈴ですね…」

小さく音を立て、矢車先生が6組の教室へと向かっていく。

「じゃぁ私もそろそろ行くわ」

春花もある程度の教材を持って職員室を出ていった。

「じゃーまたなー」

いつの間にか新しいタバコに替えていたスグリが職員室を出ていった。

「じゃぁ僕も行きましょうかね〜」

詐欺や偽装の教科書と机にもたれさせておいた黒色の竹刀袋を肩に掛ける。

中には狙撃銃が入っているので少しゴツゴツするが、ご信用としてはちょうどいい。

4組の教室のドアを開けると、まだ中に人はいなかった。

椅子にもたれてスマホを開く。

東雲に来る前は仕事がない日は平日でもほぼ休日のようなものだったので、よく裏カジノに行っていたが最近は行けていない。なのでオンラインカジノをたまにやっている。

オンラインカジノはいつでもどこでもできるというのが利点だが、ネット環境が悪いとできないし、なにより相手の負け顔を拝めないのが難点だ。

今週末に、また行こうかな~

そうこうしているうちに、1人の生徒が教室に入ってきた。

そうしてまた数人の生徒が固まって入ってきた。

この数日間でもう友達ができたのかと思うと、すごいなと思う。

教室の半分ぐらいの生徒が来た時に、またあのけたましい音が鳴った。

放送室へ急ぐ。

4組と放送室は距離が近いので行き来がしやすい。

多分、元から僕のような戦闘にはあまり向いていない教師を4組に置いているのだろう。

1年生の教室は、全クラス5階にあり、そのなかでも放送室は全体を見渡せる位置にある。

こうして、僕たちの非日常な日常が幕を開けるのであった。

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