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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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17.冒険者クロ、盗賊を捕縛する日常


 盗賊達の山から呻き声が聞こえる中、リーダーと思われる男は話を続ける。


「い、いいのか?俺が戻ならきゃ、アジトにいる何万の手下どもがお前を追い詰めるぞ?」

 さすがに万は居ないと思うけど、まだ手下は居そうだな?


「アジトまで案内してくれる奴、手を挙げろ」

 リーダーっぽい男以外は全員手をバタバタと動かしている。


 動けないのかは分からないが、うーうー唸っている奴もいる。


「<分析(アナライズ)>」

 俺はいつもの様に自らの欲望で人を殺したかを境界線にしてマーキングし直し、青い者を1人山から引き抜いた。


「お前は俺をアジトまで案内するんだな?ちゃんとできるか?」

「はい!誠心誠意やらせて戴きます!」

 男は背筋を伸ばしビシッと立つと、まるでどこかの騎士の様に答えてくれた。


「じゃあ受け答えはサーイエッサーだ。分かったな?」

「サ、サーイエッサー!」

 少し楽しくなって言ったことだが、悪戯が成功したように楽しくなってきた。


 俺は一度、千の鎖(サウザントチェーン)を切ると再び「ターゲットレッド、<千の鎖(サウザントチェーン)>」と唱え直す。

 鎖を少し引くとレッドマークの男達が引きずられ、鎖から逃れた者達がのそのそと起き上がってきたので、その者達にここに固まってろ!と指をさしておく。


 何人かは逃げるかな?と思っていたが、誰一人逃げ出すことは無かったので俺としても余計な手間は生じなかったなと安堵した。

 そう言えば周りは静かだな?と周りと見回すと、ジュリアは座ったままニコニコこちらを見ているが、他の者達は震える様に身を縮こませていたのが見えた。


 そんな俺の視線に気付き、小さく悲鳴を押し殺して目をつぶっている者もいる。

 その事にちょっと悲しくなる。


「<業火(ヘルファイア)>」

 決してその悲しみを紛らわすためではないが、山に残ったレッドマーク達はこの世の為に焼いておく。


 街へ連行したとしてもこんな奴等はすぐに処刑されるだけだ。


 消し炭になったその山は、周りの者達が放つ悲鳴に見送られ、ゆっくりと上昇気流にのって消えてゆく。

 再び周りを見渡すと、ほとんどの者達がガクガクと震えながらその場を動けないようだった。


「さて、そっちの方にお前達が乗ってきた馬車があるようだが、アジトも馬車は残ってるのか?」

「サーイエッサー!アジトにはまだ何台かございます!馬も今現在6頭飼育しております!」

 案内を頼んだ男は直立不動で元気よく答えてくれた。


「アジトまでどのぐらいかかるんだ?」

「サァーイエッーサッ!徒歩5分であります!」

 意外と近かった。


「じゃあ君以外、あの人達をあの馬車で街まで連れてってくれるかな?乗れない者は歩きで……全員逃げないで出頭しろよ?」

 生かされた者達を指差し、同乗者達を街まで運ぶ任務を依頼した。


 少し睨みつけると皆のサーイエッサーの声が返ってくる。


「じゃあ皆さん、眠いとは思いますが街へ行くのが一番と思いますので……」

 そう言って話しかければ戸惑いながらも機敏な動きで荷馬車に飛び乗る同乗者達。


 すぐに10名の同乗者だった者達が乗り込み、何人かは乗れずにいたが、走って向かう気は満々の様だった。




「じゃあ、くれぐれも変な気は起こさないように……どこに逃げてもわかるからな?俺も終わったら街に行くし」

 皆がサーイセッサー!と返してくれた。


 俺とジュリア、そして盗賊の男を1人残して街を目指して出発したのを見送ると、男の案内でアジトへと移動を開始した。


「あのサーイセッサーっていいな!なんかカッコイイ!」

「あれはどっかの国の兵士の掛け声だ」

「そっか!俺も使ってみるかな?サァーイエッサーッ!」

「やめとけやめとけ」

 


 そんな話をしつつ北に数分、簡易的だが大きな小屋が立っているのが見えた。

 馬屋もあるようなので嘘は言っていなかった様だ。


 分析(アナライズ)でいつものマークを確認すると、赤青半々ぐらいで10名程がいるようだ。

 青マークの前に他の9人が前後2列に別れ並んでる様に見える。


 俺は、小屋のドアをノックする。


「おーい。入るぞー!」

 そう言いながら引き戸を開けると、中には懐かしい顔があった。


「帰ってきたか!成果はどう……えっ?ク、クロ様!なんで!」

 中には見知った顔、ダークエルフのナディアが驚いた顔でこちらにやってくる。


「も~、クロ様ったら突然くるんだからぁ~、今日はどうしたんですかぁ~?」

 ナディアは俺の腕にしがみつき甘ったるいトーンで話しかけてくる。


 が……そのナディアは、顔をひきつらせたジュリアに首を後ろからグッと掴まれ、投げ捨てられるように引きはがされた。


「クロ、この子は誰かしら?」

「まて、俺は無実だ。俺はこんな幼児体形には興味は無いし、あいつはダークエルフでもはやババァなんだ!」

「えっ?ババァ?えっ?」

「下手したら俺より長く生きてる。もちろん一度たりとも手を出したことなどない!」

「ホント?」

 俺は目を細くしているジュリアにうんうんと頷いていた。


「ちょっと!あんた何するのよ!燃やすわよ!」

「うるさい!」

 起き上がってきたナディアがジュリアに向かって飛び掛かってくるが、俺は顔をガシリと掴んで高く掲げた。


「痛い!クロ様!酷い!私は被害者!」

「いいから大人しくしとけ!後、お前がいるってことはここは常夏、じゃなかった、常闇だかのアジトでいいんだな!」

 俺の指摘にビクっとなった後、ナディアはダラーンと体の力を抜いた。


 大人しくなったナディアを降ろす。


「お頭!大丈夫ですかい!」

 お仲間と思われる男達がナディアを庇うようにして前に立ち俺達を睨む。


「やめやめ!クロ様に逆らったら私死んじゃう!大人しくしててよ!」

 ナディアは慌てながら男達を奥へと押しやり、そして綺麗に正座してこちらをにっこり笑顔で見ていた。


「本日は、その様なご用件です?」

 首を傾げるナディアを見て、俺は大きなため息をついた。


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