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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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23.冒険者クロ、新種の魔物に危機感を覚える


「<無限収納(インベントリ)>」

 俺は、お気に入りの黒い刀を取り出した。


 存在がぼやけるほどの黒。


 黒死無双(こくしむそう)と名付けたそれは、何度も付与と強化を重ねた俺の武器。

 身体強化を底上げという付与効果と、不壊という域まで硬度を上げたそれは、俺の切り札でもあった。


 もちろん過剰戦力とは思うが、何か嫌な予感がしてしまう。

 普段ならリズにジュリアを任せることも無かっただろうが、こういう感覚になった時には過去にも痛い目にあっているなと感じているのだ。


「ジュリア、一応壁際に寄っておいてくれ」

「ああ、クロも気を付けて」

 ジュリアの心配の声には左手を軽く上げ了承の意を示す。


「ぐあっ!」

 思わず呻いた。


 直後に現れたそれは、舌をだらりと出しながら臭気が漂う見た目をしていた。

 その背後からはパンパンに膨れた体を弾ませながら突進してくる個体や、二足歩行で前足にある大我麻を構えながらつっこんでくる個体もいた。


「<分析(アナライズ)>、くっそっ!」

 そのすべてが黒毛狼(ブラックウルフ)であり、その見た目は明らかにそれとは違っていた。


「キメラ……なんだろうな」

 ベースは黒毛狼(ブラックウルフ)なのだろうが、明らかに別の何かが混ざっているその見た目に、どう考えても人工的に作られたものだと理解した。


 焦りながらも少し本気を出し3体のそれを切り刻む。

 ドロップ品は無いことで、いよいよキメラだと自分の中で断定する。


 まずは一旦戻って報告することを考えた。

 もちろん俺なら余裕を持って対応できるレベルではあるが、俺の直感が先に報告をしておいた方が良いのだと告げている。


「少し早いが一度戻っていいか?」

「クロがそうせざる得ないと思ってるんだろ?なら俺はそれに従う」

 俺達は近くの小部屋に急いだ。


 途中、何回か同様の黒毛狼(ブラックウルフ)もどきと遭遇するが、なんとか無事にマーキングを残し退避札を使って迷宮を出た。

 入り口を囲っている兵の1人に明日また来ることを報告し、冒険者ギルドまで戻る。


 ギルド内部では、カウンター前にいくつかのパーティが騒がしくしていたので、それらをスルーしてアレッサンドラの部屋へ向かう。

 その俺達を何人かの冒険者が見ていたが、気にせずに足を進めた。


「おーい、俺だー」

 軽くノックしてドアを開けると、アレッサンドラが慌てた様子でゴホゴホと咳き込んでいた。


「すまん、食事中だったか?」

「すまんと言うならすぐにドアを開けるのはやめい!」

 また魔法を使おうとしたのか手を上に上げるアレッサンドラであったが、悔しそうな表情の後その手を降ろしていた。


「迷宮だが、結構ヤバい何かがありそうだ ―――」

 そう言って見てきたことを報告する。


「なるほど、確かにキメラと見て良いじゃろうな。これはまた面倒なことになりそうじゃ……」

「また明日も行ってくるが、暫く他の冒険者は入れない方が良いかもな」

 俺の言葉に深いため息をつくアレッサンドラ。


「お前とトラブルになればさらに面倒になるのでな。すでに他の冒険者は出禁にしたのじゃ。そのせいで騒いでいる者達も一部いるがの」

「ああ、カウンター前にいたのは締め出された冒険者だったか」

 カウンター前の騒動を思い出し納得する。


「じゃが、30階層目前で凶悪なキメラが大量発生、おまけにドロップ品も無い。そうした事実を伝えたら少しは騒ぎもおさまるじゃろう?すまんが2人には暫く頼むのじゃ」

「やれるだけのことはやるよ。どうせ王国にも報告するのだろ?」

 ふっと笑うアレッサンドラを一瞥し、部屋を出た。


 カウンター横では相変わらず騒いでいるが、何人かがまた俺達を見て何かを言いたそうにしていたように見えた。


 俺達は逃げるようにギルドを出ると宿へと移動した。

 夕食前の時間の為、一度部屋へと戻るとジュリアが沈んだ顔で俺の前に座る。


「クロ、俺は……足手纏いだろうか?」

「ジュリア……よし!夜はまだまだこれからだ!作成(クリエイト)するぞ!」

 俺は、ジュリアの顔に笑顔が戻ったことを確認すると、無限収納(インベントリ)に収納している素材を確認した。


「うーん、今日ドロップしたレッドスピネルや赤大鬼(レッドオーガ)の爪や心臓、赤斑蜘蛛(レッドスパイダー)の糸はは使えるが……素材があまり残ってないな」


 俺は、ジュリアを連れて宿を出ると冒険者ギルドに向かった。

 カウンター前にはまだ何人か冒険者がいたが、構わず空いているクラウディアのところに話を聞きに行く。


 近場の鍛冶屋や素材屋の場所を聞く為だ。


 クラウディアはこっそりと耳打ちするように受け答えしている。

 先ほどの様に大声ではないが、グチグチと何かを伝えようとしている冒険者は、こちらをジロリと睨むようにしているが、どうやらこちらに絡んでくる気はないようだ。


 クラウディアに礼を言い鍛冶屋と素材屋を廻る。

 それなりに良い物を買う事ができたので気持ちを高ぶらせて宿へと戻る。


 それからは一心不乱に作成(クリエイト)しまくった。

 そして深夜過ぎ、3つの装備が完成した。


 完全に納得できるものではなかったが、急ごしらえの割には中々良い物もできた方だろう。


「おい!早く説明してくれ!」

 待ちきれない様子のジュリアに装備について説明する。


 蜘蛛糸をベースにしつつ真っ黒なインナーには耐熱と耐刃性能が付与されていた。

 シルバーをベースにレッドスピネルが3つ合成された腕輪には、大幅な体力強化と微増の魅力向上が付与された。

 装着するジュリアを想像して正直ムラムラした。

 最後にシルバーをベースに赤みを帯びた籠手には、中程度の直感力向上が付与されている。


 それぞれの説明が終わるとジュリアは固まっていた。

 

「おーい、ジュリア?」

「なんっだよこれ!全部が全部付与ありの装備なんて……王族か?いや、王族でももっと慎ましくしてるぞ?」

 ジュリアは、怒ったような口調だが、頬は緩みきっていて腕輪を右手に嵌めるとにやけていた。


「気に入ってくれたようで何よりだ」

 俺も上機嫌になっているが、まだこれで夜が終わるわけでは無かった。


 俺達が数時間かけてこの三つの新装備の名前を考えた。


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