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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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27.冒険者クロ、秘密結社みーつけた


 迷宮にたどり着いた俺達。

 ジュリアを残し、能力強化(ドービング)により脚力全開で木の影に隠れる2人に近づいた。


「わっ!」

「なんだ!」

 驚く2人に手をかざす。


「<だまれ(ディスペル)><千の鎖(サウザントチェーン)>」

 俺に捕縛された2人は大声で攻撃魔法を唱えているが、当然それらは打ち消され、魔力だけがドンドン吸い取られてゆく。


「魔法は封じた。大人しくしたら逃がしてやらないこともない。いいな?」

 目に力を入れて優しくお願いすると、男達は震えながらも何度もうなずいてくれた。


「お前たちは、何者だ?」

「俺達は、ちょっと冒険者に憧れているっていう?……」

「そうそれ!兵士達が居るから何かあるのかなって見てた、だけなんだけど何でしょうか?」

 シドロモドロになる男達をジッと見る。


「黒いローブに見覚えがある。地下にいた奴とか……まあ死んだけど」

「ひっ!殺さないで!」

「ごめんなさい!全部話すので許して!」

 それだけで慌てた様子の2人を見て、ちょろいなと思ってしまう。


 ここで自害とかされちゃまた手掛かりが無くなるし?と思ってたからこれは正直助かった。


「よし。どうやらお前達はまだ後戻りできそうだな。話してみろ。助けになれるかもしれんぞ?」

 嬉しそうに表情を変えた男達は我先にと情報を話し始めた。


 この2人が所属してるのは、秘密結社『真世界の救世ワールドサルヴェイション』というらしい。

 貴族制度を無くし平等な世界に導くため、国家を一度ぶっ壊そうとしている正義の組織なんだ!と言われたが、面白い発想だと思った。

 俺も貴族制度なんてぶっ壊してやる!と王都で暴れたこともあるしな。


 だが、もちろん今はそんなことをしてもらっては困るのだ。

 俺はただ平凡に自由を謳歌したいだけなんだ。

 ジュリアと混沌とした世界を生きるつもりは無い。


「よし!拠点はそのグリジ子爵の屋敷だな?」

「サーイエッサ!その通りです!」

「領主のテオフィロ・グリジ子爵が組織のトップですイエッサ!」

「<分析(アナライズ)>、よーし素直で良い子だ!」

 俺は、分析(アナライズ)で男2人の言葉の真偽を判定し、真実と判定したところで拘束を解いた。


 そして……


 黒死無双(こくしむそう)を取り出し素早く体を二つに切り離した。

 散り際は言葉も発せず驚いた表情でそのまま絶命し、物言わず亡骸となった黒ローブの男達は、追加で放った圧縮した<業火(ヘルファイア)>により塵となって空へと消えた。


 ジュリアの元に戻ると、すでに近くまで来ていた昨日の冒険者達と兵士の1人がこちらを恐怖が入った目で見ていた。


「ジュリア、終わったぞ?」

「お疲れ様」

 俺の腕を捕まえて抱き着くジュリアの頭を撫でる。


 当然<浄化(クリーン)>はここに移動する間に使ってある。


「あ、あの……あっちにいた2人は……」

 兵士が気まずそうに聞いてくる。


「あいつ等は例のアレの仲間だ。すでに我欲に穢れ人を殺している。情報を聞いた後、不要と判断して消した」

「わ、分かった……」

 兵士は逃げるように迷宮の入り口に戻ると、通信具を取り出しどこかに連絡をしていた。


 アレッサンドラへの連絡だろう。


「あの、クロ殿で良いのですね?」

「ああ、そうだがお前達は昨日絡んできた奴等だよな?何が文句でもあったか?」

 俺の言葉に即座に土下座する5人の冒険者。


「滅相もない!昨日、20階層を過ぎたところでもう無理と判断して戻りました」

「クロ殿の助言が無ければ突撃していたと思います!」

「慎重にしていたから力量の差がはっきりわかりました……少しでも囲まれたら多分全滅してました……」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 5人が揃ってお礼を言うので、礼儀はちゃんとしている奴等なのだろう。


「いいよいいよ。まだ下の方にキメラもいるからな。絶対に入るなよ?本当は今日全部狩ろうと思ったが明日になりそうだから」

 その言葉に元気に返答した5人は、立ち上がると何度も頭を下げながら街の方へ歩いて行った。


「さてと……ジュリア、とりあえずの黒幕はこの街の領主だったわ」

「そうか。でも行くんだろ?」

「まあな。俺は御貴族様とか関係ないから。相手が誰だろうと俺の平穏を脅かそうとするなら排除する」

「じゃあ行こうぜ!」

 男前な返事をしたジュリアが街へ向かって歩きだす。


 その仕草にドキっときて後を追いかける。


「リズ、ジュリアを頼むな」

 そう言って魔力の塊を放る。


『うまかせて』

 噛り付きながらそう言う食いしん坊な精霊を信じつつ、俺は領主であるテオフィロ・グリジの子爵邸へと向かった。




「ここだな」

 ついて早々、門の前に待機している警護兵の2人に声をかける。


「冒険者ギルドの依頼できた。通してくれ」

「は?」

「何を言っている?」

 警護兵は当然の方に通してはくれないようだ。


「御用改め。通さないなら力づくで行くが?」

 俺の言葉でやっと身構える2人。


「ここは御領主、グリジ子爵様のお屋敷と知っての狼藉か!」

「冗談では済まさんぞ?」

 雇われた奴だし、殺す訳にはいかないな……ブルーマークだし。


「攻撃してもいいが、命の保証はしないぞ?」

 殺気を籠めて脅してみると、2人とも後ずさる。


 だが、背の高い方の護衛兵が勇気を振り絞ってなのかは知らないが、腰の剣に手をかける。


「ちっ、<眠れ(スリープ)>」

 結局、2人の護衛兵は舌打ちしながら眠らせることになった。


「最初からこうしたら良かったな。じゃあ行くか」

「うん」

 ジュリアと2人で屋敷の玄関前にくると玄関がバタンと空いたので警戒を強める。


 だが、出てきたのは年配の執事と若い侍女だった。


「失礼ですが、何用でございましょうか?」

「失礼は承知だが、ギルドの依頼で御用改めに来た……通してくれれば手荒な事はしないが?」

 俺の言葉に困った顔をする2人。


「御用改め、でしょうか?」

「ああ。領主の不正を暴きにしに来たってことだ」

 落ち着きなく視線を泳がせる執事だが、観念したように息をはく。


「まずはご主人様に確認を伺うのは?」

「駄目だな」

「そう、ですが……」

 一応聞いたという風な執事は、返答を聞くと侍女にも目配せをして玄関までの道を開ける様に横に移動した。


「感謝する」

「ありがとー」

 俺とジュリアが声をかけながら屋敷に入ると、ちょうどもう一人侍女がこちらも見ていたが、構わずに脳内マップの人が集まっている一室へ移動した。


 部屋の前に立つと、気合の掛け声とともにドアを蹴り飛ばす。

 豪快にドアは吹き飛び、中には悲鳴が木霊していた。


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