エピソード その3
白い階段を上がって、右手にある部屋が母のいる202号室だ。
そっと、ドアを開けると、中から笑い声が聞こえる。
寝たきりの母の真横で、笑って立っている背の高い女の子がいた。
ベッドに近づいて母の顔を覗くと、こちらもガリガリに痩せ細っているが、弱弱しく笑っていた。背の高い子は可愛らしい顔に、笑うとえくぼがみえる。ちょうど、背はぼくよりも頭一つ低い感じだった。
何よりも病室のベッドに注ぐような涼しい風に、背の高い子は長い髪がなびくようは、とても綺麗で儚かった。
白衣を着た医者が来た。
母の容態を鑑み。
ぼくにちょっと、とドアの方を向いた。
ぼくは付いていくと、廊下で医者は、母は明日にも危ないかも知れないので、その間。同室の患者さんとできるだけ仲良くしてやってほしいと言った。同室の子。背の高い子は、彼女は話せないのだが、彼女も明日辺りから危ないといっている。
ぼくには信じられなかったが、医者が嘘を言っても仕方がない。その証拠に医者の次のセリフを聞いて、ぼくの中で愕然とし、納得をした。
「彼女にはお見舞いに来てくれる人が、未だかつて一人も来たことがないんだ」