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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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29.冒険者クロ、馴染みの幼女を呼び出して


「なんだってこんな事態に……」

 アレッサンドラが頭を抱えている。


 子爵邸での出来事を話すとどんどん顔に生気が無くなっている様子が窺えた。

 そんな最中、俺のピアスが魔力を感じた。


 左耳についている青空鉱をはめ込んだビアスは、俺が持つ通信具が受信すると反応する魔道具だ。


「誰だ?<無限収納(インベントリ)>」

 無限収納(インベントリ)から滅多に使用しないカード型の通信の魔道具を取出した。


 カードに表示されていたのは国王陛下の名であった。


「あー、今回の件かな?」

 そう思ってカードに魔力を流すと、そこからは幼い女の声が聞こえてきた。


『クロ様、ですか?』

「おい、なんで陛下の通信具からお前の声が聞こえてくるんだ?」

 相手は残念な秘密結社を率いているダークエルフ、ナディアであった。


 話を聞くと、この数日で拠点を何箇所か回っていたナディアは、王都でも思うままに組織改革を進め、不適格な組員相手に大暴れして警備の兵に捕縛されたそうだ。

 もちろんそれらから逃げることは簡単であったが、俺との約束で真面目にすると誓ったナディアは大人しく城へ連行されたそうだ。


 なぜ王城?と思ったが、今代の国王陛下ベレンガーリオ・ビフレストが、今回の迷宮での騒動に苦悩している最中、最古のダークエルフとの噂が有るナディアが捕まったとの報告を受け、知恵を借りたいと呼びつけたそうだ。

 そして、心当たりがあったナディアは俺の番号を教えろと迫ったと……


「おい……王を脅すとは、なんて事するんだ」

『えっ?クロ様がそれを言うのですか?』

 俺はいいんだよ……王国の貴族共に迷惑をかけられた時の事だし……


「とにかく、心当たりがあるんだな?」

『はい!もちろんです!』

「ちなみにな、真世界の救世ワールドサルヴェイションってところの褐色の男が危ない魔道具持ってきたそうだ」

『あー、じゃあやっぱり鬼人族の奴等が仕切ってる組織ですね』

 情報源を確保!そう思った俺はすぐさまナディアを呼んだ。


「クロ様!」

 居場所を伝えるとすぐに転移してきたナディア。


 抱きつこうとしたのでおでこをグリグリして突き放しておいた。


「クロ様の愛が痛い……」

「いいからさっさと知ってることを話すんだ!隠し立てしても後でバレるんだからな!」

「えっ?私、尋問されてるんですか?」

「いや、違うが早くしろ」

「わ、分かりました……」

 泣きそうな顔のナディアに少し悪いなと思いつつも話を聞いた。


 あの真世界の救世ワールドサルヴェイションという組織はそれなりに古く、100年程ぐだぐだと活動しているようだ。

 元々は亜人として若干ではあるが毛嫌いされていた鬼人族がイメージアップの一環として、"貴族を滅ぼし身分さの無い世界を作る"といったプロパガンダで地位を向上させようとしたのが始まりなのだと……


 実際は大した支持も得られずその怒りの矛先が貴族や平民、そしてこの王国自体へと向かった挙句、今回の様に世界を滅ぼし、できることなら自分たちが支配するのだという思想を持ったキチガイ集団だとナディアは力説していた。


「鬼人族が絡んでるなら多分すぐに拠点にしている場所もいくつかピックアップできると思います」

「そうか。なら頼む……報酬はこれでどうだ?」

 そう言ってナディアに金貨1枚を握らせる。


 金貨を握り「きゃは」と喜ぶナディア。


「家宝にしますね!」

「ああ、うん」

 金貨に頬ずりするナディアを見て、そう言えばお金は雑菌が繁殖していて、トイレの床並みに汚いって聞いたことあったっけ?と前世の記憶を思い出していた。 


「じゃあ、頼むな」

「はい、ですが……転移したばかりで魔力が無いのです。今夜はクロ様のベッドに泊めて頂ければと……」

 そう言って頬を赤らめ俺に寄り添おうとする見た目が幼女なナディア。


「あだだだだ!」

 ジュリアに顔をグイっと掴まれ体は中を浮きバタバタと手足が彷徨っていた。


 数秒後にはプラーンと力が抜けたのを確認すると、ジュリアはふんと鼻を鳴らして部屋のソファーにナディアを投げ捨てた。


「きゃう!」

 ナディアの声に「おっ、生きてた」と言ってしまった俺は、涙目のナディアにジッと見られて少し可哀そうに思ってしまった。


「仕方ないな」

 そう言いながらナディアに近づき、その肩に手をあてる。


「<魔力操作(ドレインタッチ)>」

「ふぁぁぁぁ!クロ様の魔力が全身をまさぐって蹂躙されてぇ!私、ダメになっちゃうぅー!」

 大量の魔力をナディアに流し込んだ俺は、自分の体を抱き悶え震えるナディアから視線を逸らし、ジュリアの肩を抱いて帰ることにした。


「はっ!天国が見えた!ってちょっと待ってくださいクロ様ぁ!」

「なんだよ、もう魔力全快しただろ?さっさと帰って鬼人族について調べて来いよ」

「いえ、その……その事なんですが……」

 モジモジしだしたナディアにイラっとする。


「言いたいことがあるなら早く言え!」

「はい!クロ様の通信コードを頂ければ……連絡を、するのにも必要ですし……」

 通信コードと言うのは通信具のカードの番号の事だ。


「それならそうと早く言えよ。まったく……<無限収納(インベントリ)>」

 そう言ってカードを取り出しナディアのカードと合わせる。


 これで通信が可能になったが、ナディアの名前は"アホ黒幼女"と付けておいた。


「ありがとうございます!毎晩報告のご連絡をいたしますね!ではクロ様、お気をつけてお帰り下さいませ!」

 良い笑顔で俺を送り出すナディアに軽く手を上げ帰ろうとしたが、そもそもこの部屋はアレッサンドラのだったなと思い出す。


「アレサも、何か分かったら連絡はするからコードを寄こせ」

「はぁ……私的な連絡はするなよ」

「するか、アホエルフ!」

「誰がアホエルフじゃ!」

 ギリギリと歯噛みするアレッサンドラだがしっかりカードは取り出しコードを交換する。


 名前はアホ老女にしておいた。

 今度こそ、とジュリアの肩を抱き部屋を出る。


 ジュリアは無言で俺にカードを取り出した。

 俺は素早くカードを合わせ、愛しのジュリアと登録しておいた。


 それを見せるとふふふと笑いながら機嫌を良くしていたが、まだ少し様子がおかしいジュリア。

 このまま宿へ帰ると引きずられるようにバスルームに連れられ、命じられるままに魔力操作(ドレインタッチ)で魔力を出し入れさせられることになった。


 ジュリアに新たな癖が芽生えてしまい戸惑うが、俺もそれなりに楽しかったので良しとしよう。

 こうして、長く感じた一日が終わった。


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