エピソード 13
「どーも。ここの病室にいた人に面識とか、何かあったんスか?」
石谷くんは、二人にニッコリと話だしてから、突然に照れだして頭を片手で掻きだした。
「え? どちらさまでしょうか?」
「あ、ねえ? 後ろにいらっしゃる方が秋山 陸さんって人? でしょ?」
「へへっ……俺は……。俺のことは無視なのかい……」
その女の人たちは、話し掛けた石谷くんをまるで見ていないかのように、ぼくの方へスタスタと歩いて来てしまった。
「初めまして、私たち。水面 空ちゃんのとても遠い親戚なんです。麻袋 伊織と申します。私が姉の方で、こっちが妹の猪里です」
「初めまして」
と、伊織さんは頭を丁寧に下げるけど、妹と呼ばれた猪里さんは、テヘっと頭を掻きながら何やら恥ずかしそうにしていた。
「え?! 水面ちゃんの? 親戚の方?」
「そうなのです。私たちマレーシアに住んでいたのですが、大きな家で、猪里が郵便箱からとある封筒を偶然見つけてくれたんです。危うく一生気がつかないかも知れない。という事態に陥っていたかもしれなかったのです」
「えっと。その封筒は親切な遺品整理業者が送ってくれたようで、どうやら、水面ちゃんが遺品整理業者の人に残してほしいと伝えていたようです。その封筒には、子供の頃に水面ちゃんと私たちが写っていた思い出のアルバムと不思議な鍵が入っていました。水面ちゃんのご両親は2年前に交通事故で……」
「そうなのです。水面ちゃんは、その直後に入院したんだそうです」
「……不思議な鍵……ですか? 交通事故……」
いつも笑顔の水面ちゃんの過去に、そんなことが……。