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エピソード その4
それから、ぼくも二人だけの病室内で、しばらく背の高い子と笑いの渦に巻き込まれてしまう。
母が気丈にも、「いつ死ぬかもしれない。ベッドから落ちるかも知れないし、階段から落ちるかも知れない。地獄にだって……ねえ。だから、笑い転げながら転げ落ちたいの」と、冗談にも真面目に言うので、こっちは心配しながら母の生真面目な顔との滑稽さに思わず笑ってしまう。
背の高い子は、元気に笑っていなかった。
どこか、気の抜けた笑い声のようにも感じる。
多分、ここから見てもだいぶ衰弱している身体をしているので、頬にではなく喉に力が入らないのだろう。
彼女は痩せ細っていた。
ぼくにできることは、この人と最後まで一緒にいるくらいだ。
医者は、こうも言った。
彼女には、孤独がある。いつも一人で座っていながら微笑んでいるんだ……。