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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第二章

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81/96

81.冒険者クロ、教王陛下の使者に絡まれる

一部修正しました。

水の精霊→風の精霊


「折角だが、俺は誰にも仕える気はない」

 俺は顔を赤らめ抱きつこうとするカルメラの肩を押し突き放す。


「なんて不敬な!教王陛下のお心遣いを無下にするなんて!」

「俺は、たとえ神に懇願されたとしても同じ答えを返すからな」

 カルメラは、顔を歪ませるがすぐに笑顔へと表情を変えた。


 そして、再度俺に近づきその手で頬を撫で、煽情的な表情で自らのたわわな胸を押し付けてくる。


「いい加減にしてくれないか?」

 真面目な顔でそう言ったはずだったが、なぜか俺の尻には冷たい痛みを感じ歯を食いしばる。


 そしてカルメラは背後からの気配に後ずさった。


「ジュリア?俺はちゃんと拒否したはずだが?俺だって結構痛いんだぞ?」

「そう?それは良かった」

 ジュリアは笑顔だが目が笑っていない。


 ジュリアの愛が重い。

 それもまた良いなと思いながら「<治癒(ヒール)>」と小さくつぶやいた。


(わたくし)は暫く滞在します!気が変わりましたらこの男にお申し出下さい!」

 カルメラはギルマスのメローニを指差すと、怒りの表情のままスカートの裾をつまんで頭を下げる。


「では!」

 そう言って令嬢あるまじきドスドスとした歩みで部屋を出ていってしまった。


 額に汗を浮かべたメローニがすまなそうに頭を下げるが、「俺は誰にも仕える気は無いからな?」と言っておいた。


 そして宿へ戻った俺達は、カノンが用意してくれた夕食にイライラを忘れ舌鼓を打つって寝た。


 翌日からも俺達はまた迷宮探索を続けた。

 カノンは宿の厨房を毎日の様に手伝いながら料理のストックを増やしているらしい。

 宿にいる料理人からは師匠と呼ばれている様だ。


 そして、何度か九頭火竜(ヒュドラ)を倒した1週間後、迷宮帰りに宿の入り口で護衛と一緒に仁王立ちしているカルメラと遭遇した。


「貴方!どうして何も言ってこないのですか!」

 その言葉をスルーして、俺は護衛の横を通り宿へと足を進める。


「ちょ、ちょっと!なぜ黙って素通りするのですか!訳が分からないですわ!ほんと、何様ですの!」

 カルメラが地団太を踏みながらそう言い、護衛達は俺とジュリアの前に立ちふさがった。


「そこ、宿の入り口塞がないでくれるかな?」

「あ”?」

 護衛のガラが悪い。


 俺を睨みつける護衛の2人が腰の剣に手を添える。


「それを抜くなら命の保証はしないが?」

「ぐっ……」

 苛立ちを籠めた俺の言葉に護衛の1人が声を漏らし顔を歪める。


「お、おやめなさい!クロ殿は教王陛下がお認めになる方ですのよ!怒らせてどうするのですか?」

 カルメラが護衛に叱咤しながら謝罪するが、どの口が?と思ったのは俺だけだろうか?


「何でもいいが、そこを退けてくれ」

 歯噛みしながら両脇に移動する護衛達。


「お、お待ちになって!この者達の無礼については(わたくし)から謝罪を致しますわ。(わたくし)はただ、教王陛下のお言葉を……」

 俺はいい加減面倒になりカルメラを睨む。


「ひっ……あの、(わたくし)は、その……、今回は帰ります。明日の朝、この街を発ちます。もし気が代わりましたら、お声がけくださいませ。ぜひ一緒に(わたくし)と……お待ちしてますから!」

 必死に俺に訴えかけたカルメラは、最後は令嬢らしく丁寧に頭を提げ腰を落とす。


 こちらをチラチラ見ながら護衛と共に帰って行ったカルメラを見送りながら、あの娘は情緒が少し可笑しいな、とため息をついた。



◆◇◆◇◆



 目の前をふわふわ飛び回る5つのそれに、色々な属性を混ぜた魔力の塊を浮かべて遊ぶ。


 白いドレスに身を包んでいるそれは、光の精霊様という奴だ。

 魔力の塊に頬擦りしながら『むふふ』と笑っている。

 黒いドレスの闇の精霊はさっきから『ふわははは!』と言いながら塊の上に仁王立ちしている。

 緑色のドレスの風の精霊と真っ赤なシャツと黒いスパッツのような物をはいている火の精霊は、ひとつの塊を奪い合いがなら喧嘩をしているようだ。

 土の精霊は、泥にまみれ塊を土に押し付けている。


 こいつらはすぐに『契約しろ』と言ってくる。

 俺は無限の魔力があるから契約しても死なない、と教王陛下、つまりは魔王に言われているが、契約したならただでさえ長いと言われている勇者の寿命が倍々で増えるのだという。

 もしかしたら永遠の命となるかもしれないとも言われた。


 冗談じゃない。

 俺にはまだ永遠の命を得た人生が想像できず、吐き気がこみ上げる。

 永遠の孤独には耐えられないだろう。


 さらに言えば、魔王はいずれこの世界を壊し俺がこの世界を支配予定ではあるが、俺が死んだらまた壊すのかという問いには笑っていただけだった。

 俺は永遠の命を手に入れたら……


 魔王は俺を殺してまた世界を壊すのかもしれない。

 寿命で死ぬのは良いが、痛い思いをして死ぬのは嫌だ。


 そう思うと精霊と契約なんて絶対にしないと心に誓った。


 そろそろ頃合いか?

 勇者の特性なのか無警戒に飛び回る精霊達は、各地で見つけた精霊だ。

 魔力の塊を餌にホイホイ俺について彼方此方と移動して、やっと魔王の命令どおり5匹を集めた。


 今ならよいかな。


「お前たち」

 そう声を掛けると俺の傍にくる精霊達。


 手を翳し横に振る。

 大量に魔力を籠めて闇魔法の昏倒の魔法を使う。


 さすがに完全に意識を奪うことはできないが、目を擦りながら微睡んでいる様子の5匹に満足し、無限収納から特製の首輪を5つ取り出すと手早くはめる。

 そこで一様にびっくりした様子の精霊達は、やがて動かなくなりボトリと地面に落ちた。


 俺はそれらを拾い上げ、檻に入れ城へと転移で戻った。

 これで任務は終了だ。


 暫くはのんびりと女でも抱くとしようかな?

 そう考えた時、あのクロという同郷の男と、その隣にいた青い髪の女を思い出したが、魔王の言葉が頭によぎりかぶりを振る。


「あの男には私が許可するまでは近づくな」

 今回の任務を命じられた際にそう言われていた。


 だが、許可が出ればすぐにても……

 俺はそう考えながら城の一室へと入っていった。


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