68.冒険者クロ、のんびり旅で巻き込まれ
やっと熱が平熱に戻りました。ゆっくりですが再開いたします。
昼過ぎ、眠い目を擦りながら布団から出るとシャワーを浴びる。
今日は行くことのできなかった冒険者ギルドへ報連相に行こうかな?そう思ったが素材はすでに購入したし、この街ではもういいかな?と思って次の目的地を考える。
無限収納の中を確認する。
予備のバッグが心許ないな。
魔法のバッグを渡すことはままある。
立ち寄った孤児院などの状況に見かねて食料を入れて渡すのに丁度良いからな。
その為の時間停止付きの小規模な物は現在3つ。
だが素材となる時空石が効率よく取れるのは俺の知る限り帝国の迷宮にしかないが……遠いな。
破損してしまった黒炎之断罪の材料でもあるし、そろそろ纏めて取りに行きたいが例え最高速で飛んで行ったとしても1週間はかかるだろ?いや、もっとかな?
彼是と考えている間にジュリアも入ってきたことで、今後の予定についての思考を一時中断することになる。
今はまだバッグは考えなくて良いだろう。
シャワーを浴び終え着替えた俺は、結局そう結論付けた。
不死皇帝からドロップした不死の宝玉についてもじっくり考えなきゃならないし、やっぱり暫くこの街に滞在するか?
結局、ジュリアの支度が整ってから冒険者ギルドを訪ね、元Aランク冒険者だという厳ついギルマスのおっさんにペコペコされながら暫く滞在することを告げた。
街の問題については今のところは何もなかったようで、安心して作成に熱中できそうだ。
3日後、部屋に缶詰めで作成に勤しんだ結果、宝玉には高い確率で状態異常無効化の効果を付与できることが分かった。
早速ジュリアの閃覚之籠手にピンポン玉程度の宝玉の3分の1ほどの量を使って、状態異常の完全無効化を付与することができた。
名を閃覚之籠手から完全無敵之籠手と改めた。
デザインも元々のシルバーベースに赤みがかったところにうっすら黒いラインが螺旋状に入っていた。
ついでに結界のベールも改良し、俺とジュリアは無条件で結界の出入りができ、大きさもある程度調整できるようにした。
さらには結界内を常に適温に調整する機能も付けた。
さらには火属性と風属性の魔石を使って、マッドが使っていたような魔道兵器も作ってみた。
拳銃の様な作りだが銃身は少し長めに作っている。
銃については知識がほぼ皆無なのでなんとなく長いとまっすぐ飛ぶようになるんだろ?ぐらいの浅い知識でのデザインだ。
決して長いとカッコイイよね?という安易なデザインではないのだ。
銃身の先に土属性の魔石も組み合わせてあるので、俺の魔力を使っていくらでも実弾の様な形をした石礫を連射できるようになった。
その、魔弾之銃と名付けられた魔道兵器は、俺の所持する武器としての威力はいまいちだが、小さいながらあのマッドが使っていた兵器の何倍も威力が出る。
おもちゃの様な扱いだが、低階層を進む際はこれのみで進むのも楽しそうだ。
ジュリア様にもう一つ同じものを作ってみた。
ジュリアの魔力でもかなりの弾数を使用できるので、ギルドの訓練場を借りて試し打ちしていたら、金が取れるんじゃないか?というぐらいのギャラリーができてしまった。
購入希望も多数であったが、他人のために同じものを作るのは面倒なので断った。
ギルドマスターが一番ガッカリしていた。
十分に作成を楽しんだ俺は、次なる目的地へと目指してジュリアと、そして精霊達と一緒に旅を再開した。
次なる目的地は、少し距離があるがこのアトボティブの北、やや西寄りで白砂の海岸が湾を形成しているリゾート地でもあるポースタラッタという街に決めた。
馬車で進めば3日程の道。
飛べば半日も経たずに着くだろうが、ジュリアと話し合った結果、のんびりと徒歩での旅となった。
時折休憩を挟みながらのんびり歩く。
休憩時には無限収納に死蔵してある料理を取り出しお腹を満たし、夜は結界のベールの中で熱い夜を過ごす。
無限収納には食料は潤沢だ。
浄化も使えるしやろうと思えば風呂も作れる。
たまに乗合馬車などとすれ違うが、怪訝そうな顔をされたり、乗ってくかい?などと声をかけられたりもした。
それを断りまたのんびりと歩く。
そんな気ままな旅を堪能していた。
そんな旅も5日目のお昼前。
夕方には着くだろうというところに差し掛かった頃、背後から大きな音を立てながら馬車が疾走してくるのを感じた。
馬が嘶きドドドと必死で馬車を飛ばすその様に、少しイラっとしながらも道の脇に2人で避けておくが、その背後を見るからにな風貌の馬に乗った男達が追っているのが遠目からでも確認できた。
盗賊だろうな?面倒だ。
俺はそう思って手助けするか決めあぐねていた。
「ジュリア、どうする?」
「ん?盗賊だろ?これは助けるだろ?」
「そうだよな」
人助けは大事だ。
俺は追い立てる盗賊が横切るタイミングで、2メートル程度の高さに石礫をバラまいた。
馬に罪はない。
石礫を受けて落馬した男達が藻掻いているが、何人かは受け身をとったようですぐに起き上がってきた。
「邪魔するなら殺すぞ!」
そう言われたのでその男の足を問答無用で断裂する。
脚を切断された男の悲鳴が木霊し、その男を残して逃げてゆく男達。
よっぽど余裕が無かったのか放置された馬達は困惑気味であった。
まだ泣きわめいている男の切断面だけ治癒しておくと、必死の形相で這うようにして逃げていく。
その歩みは遅いがきっと彼ならアジトに戻れるだろう。
頑張ってほしい。とその背中を見送った。
本当に遅いな……これは無理かもしれんね。
「あの、お助けいただきありがとうございます!」
亀の歩みを眺めていた俺にかけられた声に振り向けば目の前には銀のフルプレートを着込んだ金髪の素敵な女騎士―――
「いだぁっ!」
見惚れていたわけじゃないのに尻に痛みが走る。
その痛みから水の刃かな?と予想する。
まあそう詠唱されたのをを聞いていたけども……
その女騎士は尻をさする俺に一瞬怪訝そうな目をしたものの膝をついた。
「此度は危ないところをお助け頂きありがとうございます!」
膝をつく女騎士を上から眺めれば鎧の胸元からたわわな……
俺は即座に首を振ってジュリアの方を向いた。
笑っている(目は笑っていない)のでギリギリセーフだろう。
次の瞬間、御者をしていた髭親父が御者台から降り、開け放たれていた馬車の扉からこちらを覗いていた執事っぽい男性と、続いて金髪ロールにピンクのドレスの少女が降りてきた。
その少女の高貴な見た目に厄介ごとなんだろうな。と感じて逃げ出したくなった。
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