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課外学習当日

「ふーーー」

少し鼓動が早い心臓をなだめるように、ゆっくりと息を吐く。

今、学校の校門の前に1年1組の生徒と鳥羽先生がいる。

「んじゃ、作戦のおさらいをするぞ。戦闘員は、藍沢家の敷地の裏側から侵入。見張りは見つけ次第気絶させるように。これは事前に藍沢本人から承諾をもらってるから遠慮なくやっていい。」

今回の目的は、抹殺ではなく、あくまで退学届の取り下げだ。

なので、人数はそこまで多くなく、犬灯先生の補習授業を受けた生徒だけが集まっている。

「じゃ、行くぞ」

音もなく全員が起立し、校門を飛び越えて校舎外へ出る。

あとは、時間までに各自のルートを使い目的地に行く。

一応、今は平日の昼間だ。

バスなどは使わない。

目立つからだ。

基本的には屋根をつたう。

普段なら、話しかけてきそうなリオも夏野も、黙々と走っている。

あかねの家は、東京の一等地にある屋敷だ。

周囲からは、孤立しているが、あらぬ噂は立っていないらしい。

触らぬ神に祟りなしということか。




数キロメートルは離れているが、同じ東京都なので、すぐに着くことができた。

あかねの家は古くから伝わる由緒正しき屋敷のような佇まいだ。

まぁ、実際何代も続く殺し屋一家なので、由緒正しいかどうかは分からないが、かなり古くから、この屋敷はここに存在する。

正面玄関は、当然だが監視カメラが数台設置されている。

あと、一般人はまず気が付かないようなところに、センサーも設置されていた。

警備はいないようだ。

まぁ、今の時代、割と警備もAIに任せられるようになってきているから、警備がいる方が不自然だし、当然と言っちゃ当然だろう。

この辺りは、都心から離れているので、静かだ。

あまり大きな音はさせないため、来る時よりも静かに慎重に。そして素早く動く。

音を出さないように、あたりの建物の屋根を伝っていく。

そして、あかねの家から、五軒離れた場所から助走を使い、裏門に行く──

つもりだった。

「……!!」

ビュッ

と銃弾が頬をかすめた。


気づかれた!

今は空中にいる。

それにもう着地地点を決めてしまったから今さら場所を変えられない。

上着のポケットの中から銃を取り出し、標準を合わせ引き金を引く。

ちなみに、これは実弾ではなくゴム弾だ。

銃声が気になったが音で、住人が出てくる気配も感じられない。

それどころか…静かだ。

異様なほどに。

「……?」

だが、それを気にする余裕などない。

相手は容赦なしに撃ってくる。

空中と地上での銃撃戦。

こっちの方が不利だ。

なにより、標準を合わせずらい。

普段なら一瞬の空中移動が、今回は数分に感じた。

地面に立てば、やっとまともな勝負ができる。

銃以外にも、さまざまな凶器を使って気絶させていく。

終わった頃には、辺りは、死んではいないが動かない人間であふれていた。

「学校に来るときよりも、多い気ぃすんねんけど、いつもこんな感じなんか?」

リオが、顔についた返り血を拭きながらあかねに聞いた。

「いや、いつもは、こんなにいないはず……」

あかねも訝しげな表情を浮かべている。

たまたま、気絶させた人間の服が目についた。

「ちょっとこれ見てくれないか?」

みんなの視線が一斉に俺の指先へと集まっていく。

指の先は、気絶させられた男のスーツの模様だ。

「藍沢家の家紋は鳳凰のはずだ。藍沢家の人間は、全員、家紋である鳳凰の模様を身に着ける決まりがある。でも、この男はスーツに鳳凰の模様がない。」

「本当だ……全然気づかなかった…」

「誰かに雇われたってことですかね……」

「多分そうやと思う」

リオに同調され、玉梓がほっとしたような表情を浮かべる。

「雇い主は藍沢家で確定やと思うけどな」

夏野が顎に手を当てながら考え事をしているようだ。

「とりあえず、ここで考えててもなんにもわかんねーなら、先に親と話しつけた方がいーんじゃねーか?」

久良望がもう話についていけないという感じで言った。

「うん。」

あかねが覚悟を決めたような声色で言う。

でも、目はまだ揺れていた。

「あかねちゃん、途中までついていこか……?」

「うん。助かる」

「じゃぁ、僕らはここで待っています。敵が来てこちらに敵意があるようでしたらその場で抹殺します。」

「あ、ほな一井先生のために何人か生け捕りにせぇへん?」

「いいんじゃねぇか?一井先生のことだから泣いて喜ぶと思うぞ」

にゅっと後ろから影を現したのは鳥羽先生だ。

「それに、拷問すればこの鳳凰の模様がついてない人間のことも多少は分かるかもしれねぇ」

「一井先生ってこういうときに助かりますね」

「本当ですね。」

藍風兄弟が、同じ動きでうんうん。と頷く。

見ていてちょっと面白い。

「じゃぁ…行ってくるね」

「ほな、留守頼むわ~」

「任しとき~」

ひらひらと手を振って奥の方へと消えていった。

「っていうか、藍沢さんはこの家の人だけど夏野さんはこの家の人じゃありませんよね……?

ば、バレたりしないんでしょうか……?」

「まーそこはうまいことなるやろ。多分」

「多分て……」






長い廊下を二人で進んでいく。

おかしいと感じるのにそれほど時間はかからなかった。

違和感1つ目。部屋のふすまが全部閉まってる。

まるで私たちから存在を見えなくするように。

違和感2つ目。まるで人の気配がしない。

閉まり切ったふすまの奥からも人の気配が全くない。

ホラーゲームの主人公になった気分だ。

彩芽ちゃんと一緒に木製の長い階段を上り父親がいる書斎の前にたどり着く。

軽く息を整えてコンコンとドアをノックする。

「は~い」

……!

聞こえたのはまだ声変わりする前の、小学生ぐらいの男の子の声だった。

彩芽ちゃんと目を合わせる。

「今のお父さんの声?」

「違う…お父さんはもっと威圧感のあって聞くだけで吐き気がするような声をしてる。」

恐る恐るドアを開けると、そこにいたのは小柄な男の子だった。

書斎の机の上に座っている。

「あはは!やっほ~!君は、藍沢あかねだよね。」

「……誰?」

思いっきり警戒心むき出しの声で聞くと、目の前の男の子は楽しそうに笑った。

「あはは!そんな怖そうな顔しないでよ~」

「いきなり知らへん人がおったらそりゃ警戒するに決まっとるやろ」

「あ~~君は夏野彩芽だっけ?ごめんね~今回の目的は君じゃないんだ~」

「一生お断りや」

彩芽ちゃんがそう言うと、また男の子は楽しそうにケラケラと笑った。

「で、結局なんの用?」

「え〜それ聞くの〜?」

そこで一旦言葉を切ってこう続けた。

「もう分かりきってることでしょ?」

先ほどの楽しそうな雰囲気はもうどこにもない。

残っているのは、その空間に満ちた息苦しいほどの殺意だけだ。

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