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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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43/96

43.冒険者達が飯屋で大酒を飲みまくる


 将軍フランコにより東門でのことがひけらかされた俺達。


「クロさんって言うんっすね!すげー!騒ぎがあったのも本当で、ってことは英雄じゃないっすかー!」

「声がでけー!」

 チャラ女子店員の声に周りが注目してしまっている。


 彼方此方で俺を見ながら何かを話している。

 そして、フランコに話を聞きに来る者達も出始めたので、もう話を阻止するのは難しそうだ。

 目立ちたくはないが、話を阻止する程の労力を使う程でもない……


 俺はため息を付いた後、テーブルをバンと叩く。


「お前達!ここは俺が奢る!だから記憶を無くすまで飲め!<無限収納(インベントリ)>、おいチャラ店員!お前の責任でもあるからな!これをやるから全部使いきれ!」

 俺は周りに叫ぶと無限収納(インベントリ)から鬼人族の店で買った1樽出し、店員に命じた。


 そして、店内をぐるりと回り、計5樽を置いて回る。


「飲み干した奴等は言え!また出してやる!」

 そう宣言すると店内は大騒ぎとなった。


 チャラ店員は奥へ走ってゆくと、他の店員達と一緒に柄杓とグラスを持って戻ってきた。


 それから数時間……樽はあれから5樽追加した。

 元々あまり酒を飲まないナディアは早々に潰れテーブルに突っ伏している。

 ジュリアも相当飲んだがふらふらしながらも、手ずから酒を柄杓で注いでは飲み干している。


 俺も相当飲んだがこの世界に来てから精霊の仕業かどうかは知らないが、あまり酔えない。

 旨い酒だが酔いがこないので旨さ半減というところだろう。

 仕方なしにトイレに行っては飲みを繰り返しているが、すでに俺の腹はパンパンだ。


「上機嫌に酔っぱらいやがって!」

 すでに半数以上が潰れて倒れ込んでいたりする状況に、またも深いため息をつきながら、ジュリアの飲みっぷりを眺めるのだった。




「うーん、クロォ、頭が……頭が割れるのぉ……」

「クロ様……私は死んでもあなたは生きて下さい……」


 俺は、そんな寝言を聞きながら目を覚ました。


 昨夜は潰れた2人を地獄絵図の様に全員が酔いつぶれ倒れている店内から救済し、宿へ戻って来たのだが、さすがにそのままナディアを放逐することはできず、ベッドに放り投げておいたのだ。


 寝る前にはきっちりとエドモンドへ連絡をした。

 遅い時間にも関わらず寝ずに待っていてくれた様で、無事に解決したことを伝えると、背後からは大きな歓声が上がってい。

 他にも寝ずに待機してくれていた人達もいたのだと知り、すぐに連絡をしたら良かったと後悔したが後の祭りであった。


 それから、ジュリアが無事かという話にもなり、無事だが酔いつぶれて寝てることを伝えると、なぜか謝罪されてしまった。

 エドモンドが「貴族令嬢として先に酔いつぶれてしまうなどはしたない」と言っていたので、そう言うものなのだろう。


 その後はシャワーを浴びる気にもなれずそのままソファで不貞寝したのだが、さすがに熟睡することもできずに早い時間に2人の寝言で目が覚めてしまった。


 ダラダラとシャワーを浴びて着替えも済ませ、寝言で唸るジュリアを眺める作業に没頭する。


 飯屋のトイレで普段着に着替えていたので上着を脱がせただけだが、胸の谷間がしっかりと覗けて良い眺めであった。

 隣でナディアがはしたない恰好になっているが、そろそろ起こして放り投げてしまおうかと考えている。


 だがそうするとナディアが騒ぐだろうし、そうなるとジュリアも目を覚ましてしまうかもしれない。

 そう考えて仕方なくナディアも黙って寝かせることにしていた。


 そんな俺に、エドモンドから連絡が入ってきたので寝室から出る。


『クロ君、早くから済まない。今大丈夫だろうか?』

「おはようございます。エドモンドさん、大丈夫ですよ」


 エドモンドは早朝から鬼人族の関係していると思われる場所へ連絡し、すでに今後の事について話し合っていると言う。

 やはり族長からの連絡が無いと混乱している所もあったが、幹部連中が問題を起こし討伐されたと聞くと、どうしたら良いかと逆に尋ねられたという。


 俺は娼館も飯屋も子爵直営でやったらどうか?と尋ねると、それも良いなと返ってきたが、「だが奴隷商は潰す」とマジトーンで言っていたので、俺も「それが良いです!」と返しておいた。

 俺も、特にあの飯屋は酒を仕入れたいし、何なら酒造がどこでやってるかもやってるかも知りたいことを伝えると、それも確認しとくと言ってくれた。


 俺は2~3日後にはそちらに戻ることを告げ、エドモンドとの通話を終えた。


 そして寝室に戻ると、目の前に現れた恨めしそうな顔の水の精霊。

 俺がギャッ!っと悲鳴をあげたのは言うまでもないだろう。


「な、なんでこのタイミングでそこに立つ!」

『リズ様がーもう良いってぇ?ホントはすぐに契約したかったんですよぉ?この時間なら大丈夫ってぇリズ様がぁ』

『空気読んだ』

 水の精霊は契約がしたかったようだ。


 そしてリズは真顔だが胸の前に腕を組んでのけぞってるので褒めて欲しいのかもしれない。


「あ、ああ、契約な。するする」

『やったぁー!じゃそういうことでぇ』

 水の精霊が軽く返事しただけで、どうやら契約が成立したらしい。


 体中の魔力が一気に抜き取られた不快感に膝をつく。

 もちろん魔力が無くなることはないが、気持ち悪さに吐き気を覚える。


「クロォ、大丈夫ー」

 その声に振り返ると、爆発した頭を押さえたジュリアが心配そうな顔をしている。


 きっと俺の悲鳴で起きてしまったのだろう。


「ジュリア、おはよう。俺は大丈夫かな?それよりジュリアの方が心配かな?二日酔いにはなってないか?」

「うーん、大丈夫かな?」

「そうか、よかっぐぇ!」

 俺は急激に首が捻じ曲げられ蛙みたいな悲鳴を漏らした。


「殺す気か!」

 俺の頭を不思議な力で押さえつけ振り向かせた主に文句を言い放つ。


『名前ぇ』

 だが、その主である水の精霊は涙目だった。


「ああ、それはすまんと言っていいのか?いやでもさすがにあれば酷いと……まあ、うん。スイで……」

『スイ?』

「そう、スイ」

『ふふふ。私はスイ、水の精霊のスイなのぉー』

 くるくる回りながら喜ぶ水の精霊改めスイには、リズとは違い表情豊かだなと、痛む首を摩りながら思った。


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