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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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22/96

22.冒険者クロは未知の迷宮に挑む


 街の中心部から少し北側、冒険者ギルドの裏手に位置する迷宮は、すぐそばに泉が隣接する為、本来はある迷宮周りの外壁が一部水没している。


 各迷宮に外壁がぐるりと覆っているのは、万が一、魔物暴走(スタンピード)が起きても時間を稼ぐためである。


 その迷宮からさらに北側、泉の外周を2キロ程進むと未整備の場所に洞窟のような穴が出来ている。

 周りには重厚な鎧を着た兵が数十人、その周りを固めている。


 そんな迷宮にジュリアと2人で近づくと、兵の1人がこちらにやってきた。


「クロ様ですね」

「ああ、そうだが?」

 目の前の兵は軽く横を向き、他の兵に目配せをすると兵が入り口を開ける様に位置を変えた。


「まだ一組攻略中のパーティーがいます。おそらく1日待って頂ければ戻ってくるでしょう。それ以外はクロ様の貸切となります。何か問題があれば何なりとお申し付けください」

 そう言って頭を下げる兵士に軽く了承の意を伝え、迷宮の中へ入ってゆく。


「普通だな」

 中に入るとうっすらと壁が発光し、青白く見える壁が続いている。


「<索敵(サーチ)><分析(アナライズ)>」

 いつもの様に脳内にマップを開く。


「1階層はまだ狭いな。魔物もそれほどいないようだ」

「サクサク進もうぜ!」

「そうしよう」

 マップを頼りに5階層まで一気に降りる。


 5階層までくると少し広くなったな?という程度だが、魔物は相変わらず赤小鬼(レッドゴブリン)(なぜか全身が赤黒い)と言う見たことのない種のゴブリンが生息していた。


「気持ち悪っ!」

 違和感から気持ち悪さを感じたが、それはジュリアも同じ様で少ないながらも遭遇するそれに毎回小さな悲鳴を上げながら切り捨てていた。


 そこから逃げるように大急ぎで進んでゆくが、10階層までに赤毛狼(レッドウルフ)赤毛猪(レッドボア)と言った新種にも遭遇していた。

 赤毛狼(レッドウルフ)からドロップしたのは真っ赤な毛皮だったが、正直需要があるのかは不明だった。

 赤毛猪(レッドボア)に至っては赤身を通り越して蛍光色のような真っ赤な肉が手に入った。

 分析(アナライズ)ので食用と出ていたが、正直食べようとは思えない色だった。


 11階層に移動すると、小部屋に5人程人が集まっているのが見えたので、恐らく入り口であの兵士が言っていた冒険者パーティなのだろう。

 その場をスルーしてさらに進んでゆく。


 精神的に多少のストレスを感じるが、難易度で言えばそれほど高くは無いのでは?と思えるが、正直どの迷宮も俺には同じようにしか感じないので、いつもの様にサクサク進んでゆく。

 ジュリアも特に問題は無いようだが、念の為適度に休憩を挟みつつ進み続ける。


 夕方頃、20階層でボス部屋と思われる扉を開ける。

 中で出迎えてくれたのは赤岩巨兵(レッドゴーレム)であった。


 こいつは火山地帯にある迷宮には良くいる魔物で、花崗岩の塊がドロップするし、運が良ければルビーやガーネットの原石も落とす。


「ジュリア、運が良ければ宝石落とすぞ」

「えっホント?俺がやっても良い?」

「ああ、大丈夫だと思うが無理そうなら言えよ」

「うん!」

 嬉しそうに5体の赤岩巨兵(レッドゴーレム)に向かってゆくジュリア。


「うわっ!おっと!でりゃー!」

 ゴーレム達が太い腕でドシンドシンとジュリアを狙って攻撃しているが、それを楽しむように躱しながら手に持つ灼熱之牙を振りかぶり、一本、また一本と四肢を切断してゆく。


 すぐに動けなくなってゆく赤岩巨兵(レッドゴーレム)に満足したのか胴を真っ二つにする一撃により戦闘を終わらせた。

 笑顔で戦利品を拾って戻ってきた。


「花崗岩が4つに……レッドスピネルの原石も出るんだな」

 小さな大理石の白い土台には3つの大きなレッドスピネルがくっついている。


 レッドスピネルを混ぜると精神安定、生命力向上、魅力向上などの効果が付与されることが多い。

 早速今晩何か作成(クリエイト)しようかな?


 犬の様に褒めてと頭を差し出すジュリアを甘やかす。

 このままイチャイチャしたいがまずは攻略だ、と先へ進む。


 今日中に行けるところまで行っておきたい。

 そこから、単独の赤岩巨兵(レッドゴーレム)に交じり、新種の赤大鬼(レッドオーガ)赤斑蜘蛛(レッドスパイダー)といった魔物にも遭遇した。

 赤斑蜘蛛(レッドスパイダー)は赤と黒の斑だが、所々に黄色い斑点のような模様があって思わず悲鳴と共に鳥肌が立った。


 できればもう見たくもない魔物だった。

 

 だが、ドロップ品が真っ赤な絹糸の束だったこともあり、ジュリアが積極的に狩っていた。

 良いローブが作れそうな素材だった。


 赤だらけな迷宮に変化が出たのは28階層でのことだ。

 視界にちらりと黒い何かが横切った。


 マップで確認しているので魔物という事は分かっているが、油断していたこともあり四足歩行の魔物という事ぐらいしか認識できなかった。


「早いな」

「ああ。黒い狼だった」

 ジュリアの方がよく見ていたようだ。


 黒毛狼(ブラックウルフ)であれば他の迷宮でも低階層に良くいる魔物だ。

 俺は無警戒に進む中、攻撃を仕掛けてくる黒い影を殴りつけた。


 キャインと泣きながら吹き飛ぶ影は、黒い狼ではあったが、その頭には角が生えていた。


「<分析(アナライズ)>、ちっ!黒毛狼(ブラックウルフ)ってなんだよ!どう考えても新種だろ!」

 角がある狼なんて上位種の一角大狼(ユニコーンウルフ)ぐらいしか見たことが無かった。


 ドロップ品も無く、かなりの上位種のような速度だったように思えたそれに、何かの異変を感じた。


「クロ、なんか早すぎるんだけど。ちょっとこえーな」

「やばそう?」

「うーん、防御に徹したらなんとかなると思うけどよ。急に難易度上がり過ぎじゃないか?」

「リズ、ジュリアを頼む」

 そう言ってジュリアの横に魔力の塊を放る。


『うまかせ』

 それを齧りながらジュリアの肩に乗るリズが現れる。


「あれ一体かぎりの希少種だったら良かったんだけど、どうやら違うようだな」

 脳内マップにはおそらく同等の速度でこちらに向かってきているレッドマークが確認できた。


 まあ、何とかなるだろ。

 そう思いながら俺はお気に入りを無限収納(インベントリ)出すのだった。


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