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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第二章

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83/96

83.冒険者クロ、盗賊の村で無双する


 村の中を慎重に駆け抜ける。


 ここがブルーマークが固まっている場所の様だ。

 その掘っ立て小屋のような建物の入り口には男が1人、警備の為か立っている。


 中にいるレッドマークは2人。

 俺は小屋の背面に回り、小声で能力強化(ドービング)を使い聴力を強化する。


「明日にはお前達を引き取りに奴隷商がやってくるからな。大人しくしていることだ……傷物になりたくなければな」

 男の声が聞こえたと思ったら、笑い声と共にうーうーと唸るような声が聞こえている。


 俺は入り口の方へ戻ると護衛の男の背後に回り、小声で眠れ(スリープ)を唱え眠らせた。

 小屋の壁に背を預ける形で座らせると、ガタついている扉をずらし中を確認する。


 中には縛られ猿轡されている者達が何人か見えたが、俺は全員を千の鎖(サウザントチェーン)で拘束し中へと入る。

 そして騒がれる前に男2人の口元まで鎖を伸ば締め上げた。


「騒ぐなよ?」

 そう言って室内を見回した。


 2人以外の7人は拘束されているので、盗賊団の一員ではなさそうだ。


 レッドマークの男達を断裂(リッパー)で切断……と思ったが、人質達も騒ぐと面倒だ。

 俺は鎖で強く締め上げると、バキボキと音が鳴り響き、男達がこと切れる。


 それを見ていた7人は小さく悲鳴を上げている。


「助けに来た。もう大丈夫だ……ってお前、何やってんだ?」

 拘束された者達を確認した俺は、見知った顔に驚き声をかけた。


「何やってるじゃないわよ!貴方こそなんでここに―――」

 俺は慌ててその女、カルメラの口を塞ぐ。


「騒ぐな。まだ周りには大勢残ってるんだぞ」

 うーうー言っているカルメラに小声でそう伝えると、状況を理解できたようでこくこくと首を振り始めた。


「いいな?もう大声は出すなよ?」

 もう一度念押しして頷くのを確認した俺は、断裂(リッパー)で7人の拘束を切断して開放する。


 途端に俺に抱きつき嗚咽を漏らすカルメラ。

 だが、その手は俺のシャツを引き、中に手が入って俺の胸辺りを弄り始めた。


「やめーい!」

 カルメラを引き剥がして脳天をチョップする。


 思わず大声を出してしまった。


「ぐほぉ」

 声を抑えて床に転がるカルメラに同じく捕まっていた護衛2人が駆け寄っている。


「皆、盗賊達に捕まっていたってことでいいんだよな?」

 俺の言葉に皆が頷いている。


 まだ誰も近づいては来ていないのを確認しながら話を聞くと、カルメラは護衛2人と御者のおじさんの1人、後の3人は商人夫婦とその娘であった。

 そして夫婦は泣きながら俺に縋ってきた。


「娘が、娘が2人連れ去られて……助けてください!」

 小さな娘も目に涙を浮かべ「お姉ちゃんたちを助けて」と縋りついてくる。


 嫌な展開になってきた……

 お腹辺りにモヤがかかる感覚に言葉を詰まらせる。


「この部屋には結界を張っておく。一歩でも出ると戻れなくなるから絶対に出ないでくれ」

 そう言ってお俺は小屋全体に結解を張ると、締め上げた男達の亡骸を鎖に繋いだまま外に出た。


 一旦小屋から離れ村の外に出ると亡骸を森の方へ投げ入れる。

 いずれ自然へと帰るだろう。


 脳内マップで確認すると残るブルーマークは2つ。

 助ける対象は2人だし、これなら躊躇する必要もなさそうだ。


 一旦ジュリアの元に戻ろうかとも思ったが、最悪の事態を考え俺1人で終わらせようと思い直し、次なる場所へと移動した。


 その小屋からは聴力を強化するまでもなく女性の悲鳴が漏れ聞こえてくる。


 苛立ちながら入り口で小屋の扉に耳を当てだらしない顔をしている男2人の首を切り落とす。

 ドアを開け中を見ると男達に押さえつけられている裸の女性が……


「良かった。まだだった」

 俺は服を脱ぎ終わっていない男達の姿にホッと胸を撫で下しながら、騒ぎだした男達の手足を切断していった。


「大丈夫か?」

 そう言いながら無限収納(インベントリ)から出したローブを女性に投げ渡す。


「ありがとう」

 涙声でそう言う女性に、四肢を切断した男達を指差して確認する。


「こいつらに復讐することもできるぞ?」

 そう言って細剣を取り出しプラプラさせてみる。


「いらない。まだ何もされてなかったし、それにこいつら黙ってても死ぬでしょ?だから良いの。まだ何も……でも、お兄さんにならやられてもいいよ?お礼代わりに抱いてく?」

 そう言ってはにかみ胸をさらけ出す女性にときめくが、感じないはずの冷気が漂ってきた気がしてかぶりを振る。


「いや、それよりもう一人助けなきゃならん」

「えっ、レナータはまだなの?」

 急に顔色を変え俺に縋りつく女性。


 レナータと言うのがもう1人のブルーマークなのだろう。


「小屋には結界を張っておく。小屋にいれば安全だから絶対に外に出るなよ?すぐに俺が助け出すから」

 俺はそう言いながら先ほどと同じように結界を張ると、呻く男達を掴み小屋から放り出す。


 出血も多いしすぐに死ぬだろう。

 そう思い放置して次なる小屋へと走り出した。


 もう自重しなくて良いだろう。

 残るブルーマークのところまで一直線で駆け出すと、異変を感じて駆け寄ってきた村人達を切り進む。


 大声で叫び仲間を呼び出す者達も出始めていた。


「スイ、ジュリアに暴れて良いって言ってきてくれ」

 彼方此方の小屋から男達が出てくるのを見て、ジュリアにも手伝ってもらおうと魔力玉を放りなげ声をかける。


『わーぃ』

 スイが魔力球を両手で確保するとまた消えた。


 目の前には突然リズも現れる。

 無言の圧力を感じ、魔力玉を出し与える。


「逃げ出す奴らがいたら狩っておいてくれ」

『わかうま』

 全身で抱きつく様に魔力玉を確保したリズも消えてゆく。


 目的の小屋に到着するが、見張りだったであろう男達が立ちふさがり邪魔をするのでその首を落とす。

 ドアを蹴破ると中では必死に女性の服を脱がしにかかっている男達がこちらを向いて喚き散らしている。


「うるさいよ。<千の鎖(サウザントチェーン)>」

 男達を拘束して外まで引きずり出すと、女性には見えない様に小屋の外で圧殺しておいた。


 一瞬戸惑い断裂(リッパー)しなかったのは、その女性が幼く見えたからかもしれない。

 女性が中学生程度の女の子に見えた俺は、破れて露わになった胸元から視線を外しローブを投げ渡す。


「ありがとう、黒いお兄ちゃん」

 ローブを胸に抱き座り込んだまま泣き始めた女の子に声をかける。


「まだ残党がいるから外に出てはいけないよ?ここは結界で守られているから出なければ大丈夫。お姉さんもお父さんお母さんも全員無事だ。暫くここを出ないで待っていられるかい?」

「うん」

 頷く女の子の頭を撫で、結界を張ってから外に出る。


 脳内マップを広げると、すでに大半のレッドマークは消えていた。

 僅かに残ったレッドマークの方へ走り出すと、ジュリアが男達の頭を掴んで捻り上げている光景が見えた。


 念入りにマップを広げ確認するが、どうやら全て片付け終わった様だ。

 俺は、ジュリアと合流し、2人の女性を保護して7人の待つ小屋へと戻った。


 こうして盗賊騒動は、どうにか後味の悪い展開にはならずに終わることができた。


 その後、助けた出した2人に懐かれ猛烈なアピールを受けるが、きっぱりと断りを入れることにより俺の尻の平和は保たれることになる。


 盗賊達が残してあった公爵家の馬車に乗りカルメラ達は聖教国へと旅立ったが、出発前に何度か体を絡ませ言い寄ってきたカルメラには殺意が芽生えた。


 俺の尻は無敵ではないのだから。


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