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後編

 その翌日、よく見ると目が充血していたが、よく見なければわからない程度だったので、学院へ向かうと、公爵令嬢様とそのお友達が私を来るのを待ち受けていた。


 公爵令嬢様達に池の方へと連れられていき、池に突き落とされ、池から這い上がろうとすると、棒で突かれ池の深みへと押されていった。


 そこにブライトがやってきて、それはそれは楽しそうに公爵令嬢様方に「王子様に見つかると、大変な処分を受けることになるね」と本当に楽しそうに言葉を発していた。


「己が手を汚すとは、よほど腹を立てられたのでしょうねぇ〜〜」と、公爵令嬢様達を馬鹿にしていた。

 そこにセイントがやってきて、セイント本人が池の中に入ってきて、私を助けてくれた。

「ブライト!!お前は助けもせず、何をしているんだ!!」

 そうブライトを非難したが「私は私が出来る助力をしていましたよ」とおかしそうに笑いながら言い訳していた。


 セイントの手で池から助けられると、保健室へ連れて行かれ、ダンス用のドレスへと着替えた。

 セイントは着替え用の制服があるらしく、新しい制服に着替えていた。


「すまない。私の考えが足りなかった。アイリアを守ることを一番に考えなければならななかったのに!!」

 酷く後悔しているという顔をして私に謝られた。

「セイントに謝っていただくようなことではありません。どうぞ謝らないでください」


 謝るなら私を強姦したことを謝れよ。と思っていたけど、それは黙っていた。

 私はダンス用のドレスで授業を受け、帰り際になると、セイントのメイドが私の制服を持ってきてくれて、私は制服へと着替えさせられた。


 セイントのメイドが「殿下がお呼びです」と言って王家の馬車に乗り込み「今日のお詫びに」と言って、日常使いのアクセサリー一式を買ってくれた。

 日常使いと言っても、私には目が飛び出るような金額で「受け取れません」と辞退したら、微笑ましいものを見るような笑顔になって、セイント自ら私にアクセサリーを着けてくれた。


「毎日つけていてくれたら嬉しい」と頬を染めてセイントが言い、私は「とても嬉しいです。ありがとうございます」とお礼を述べるしかなかった。



 その翌日からは男爵家に王家の馬車が迎えに来ることになった。

 王家の馬車で学校に登校するの?!

 セイントが扉を開けるまで決して馬車から降りてはならないと御者に言われ、馬車の御者役は護衛騎士だった。


 婚約者の公爵令嬢の怒りは日に日に大きくなり、セイントと私が階段上に居る所にやってきて「あらごめんなさい」と言って私にぶつかった。

 最上段から私は落ちて、私はそのまま意識を失った。

 それからどんなことがあったのか解らないけど、私は王城の客室で生活することとなった。


 婚約者の公爵令嬢は王妃に呼び出され「今回のことは目撃者も多く、今までの嫌がらせも酷かったため、婚約者から降りてもらいます」と伝えられたのだと後から聞いた。


 セイントの婚約者は、侯爵家の娘に決まり、セイントはアイリアが良いと言ったらしいが、身分的にそれは無理だと王妃に却下されたそうだ。

 本当に良かった。



 そして私の地獄はまだまだ続いた。

 新しい婚約者のフィービー侯爵令嬢とのお茶会や、逢瀬に全てセイントに同席させられた。

「アイリアが一番で、その次がフィービーだと心せよ」がセイントの口癖になっていて、フィービー様の目の前で、私に口づけたり、体を弄ったりする所を見せつけるようにしていた。


 私は「どうか、私抜きでフィービー様との交流を持たれてください」とお願いしたが、セイントは聞く耳を持たず、私を片時も離そうとはしなかった。


 いつの間にかセイントに体を(もてあそ)ばれても何も思わなくなり、フィービー様の前で、体を(いじ)られてもなんとも思わなくなった頃、体調が悪い日が続いた。

 食べ物の匂いや、コロンの匂いなどに敏感になり、食べたものもすぐに戻してしまうようになった。


 セイントのメイド達は私が妊娠したのだと理解して、陛下や王妃に報告を上げていたが、私には誰も何も教えてくれなくて、体調の悪さに不安で仕方なかった。

 半月もその気持ち悪さが続いて、王室の医師に診察されて「おめでとうございます。妊娠して居られます」と言われたのは学院の三年生の二学期が終わる頃だった。


「妊娠って・・・子供が出来たっていうことですか?」

「そうです」

「そんな!!私の身分ではっ!!」

 セイントが私の手を握りそれは嬉しそうに私を抱きしめた。

「私の子を産んでくれるのを楽しみにしているよ」

 


「男爵家へ一度帰ることは出来ませんか?」

「ごめんね。安全のためにそれは認められない。男爵に登城するように伝えておくから、それまで待ってくれ」

 

 男爵様が来てくださるのを首を長くして待っていた。


「男爵様!!私・・・」

「口を閉じなさい」

「・・・はい」

「話は聞いている。陛下や王妃とも話してきた」

 男爵は入れられたお茶を二口飲んで、息を深く吐き出した。


「出来てしまったものは仕方ない。王子殿下の子を大切に育てるしかない」

「ですが私はっ!!」

「解っている。だが、どうしようもない」

「そんなっ!!」


「王子殿下に愛されていると喜びなさい」

「生まれてくる子はどんな扱いになるのですか?」

「それは、解らない。王子殿下の寵愛がいつまでアイリアにあるかも解らないし、婚約者のフィービー様がどう思われて、どうされるのかも解らない。流されるまま生きていくしかない」


「あまりにも酷すぎますっ!!」

「そうだな。アイリアの人生は本当に不運だと思う。生まれてくる子も幸せになれるのかそれすらも解らない。だが、強く生きなさい。私にはそれしか言えない」

「・・・はい」


「アイリアのおかげで我が家は子爵家になることになった」

「そうですか・・・」

「私では後ろ盾としては頼りないが、ガステン侯爵も後ろ盾になってくれるそうだ。それだけでも心強いだろう」

「ですが、ブライト様は・・・」

 面白がっているだけ・・・。

「そうだな。全て理解している。踏ん張って生きるしかなかろう?」

「・・・はい」


 

 男爵様・・・いえ子爵様は帰っていかれた。

 私は学院に行くことも止められ、体調に合わせて、家庭教師が付けられ試験で合格点を取れば卒業認定資格があたえられると言われた。


 この子のためにも少しでも成績を上げたくて、私は必死に勉強した。私の成績は三学期にはBクラスにまで上がり、卒業時にはAクラスにまで上がった。

 

 大きなお腹でマナーなどを必死でこなし、どこに出ても恥ずかしくないでしょうと家庭教師に言われるまでになった。


 セイントは大きなお腹の私でも側に置きたがった。

 成績が上がったことを純粋に喜んでくれて、王妃様にも褒められた。

 皆が卒業だと浮かれている頃、私は卒業試験を受けて、合格をもらって、安心したと同時に陣痛が始まった。


 セイントが私の手をずっと握っていたため、苦痛でのたうっていても笑顔で「平気です」と答えながら、男の子を出産した。

 せめて女の子ならとセイント以外の者達は思ったことだろう。私も強く女の子であって欲しいと思っていた。


 私の出産が終わると、フィービーが王妃教育の最終詰め込みで、王城へと入ることになったが、フィービーにあたえられたのは、セイントの居室から一番遠く離れた離宮だった。


 セイントとフィービーの距離は縮まらず、結婚式の予定も組めないような状態だった。


 フィービーとの結婚が伸びている間に私が二人目を妊娠した。

 王子の寵愛は私にあると、全ての貴族が知り私を蝶よ花よと持ち上げた。


 セイントは「二人目が生まれてからならフィービーとの結婚をしてもいいよ」と言ったため、私の子供の予定日から、四ヶ月後に結婚式が執り行われることになった。


 私はセイントが王太子にならないのではないかと密かに願っていたが、フィービーとの結婚式で王太子になることを発表すると聞かされた。


 何の瑕疵もない第二王子を王太子にすればいいのにとどれだけ思っても、王族の考えることに私が意見することなど出来はしなかった。


 二人目は女の子が生まれ、セイントは女の子の可愛らしさに夢中になっていた。

 一人目の子がセイリアンと名付けられ、二人目の子はアイセインとセイントが名付けた。


 セイントの結婚式が盛大に執り行われ、私はその一歩後ろで控えるようにセイントに付いて歩いた。

 お披露目の馬車にも一緒に乗せられ、セイントが真ん中に座り、私の肩を抱いて手を振り続けた。


 フィービー様の離宮は移されることなくそのままで、セイントの寝室の隣は私の部屋だった。


 結婚式が終わり、フィービー様との初夜の夜、私は疲れて早々に眠っていたのを起こされた。

「すぐに付いてきてください」と言われて私はその後に続くと、そこはフィービー様の寝室で裸のフィービー様の横に寝転がったセイントがいた。

「こんな所に済まない」と言われ「どうされましたか?」と戸惑って聞くとメイドに夜着を脱がされ、セイントの下に連れて行かれた。


 何が起こるのか全く理解できなくて「どうされたのですか?」と聞くと「フィービーとでは体が反応しなかったのだ」と言ってフィービー様の前で私を愛撫し始めた。


 フィービー様は何の感情もない顔をして天蓋を眺めていて、その横で私はセイントを受け入れ、達する少し前になって、フィービー様の秘部になにか薬液を塗りつけてフィービー様が痛みで呻く中で数度の動きでセイントは達した。


 こんな酷いことがあっていいの?

 私は思っていたが、フィービー様はセイントが出したものをこぼさないようメイド達に足を上に挙げられた姿勢を強要されていた。


 私はセイントに連れられて、一緒にお風呂に入れられて、セイントのベッドで体を(いじ)られながら眠りについた。


 酷いことに、フィービー様はその一回で妊娠した。

 そして同時期に私も妊娠した。

 フィービー様がお産みになられたのは女の子でキャスカと名付けられ、全員が男の子だったならと思ったことだろう。

 私は数日遅れて男の子を産み、セインシュアと名付けられた。


 陛下と王妃に私の子は何があっても王太子にはできないと言われたので、私は安心した。

 陛下と王妃に「ありがとうございます」と心からの感謝を告げた。



 セイリアンとアイセインとセインシュアとはしょっちゅう一緒に居るセイントだが、聞いた話ではキャスカ様を一度も抱いたことがないらしい。

「キャスカ様もセイントの子供ではありませんか!どうか愛してあげてください。生まれたことに罪はないのですよ」とセイントに告げると「アイリアは優しいな」と言って私を抱く。


「フィービー様に王子を産んでいただかなければなりません!!」と皆に言われて、私もフィービー様のベッドに連れて行かれ、前回同様の事が起きて、それを三度繰り返して、フィービー様は妊娠した。

 それよりも早く妊娠していた私は女の子を産み、フィービー様は待望の男の子を産んだ。


 それは、セイントには似ても似つかない男の子で、フィービー様は厳しい取り調べを受け、護衛の子供であることがわかった。

 フィービー様は果の塔にその赤ん坊と二人、閉じ込められ、そのうち毒杯を頂くことに決まってしまった。

 護衛の男は王位簒奪の疑いで、フィービー様の目の前で斬首された。


 セイントは「結婚したくない!!」と言ったが、それは許されることはなく、元々婚約していた公爵令嬢様と再び婚約することになり、ひっそりと結婚式を挙げ、フィービー様のときと同様に三人でベッドに入り、達しそうになってからミスティーア様の中に吐き出された。

 悲しいことに、ミスティーア様は処女なのに、愛撫されることもなくただ痛みと屈辱を感じる初夜が終わった。


 セイント様はミスティーア様が嫌いなのか、ミスティーア様が妊娠されるまで毎晩私を伴ってベッドに入り、ミスティーア様に排出行為だけを延々と続けられた。

 ミスティーア様は妊娠しにくかったのか、二ヶ月間妊娠することはなく、私のほうが先に妊娠してしまった。

 私が口内で大きくして、達しそうになるとミスティーア様に覆いかぶさる姿は、それは本当に哀れを誘うものだった。


 プライドの高い人だっただけに、心情を思うと私の方が苦しかった。


 私が男の子、セインリーシュを産んだ二ヶ月後にミスティーア様が待望の男の子を産んだ。

 カルカンダと名付けられた子供は生まれた瞬間から王太子として育てられた。



 セイントに頼まれたのが、カルカンダ様を私の手で育ててほしいということだった。

「そんな恐れ多いことは出来ません!!」

 そう断った。

 カルカンダ様を私の子供達のところに連れてきて同じように可愛がろうとセイントが努力しているのは解ったけれど、それはなかなかうまくいっていなかった。

 

 私はそれでも、カルカンダ様をセイントが抱くことを願い続けた。

 触れ合っていれば何時かは愛が育つ。そう信じて。


 一年が経ち、二年が経ち、セイントはカルカンダ様を愛せるようになっていた。

 私はホッと息を吐いて、カルカンダ様の王太子教育にミスティーア様が関われないことに目を伏せていた。



 ある日、ミスティーア様がセインリーシュを階段から突き落として、大怪我を負わせた。

 セイントは怒り狂って剣をミスティーア様に振り下ろし、右腕一本を切り落としてしまった。


 ミスティーア様は一命は取り留めたものの、フィービー様が閉じ込められた果の塔に、同様に閉じ込められることになった。


 カルカンダ様は王妃様の元で育てられることになり、セイントの王太子を実質的に取り上げることになった。

 カルカンダ様が成人したら、セイントを飛ばして、カルカンダ様に王位を譲ることに決まった。


 セイントはそれに何も思うことはないようで、私と私の子供達を可愛がって育てた。

 セイントはカルカンダ様にはそれなりに愛情を持っていたので、それ相応に心配りをしていた。

 ただ、キャスカ様には愛情を全くかけなかった。

 陛下と王妃が哀れんで、たまに面倒を見ていたが、キャスカ様はいつも寂しそうにこちらを見ていた。



 私の子供達が、年頃になり婚約して全員が国内の貴族達と結婚していった。

 キャスカ様は人質のような扱いで、他国へ嫁に出された。

 カルカンダ様は素晴らしい公爵令嬢と婚約されていて、国の未来は明るいと誰もが思っていた。


 

 カルカンダ様が成人して一年後、結婚して子供がすぐに産まれると、陛下が王位を退位して、カルカンダ様に王位を譲った。


 全てが、落ち着くべき所に落ち着いたと思ったその夜、カルカンダ様とセイントが一緒に酒を酌み交わしていた。

 カルカンダ様は母の話を聞きたがったが、セイントに答えることは出来なくて、言葉に詰まっていたと聞いた。


 何杯目かの酒をセイントが飲んだ時、口から血を流し喉を掻き毟った。

 カルカンダ様は「母上の(かたき)ですよ」と言って自分の父親が死にゆく姿を、酒を美味しそうに飲みながら朝がくるまで眺めていたらしい。


 翌朝、口から泡を吹いて冷たくなっているセイントの側で楽しそうに笑うカルカンダ様が見つかり、退位した陛下は、カルカンダを王位から下ろして、果の塔に閉じ込め、セイントの弟の第二王子に王位を譲ることになった。


 セイントが私を妊娠させた時に、第二王子に王位を譲っていればこんな不幸は起こらなかったのに。

 愚かなことだと思いながら私は、初めて心から美味しいお酒を飲んだ。

侯爵達の名前を出したのに、使うことなく終わってしまいました・・・。

存在は描かれていませんが、いつも側近としてセイント王子の周りをウロウロしています。

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[一言] いつも側近としてセイント王子の周りをウロウロしています。 ↑シリアスだったのに、なんかこの文がツボって笑えてきたw
[一言] セイントがいなくなった後に主人公が傾国扱いされなくて良かった。 男が悪いのに、女へあたる女が多すぎる上に、女が悪者にされがちだから。
[一言] そりゃあ侯爵家のブライト君も楽しかっただろうな。 元平民を紹介しただけで王子だけでなく王家全体の化けの皮が剥がれていくんだから。
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