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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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45.冒険者ジュリア、足手纏いにはなりたくない


 2日目となった王都観光は人気なのでぜひ、と浪漫座と言う場所に連れてこられた。

 前世で言えばミュージカルの舞台の様なものであった。


 その中身は突如現れた黒髪の冒険者が迷宮を攻略し、ダークエルフの姫と結ばれる物語だった。


「おい。これはなんだ」

「これは、クロ様と私に似た人の冒険譚で……」

 どうやら、この浪漫座を仕掛けているのはナディアらしい。


 昔ミュージカルなんかの話をチラっとしたのがまずかったか……


 次に訪れた名所と呼ばれる王都の外れでは、巨大な竜に騎士達が向かってゆくという構図が描かれた石碑が経っていた。

 ここは、過去に俺が最後に私兵を薙ぎ払った場所だったような気がするが?


 石碑には古竜と国軍の戦禍跡となっていた。

 周辺に残る大きく抉れたりしている跡は古竜との激しい戦闘の跡と石碑には刻まれているが、実際には俺が巨大な氷棺をいくつも落とし、厄介な貴族の私兵達を指揮する貴族共々蹂躙した場である。


 馬鹿な貴族連中が徒党を組んで俺を一方的に下僕として従えようとして、拒否した俺に対し私兵を集め追い回し、命じられた私兵達もまた俺を完全に舐めきって我先にと突撃してきた。


 その私兵達をこの地で蹂躙したのは俺だ。

 自動自得とは言え元々は俺が派手に力を見せびらかした所為でもあるし、今では多少反省したい気持ちはある黒歴史の残る場所だ。


 そんな現場に連れてこられて何をと思ったが、ナディアがはにかみながら石碑の横を指差しており、そこには大きく文字が彫ってあるのに気が付いた。


――― ホントはアホなキゾクがやらかしたアトチ


 それは日本語で掘ってあった。


「ナディア、お前が掘ったのか?」

「はい!バカな権力者が二度とクロ様にちょっかいをかけないように、心を籠めて掘らせて頂きました!」

「俺は、そんなことの為に文字を教えたわけではないんだがな?」

 そう言いながらもナディアの頭をポンポン撫でる。


 ナディアには昔、ひらがなとカタカナ、竜や闇、黒霧といった漢字を教えてやったことがあった。

 まさかこんな使い方をするとは思ってもみなかった。


 だが、少し考えた後でその文字の書いてある部分を切断(リッパー)削った。


「クロ様!何をなさるのですか!」

「お前な、もしこれを読める転生者なんかが見たら、俺が書いたかと思われて面倒ごとになるだろ?」

 俺の返答にハッとした顔をするナディア。


「も、申し訳ありませんクロ様!」

「まあいいよ。こんなのはもう無しにしてくれよな!」

「は、はい」

 歯切れの悪いナディアに、不信感が募る。


「おい、同じような奴、他の場所にはないよな?」

「ひぇ?いや、ありまぜん、よ?」

「ホントに?」

「ホントに、ありま、す……すぐに消してまいりますのでお許しを!」

 俺は慌てるナディアにため息で返す。


「じゃあ、今回はここでお開きにしよう。案外楽しかったよ。また何かあったら頼るから」

「はい!行ってまいりますわ!クロ様も、ジュリア様も、またお会い致しましょう!」

 少し寂しそうな笑顔を残して、ナディアはどこかへ転移していった。


「はあ……じゃあ二人っきりになったし、どうする?」

「うーん、面倒な奴もいなくなったし……俺、もっと強くなりたい!」

「いや、少し観光とかさ?王都も久しぶりだし、飯食いに行くか?」

「俺はもうクロの足手纏いにはなりたくはないんだ!」

 真剣な表情で見つめるジュリアに負け、俺は王都の迷宮へ行くことにした。




「いいか?絶対に無理はするなよ?装備が手薄なんだからな?」

「わ、分かったって!」

 ジュリアの業火之舞鎧(ごうかのぶがい)はスイに撃ち抜かれ修復ができていない。


「やっぱり俺も一緒に……」

「クロがいたら修行にならないだろ!スイもいるんだから大丈夫だ!」

「でもな?」

『スイいるから大丈夫だよぉ?何かあったら呼ぶしぃ』

「わかった……だが、何かあったらすぐに帰ってこいよ?連絡もしろ!絶対だぞ?」

「ああ、分かったからクロは素材集め、よろしくな!」

「ああ。そっちは任せとけ。早く装備直したいしな!」


 その後も俺は何度か心配の声を向け、ジュリアに宥められつつ遥か昔に記録していた王都の迷宮30階層にジュリアを連れてゆく。

 俺が一番の目的となる悪霊憑きの騎士(デーモンズナイト)のいる80階層へ移動するまで、ジュリアに心配だと言ってはまた呆れられてしまった。




「はあ、ジュリアから連絡が無いな。連絡がないってことは大丈夫ってことだよな?でもなーピンチの時に連絡できるはずないし……やっぱ様子見てこようかな?」

 ジュリアと別れて2時間。


 独り言をつぶやきながら分析(アナライズ)悪霊憑きの騎士(デーモンズナイト)をターゲットにしてひたすら精霊石を集めている。

 悪霊憑きの騎士(デーモンズナイト)は中サイズの精霊石がそれなりにドロップする。

 通常ドロップの魔鉄も柔らかいが加工はしやすい為、装飾部分には欠かせない素材でもある。


 流石にこの80階層付近は閑散としている。

 未だにこの辺りに到達する冒険者はいないようだ。


 今の上位冒険者達は50階層には到達しているだろうか?

 この迷宮で50階層付近であれば1体魔物を狩れば金貨1枚程、一晩豪遊できる程の金が手に入る。

 よっぽど血の気が多い奴でなければ、その先を命がけで挑もうとはしないだろう。


 それゆえに、最下層である100階層付近の素材をバンバン提供していた俺は目立っていたのだろう。

 だから傲慢な貴族に付き纏われ結局……


「はー、ダメだな」

 一人になると要らぬことを考えてしまう。


 俺は周りに集まってきていた骸骨武者・闇ダークスケルトンナイト双頭の吸血蛇ダブルブラッサクスネークを手に持つ大剣で叩き潰す。

 大剣は硬さを求めただけのアダマンタイト製である。

 この程度ならこれで十分であった。


 ドロップした骨石(闇)と血清を拾い無限収納(インベントリ)へと収めた。

 どちらも通常ドロップだが、骨石(闇)は粉にして混ぜると闇系統の魔力との親和性が高まるし、血清は強力な毒消しの材料となる。


 だが、精霊石も中サイズが3つ程ドロップしている。

 もう少し狩ったら連絡してみよう。


 そう思いながら脳内マップに現れた悪霊憑きの騎士(デーモンズナイト)を目指して全力で走り出した。


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