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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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21/96

21.冒険者クロ、迷宮探索を依頼される


「―――― という訳じゃ」


 アレッサンドラから最近の異変について説明を受ける。


 王都を中心に迷宮の魔物が凶暴化していたり、森などの外の魔物も、縄張りを無視して街へと移動することが増えたようだ。

 王都を中心にしている為、海岸沿いをぐるりと回っていた俺には知りえぬ情報であった。


 元々、地脈からの魔力が多い場所を中心に王都は誕生した。

 魔力が多い土地ほど大きな迷宮ができるからだ。


 その地脈からの魔力が近年乱れた動きをしている為、その様な現象が起きているので、近々魔物暴走(スタンピード)という迷宮から魔物が溢れ出る災害が起きるのでは?と王国も危惧しているのだとか……


 そしてこの街では、既存の迷宮の少し離れた場所に、1ヵ月ほど前に新たな迷宮が生まれたらしい。


 新たな迷宮の誕生はそれほど珍しくはない。

 出来立ての迷宮は2~3階層の小さなものであり、長い年月をかけて階層を増やす為、その周りには自然と街が形成されるようになる。


 反面、近くにある迷宮が崩壊してしまうという事もあった。

 そうやってこの世界は発展と衰退を繰り返している。


 だが今回は、新しくできた迷宮にもかかわらず最下層がかなりの深さの様で、王都からも上級冒険者達が招致され攻略を進めているそうだ。

 今までにない状況に、魔物暴走(スタンピード)を起こすならその新しい迷宮かもしれない。と言うのが王国の見解のようだ。


「クロにはぜひ迷宮を調査してほしいのじゃ。報告には見たことのない魔物もいるらしく、丁度ある程度のレベルで分析(アナライズ)の使える冒険者を探していたところじゃ。王都でも依頼が大々的に出ておる……我が勘違いしたのも当然じゃろ?」


 俺は、合意を求める視線のアレッサンドラに適当に頷いておいた。

 迷宮については正直面倒だなと思っている。

 きっと上級冒険者とはトラブルになるのだから……


「なんか面白そうだな!」

「よし行こう!やっぱり新しい迷宮を進むのは冒険者の醍醐味だよな!」

 ジュリアに笑顔で答える俺を見て、アレッサンドラは目を細めため息をついていた。




 ギルドを後にした俺達は、ブルーノと合流し宿へと戻る。

 ブルーノから買い出ししてもらった食料を受けとり無限収納(インベントリ)に放り込む。


 渡した金貨は全て使ったようで、追加で金貨を1枚手渡して自分の為に使うようにと念を押した。

 部屋に入ってまったりしようとしたのだが、ジュリアにアレッサンドラの事を聞かれ、事情を説明する羽目になった。


「アレッサは王都の冒険者ギルド中央本部の会長をやっていたエルフの一族の長老で唯一のハイエルフ、数千年の時を生きたババァだ」

「なんか良く分からないけどすげー奴なんだな。で、クロは何でそいつと仲良さそうにしてたんだ?」

 真顔で聞いてくるジュリアは、若干の怒気が含まれているように感じた。


「この世界に来てすぐの事だぞ?」

 そう前置きをしつつ話し始める。


 この世界に来た直後にリズに騙され精霊憑きになった俺は、無限の魔力で上級魔法を連発する力押しで迷宮を攻略しまくった。

 異世界チートとも言える力を得た地球人の、典型的な転移者ムーブを満喫していた。


 そして、多方面な者達に持て囃されながら楽しい日々を送りつつ、レア素材をばら撒き一定の地位を得た俺は、当時から冒険者ギルドのトップであったアレッサンドラにも偉そうな態度を取っていた。

 その度に昼間の様に魔法で攻撃されたが、馬鹿にしたように躱したり防いだりしていた。


 もちろん俺は怪我一つ負わなかったが、周りにいた者達は無傷という訳にはいかず、流れ弾で負傷というのも日常茶飯事だった。

 その為、王族と貴族、エルフの組織する森人連合(エルフレンゴウ)で責任の擦り付け合いであったり、それを利用した権力の奪い合いに発展してしまった。


 最終的には俺への責任追及が一番ダメージが少ないだろうと判断した貴族側と森人連合(エルフレンゴウ)により、俺へのネガキャンが行われ市民からも白い目を向けられるようになった。


 結果、ブチ切れた俺が大規模な範囲魔法で貴族街を半壊にして逃げ出した。


 その後、俺が黒霧として活動するのは10年程後であるが、王城に忍び込んで話をつけて今に至る……が、きっと今でもアレッサンドラは俺の事を苦々しく思っているだろうと説明した。


 話を黙って聞いていたジュリアは、気付けば俺の頭を撫でていた。


「いやジュリア?俺はいまだに引きずってたりしないからな?」

「そうだな。だが、次に何かあったら俺がちゃんと守ってやるからな?」

 そんなジュリアを愛おしく思うものの、男としてはどうだ?と首を傾げた。


 その後、明日から迷宮を攻略する俺達は、早めに寝ようとベッドに潜り込むが、結局眠れない夜を過ごすことになった。



◆◇◆◇◆



「陛下、フヴェルゲルミルのギルドマスターであるガスパリス殿から、黒霧殿が迷宮探索を請け負ってくれたと伝言がございました」

「は?」


 当代の国王陛下、ベレンガーリオ・ビフレストは宰相からの報告に驚き、手に持つグラスを落としそうになる。


「久しぶりに聞く名だが、あの黒霧で良いのだな?」

「はい。ガスパリス殿は元々面識もある方です。間違いなく本物の黒霧殿でしょう」

 国王陛下は顎髭に手をあてため息をついた。


 20代で王位を継承する際、先代の王から黒霧にだけは気を付けよと言われていたが、それから約20年……自分の代では今まで一度たりとも黒霧の存在が報告されたことは無かった。


 黒霧はもう死んだのでは?

 そう思っていたぐらいだったが、そろそろ息子に王位を譲ろうか?というタイミングでその名を聞き、心臓が激しく脈打った。


「では、黒霧の気まぐれで調査に協力してくれるから、トラブルにならないように他の冒険者を立ち入り禁止にということだな?」

「その様です」

「では早急に手配をせよ!絶対にトラブルに発展させないよう、ガスパリスにも他の冒険者をしっかり押さえつけるよう伝えよ」

「仰せのままに」


 宰相が出ていった王城の一室では、陛下の長いため息が続いていた。


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