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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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18.常闇のナディアはクロに怒られる


 目の前に正座するナディア。


「この近くでお前達の仲間に襲われた」

 その言葉でナディアがヒッ!と悲鳴を漏らした。


「クロ様、その……クロ様は海岸線を北上するのかと思っておりまして……」

「お前さ、俺はこの世界に愛着はそれほどないからどこで誰が死のうがかまわないけど、盗賊稼業なんていい加減やめなよ?」

「せ、僭越ながら、必要悪と言うものでもありまして……我々常闇森神(トコヤミエルフ)は、孤児達の受け皿でもあります」

 ナディアは両手をワチャワチャと落ち着きなく動かしながら説明を返した。


「でもさ、それで人を殺していたらまた孤児が増えるだろ?」

「えっ?」

「だから、お前達が商人なんかを殺せばその家族は路頭に迷い、子供達は孤児になったりするだろ?」

「ええっ!」

 どうやら理解できていない様子のナディアに、ダークエルフはアホなのか?と思ってしまう。


「待ってくださいクロ様!私達は殺しなんか……」

 そう言いかけたナディアは周りを見渡すと、落ち着きのない表情を見せる仲間達に何かを察してしまう。


「お前達……」

 ジッと見ると男達は壁際に後ずさってゆく。


「こいつらは我欲の為に殺しをやってる奴だ」

 そう言いながらレッドマークを順に指差してゆく。


 悲鳴を上げながら指差された男達は足をガクガクさせながら外に逃げようとしていた。


「φωτιά της κόλασης 」

 ナディアは目を吊り上げながら指をパチリと鳴らし、聞き取れない言葉を口遊む。


 途端に男たちがボッと燃え上がり消し炭となって倒れ込んだ。


「換気換気っと」

 ジュリアがドアをガバリと開ける。


 ナディアがもう一度指を鳴らすとドアに向かって突風が吹き、男達の亡骸はホロホロと崩れるようにして外へと消えていった。


 その後、泣きながら言い訳するナディア。


 そもそも常闇森神(トコヤミエルフ)は孤児達を保護する目的で運営しており、ターゲットは大商人や貴族でそれらの荷物を少し分けてもらうように、(物理で)交渉し各地の孤児院に分配したりもしているようだ。

 それ以外は用心棒として旅に追随したり、諜報活動により悪い者達がいたら街の警らや領主などで進言することを行っている……ハズだった様だ。


 人攫いや貧しい者からの搾取、ましてや殺しなんてご法度で厳しく言い聞かせていたはずだったと泣きながら話すナディア。

 エーリュの東の洞窟に者達も仲間だったと言うので、それらは全員レッドマークだったことも伝えると頭を床に擦りつけて謝っていた。


「でもでも、私、組員達には厳しく言ったもん!」

 そして、顔を上げ開き直って頬を膨らませるナディア。


 俺は、泣きながら頬を膨らませるナディアが少し可哀そうになってきたが、それと並行して仲間たちは組員と言うんだな。などと別のことも考えていた。


「ナディアは分析(アナライズ)なんかは使えないのか?」

「もちろん使えるますよ?」

「それで我欲の為に人を殺したかどうか区別したら良いだろ?」

「クロ様、何をおっしゃっているか分かりません……」

 どうやら普通の分析(アナライズ)はそう言った使い方はできないようだった。


 俺は仕方ないなとナディアの背後に移動し、その肩に右手を置いた。


「<共感(エンパシー)>、<分析(アナライズ)>」

 俺は、ナディアを通して分析(アナライズ)を使う感覚で、赤青の分別を行った。


「あぁん!クロ様の何かが私の中を駆け巡って……あだっ!」

 体をクネクネさせるナディアに拳骨を落とす。


「真面目にやれ!」

「だ、大丈夫です。大体わかりました。<ανάλυση>……残りは全員セーフの様ですね」

 俺はナディアから手を離し、こめかみに力が入っているジュリアの元へ戻る。


「これから、クロ様より授かった力で組員の再構成を行います!絶対に良いものにしてみせます!」

「ああ、まあ俺に、俺達に迷惑がかからなければどうでも良いんだけどな」

「その辺りも強化します。10年程で再構成も終わるでしょう。お任せください」

「10年か。大変とは思うが頑張ってくれ」

 たった10年でやり遂げると宣言するナディアを見て、大変だろうなとは思ったが、正直俺にとってはどうでも良い話しだった。


「10年って……結構かかるんだな。気の長い話だ」

「1年だ!すぐにやれ!」

「はい!えっ?なんで?」

 ジュリアが長いと言うのなら、それは長いということだ。


 即座に期間を短縮するよう求めると、ナディアは大いに混乱していた。


「できないのか?」

「やります!やらせて戴きます!」

 そう言いながらも、ナディアは歯をギリギリと食いしばりながらジュリアを睨んでいる。


「まあ、頑張ってくれ」

「はい!じゃあ、全部終わったら私を貰ってくれませんぁああががががぁ!」

 ひょいと立ち上がり俺の胸に飛び込もうとするナディアを、ジュリアは顔をガシリと掴み持ち上げていた。


「ジュリア、やめてやれ。お前も一々くっついて来ようとするな!」

 俺に言われてジュリアは渋々手を離す。


 ドベッという声を上げ尻餅をついたナディアはまた泣きそうな顔をしていた。


「クロ様、そっちの人族はあなたの恋人なのですか?」

「そうだ」

 ジュリアをじっと見るナディア。


「あと30年もしたらその女なんてヨボヨボになっちゃうのでわ?」

「そんなことないわ!」

「お肌の張りだって年々無くなるでしょうし……」

「俺は精霊様の加護があるんだぞ!もっと長くクロを愛することができるんだ!」

「精霊?……それでも100年程度でしょ?私なら永遠にクロ様に……いや殺気止めて!」

 言い合いをしている最中、遂にはジュリアが本気で怒りをぶつけている様だ。


 室内には剣呑な空気が漂っていた。


 空気を変えたい俺は頭を悩ませることになった。


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