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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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30.冒険者クロ、素材を集めに迷宮へ


 翌日、久しぶりに普通の時間に起きることの出来た俺達は迷宮へ向かった。


 29階層の開けた位置にマーキングしていたのでそちらを使って転移する。

 周りに数体のキメラがいたのでそれらを瞬時に切り伏せる。


 それからお昼まで時間をかけ階層を上がってゆく。

 一部、他の魔物を喰いまくった結果と思われる多手多足な巨大生物が誕生していたが、それは一撃で切り伏せられる程度の存在であった。


 25階層まで上がってゆくと、すでにキメラは現れなくなっていたので全滅させられただろうと思い外に出る。

 入り口にいる兵士たちに全部終わったことを報告しておいた。


 宿でシャワーを浴び、遅めの昼食を食べた後は部屋へと籠る。

 アレッサンドラから貰った報酬の闇結晶の塊を眺めながら、作成(クリエイト)に思いを馳せる。


「うーん、ジュリアの鎧とマント、俺とジュリアのインナーにも付与したいが、鎧は壊れても嫌だし素材が足りないな」

 俺がブツブツとぼやいているのをジュリアはニコニコと楽しそうに見ている。


 付与は重ね過ぎると対象の装備が壊れてしまうことがある。

 そうならないための見極めや、同時に耐久値を上げる素材も必要になる。


「よし!ちょっとこの街の元々の迷宮の情報でも確認するか?」

「ギルドに行くのか?」

「ああ。クラウディアさんなら詳しいだろうし、一応は素材屋も覗くけど、純度の高い鉱石は迷宮でしか手に入らないからな」

「よし行こう!今日はちょっと不完全燃焼だったからな!」


 こうして宿を出る2人。


 やはり素材屋には目当ての物は無かったが、変わった素材が何点かあったので無限収納(インベントリ)に眠る不要なドロップ品のいくつかと交換した。

 冒険者ギルドは昼過ぎという事もあり少し閑散としていた。


「クラウディアさん、ここの迷宮の情報が知りたいです。できれば鉱石系を落とす魔物や採掘できるエリアはありませんか?」

「それなら―――」


 迷宮の20階層付近に丁度良い魔物が出るというのでパーティ掲示板に依頼を張ってもらう。


『求む!迷宮20階層へのマーキング』

 20階層はさすがに一気に潜れる階層ではないので、マーキングを持ってる人に転送してもらえるように依頼した。


 これで暫く待つと1時間程でクラウディアから手招きされる。

 そこにはここ数日何度か見かけた4人パーティが待っていた。


「俺はクロだ。よろしくな!早速だが今から行けるか?」

「ああ、ゲラだ!よろしく。俺達も25階層辺りを潜る予定だから、少し上の階層だがついでに連れてってやるよ」

 リーダーと思われる銀の鎧を来た大男がそう言って握手する。


 交渉の結果、必要経費込みで金貨2枚となった。

 特に値下げ交渉をしていないのでそれなりの金額ではあるが、相手も新顔の俺達には警戒はしているので4人全員で行くと言うのだから、それなりの対価としてこの金額を提示した。


「それよりも、2人だろ?大丈夫なのか?俺達は一緒には狩れないぞ?」

 身軽そうな男が心配そうにそう言うが、俺はニッと笑って大丈夫と返しておいた。



 早速迷宮に入るとゲラと手を繋ぎ転移札を使ってもらうと、すぐに緑の壁の小部屋へと転移ができた。


「ありがとう。助かった」

「なーに、俺達も良い稼ぎになった。また何かあれば言ってくれ。一応25階層と30階層もマーキングしてある。まあ俺達は30階層ではまだまだ狩れないけどな」

「ああ。また頼む」

 軽く挨拶を交わし、ゲラ達が部屋を出るのを見届けると、早速この場をマーキングしておく。


「よし!俺達も行くか!」

「うん!」

 2人仲良く小部屋を出ると、目的の岩鎧の狂犬(コボルトロック)を探す。


 岩鎧の狂犬(コボルトロック)は群れるので大量狩りもできる。

 通常ドロップの狂犬の牙は不要だが、小石サイズの精霊石をそれなりに落とすので作成(クリエイト)を使える者からは人気の高い魔物であった。

 コボルトが犬の精霊の成れの果てと言われているのもこれを落とすことがあるからだ。


 精霊石は武具の耐久値を上げる効果もあるので、何か追加で付与する際には使いたい素材であった。

 人気もあるので常に品薄となっている。


 それでも、これ目当てに長く狩るよりもこの迷宮でも少し下の階層に潜ればそれ以上に稼げるのだから、品薄の理由が理解できるだろう。

 ゆえに、精霊石は自分で落とすしかないのだ。

 無限収納(インベントリ)から秘密兵器の強運之外装(ギャンブラーマント)を取り出し装備する。


 適当に作成(クリエイト)した際に偶然できた逸品だ。

 ドロップ運を著しく上げてくれるが、反面かなりダサい。

 なんせ虹色をしたペリースで左肩だけ派手に着飾っている。

 この色合いは追加で何を合成しても変わらなず、かといって無理に付与を続け破壊するには惜しい効果であった。


 その後に何度も同じ様な素材を組み合わせたが、残念ながら再現できなかった貴重品だ。


「クロ!なんだそれすごっ!」

 ジュリアもさすがにこれはカッコイイとは言わずに指を差し笑っていた。


「これはな、ドロップ運が上がるありがたい装備なんだよ。見た目はヤバい奴だが、さらに言うと防御力は皆無だがな!」

「くはは、そうなんだ。まあ良いんじゃないか?」


 黒死無双(こくしむそう)を手に準備が完了した俺は、脳内マップを確認しながら魔物を目指しジュリアと2人走り出した。


 それから3時間、小粒ながら目標だった4つの精霊石を獲ることができた。


 この階層には岩鎧の狂犬(コボルトロック)の他に、岩の大蛇(ロックスネーク)までいたのはラッキーだった。

 こいつは通常ドロップで蛇肉というゲテモノ素材を落とすが、稀にスネークアイという宝石を落とす。

 1つだけだがドロップしたのでこれも貴重な素材としてありがたく収納しておいた。


「もう十分だな。マーキングはしてあるしそろそろ帰ろう」

「うん!」

 ジュリアの元気な返事を聞いた俺は、帰還札で迷宮を出ると、依頼が出ていた蛇肉と犬牙をいくつか納品し、小銭を稼いで宿まで戻る。


 シャワーを浴びたら作成(クリエイト)するぞ!と思っていたが、狩りでまだ興奮冷めやらぬジュリアにより、結局夕食まで時間を浪費することになった。


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