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[完結]世界で唯一の精霊憑きの青年は、自由気ままに放浪する  作者: 安ころもっち
第一章

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15.クロとジュリア、初めての旅


 翌日から、変わらず迷宮に入って2人で楽しいひと時を過ごす。


 だが、ギルドへ戻れば多数の冒険者達から囲まれてしまう事もあり、面倒だなと感じてしまう。

 最初にホワイトだと認定された俺の強さが後からバレた。

 そう言うところが目を引いたのだろう。


 今までならばひっそりと活動してたし、バレても次の街へと移動したら良いだけだったが……正直うっとおしくてどっかへ逃げ出したい。


「なあ、他の街に移動するか?」

 ある日の夜、部屋でジュリアが俺に聞く。


 ジュリアの方から言ってくるのは驚いた。


「ジュリアは、この街に愛着とか無いのか?」

「無いな」

 あっさりと言われ拍子抜けする。


「それなら、いいのか?」

「おう!俺もクロと冒険の旅がしたい!そういうのをずっとしてたんだろ?」

「ああ、そうだな!」

 嬉しそうに笑うジュリアが愛おしい。


「そうと決まれば……」

 俺は過去の記憶を捻り出し、次なる場所を決めた。


「ジュリア、フヴェルゲルミルって街知ってるか?」

「ああ。泉の街だっけ?」

「そうそう。こっから王都に向かって行くとある街だが、最近そこの迷宮に変革が有ったって聞いたんだよな」

「変革って、俺も知ってるけど王国で改革があったのは知らないぞ?」

 ジュリアが首を傾げている。


 変革と言うのは迷宮の中の地形が変わってしまう事で、それにより迷宮が深くなったり浅くなったり、魔物も強くなったり弱くなったり……とにかく迷宮内の様子が様変わりするのが変革だ。


「確か、10年程前にそんな話を聞いたんだよなー俺」

「あー、それだと俺が子供の頃、まだ冒険者になる前の話になるな」

 俺はジュリアの返答に苦笑いする。


「そうだよな。10年と言ったらそうなるよな。うーん、時間の感覚がマヒしてるのは十分実感できた。これもまた新鮮でいいな!」

 俺は可笑しな所で久しぶりに2人でいるという幸せが実感できた。


「じゃあ、明日は買い出しして向かおう!」

「分かった!いっぱい食料買ってかなきゃな!俺、旅とか初めてだからワクワクしてきた!」

 少し興奮気味のジュリアを見てホッとする。


 住み慣れた街を離れるのは悲しいかも?と思っていたから。


「あっ、そうそう、<無限収納(インベントリ)>」

 俺は掌サイズの小さなケースを取り出した。


 そのケースは黒をベースにしており、赤いラインが入っている。

 ベルトに装着できるように金具も付けてある。


「これは?」

「ジュリアの為の収納バッグだ。荷馬車1台分くらいは入るかな?」

「収納バッグ……こんなに小さいのに?荷馬車1台分?」

「ああ」

「いつの間に?」

「ジュリアがシャワー浴びてる時とかに?」

 俺は、目に涙を溜めたジュリアに押し倒され、激しい一夜を過ごした。



 翌朝、多少の寝坊はしたものの昼食前には宿を出る。

 宿でもそれなりの量の料理を作ってもらい収納したが、道すがら他に必要な日用品や食料などを買いながら、王都行きの乗り合い馬車のある場所に向かった。


 服装は2人とも目立たないように暗めのローブを羽織っている。

 馬の傍に待機している御者と思われる男に行先を伝え、言われるがままに銀貨を3枚づつ払うと、10人ちょっとが乗れそうな粗末な荷馬車に乗り込んだ。


 柔らかいクッションを2つ置くと、ジュリアを奥側へと誘導して出発するまで時間を潰した。


 荷馬車に半数ほどのお客さんが乗り込むと、時間になったようで御者が一声かけゆっくりと走り出した。

 ガタゴトと揺れるがジュリアと肌を寄せ合い風を感じるのは、1人の時には感じられない幸せな気持ちが湧き出てきた。

 一応同乗者を警戒していたが、特に怪しそうな輩はいないようだ。


 フヴェルゲルミルまでは徒歩移動も考えたが、今回は旅慣れしていないジュリアもいるので乗合馬車での移動となった。

 ジュリアの方も、次は徒歩での移動も体験したい!と言っていたので、野宿の際の彼是をレクチャーするもの今から楽しみだ。


「今日はここで野宿となりまーす」

 御者の言葉と共に道のすぐ脇にある広間に馬車を止める。


 御者が降りるとその広場の中央に設置してある魔道具に魔石を入れていた。

 魔物避けの結界を発生させるものだろう。


「明日は日の出の1時間後ぐらいに出発しますので……おやすみなさいませ!」

 そう言って魔道具のテントをホイと投げ広げると、黙って中に入って行った。


 乗合馬車は久しぶりに使ったが、かなり雑だな……そう思った。


「そう言えば、夜はどうするんだ?」

 ジュリアが周りを見ながらそう尋ねてくる。


 周りではテントを組む者、同じように魔道具のテントを使う者、適当に寝ころび携帯食に噛り付く者が見えた。


「野宿のことは考えてなかったな。見張りはリズがいるし、そこら辺にごろ寝で良いと思ってた」

「そうか、そうだな。それも旅って感じがしていいな!」

 戸惑いの後、笑顔を見せるジュリア。


「リズ様が見守って下さるなら、あっちに行こうぜ!」

 そう言って俺の手を引き、少し離れた木々の近くに腰を下ろした。


 ここなら野外に出ている他の者達には見えないだろう。

 胡坐をかき無限収納(インベントリ)から適当にハンバーグ定食の様な料理を取り出した。

 ベリー系の果実酒の瓶も取り出し木のコップに注いだ。


 ジュリアは彼是と悩んだ後、焼肉が山に積まれた皿を収納バッグから取り出した。

 いつの間にあんな料理頼んだのか?


 いや、乗合に向かう道中でしかタイミングは無かったのでその時なのは明白だが……ジュリアのそれが旨そうに見えてくる。


「なあジュリア、それいくつ買ってきてる?」

「ん、ああ、10皿あるぞ?」

「え、それって肉だけに見えるけど、それが10皿?」

「ああ!旨そうだろ!」

 嬉しそうにそう言った後、ジュリアは豪快に肉を掻き込んでいる。


 俺も負けじと目の前の料理を流し込み、次には肉マシマシの生姜焼き定食を取り出した。




 食事が終わり眠気が出てきた頃、俺は無限収納(インベントリ)から分厚いマットレスを2つ取り出した。

 この世界に来てすぐ、キャンプに嵌まった俺は色々なマットレスを作らせては収納の肥やしとなっていた物だ。


「おお!いいな!」

「だろ?」

 ふかふかの枕とふわふわの毛布も取り出すと、それだけで充分に寝れてしまう。


「そろそろ寝るか?」

「そうだな……なあ、次の街に着くまで3日ぐらいだろ?」

「そうだな。明後日には着く予定だが、どうかしたか?」

 俺の返事に少し顔を赤らめるジュリア。


「明日の晩も、お預けなんだな」

 そう言ってジュリアは布団をかぶって寝転がってしまう。


「な、何とかする!<無限収納(インベントリ)><作成(クリエイト)>」

 俺は手持ちの素材を駆使して、何かを作成(クリエイト)しなくてはいけない!と汗を流した。


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