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「ひゃっほおおーい! 空を飛べるって最高!」


 俺は願いが叶っていた。

 異世界にて、スキルを使用することで空を飛ぶことができたのだ。

 ビュンビュンと風を切り、空を滑空しまくる。

 ジェットコースターのように大回転したり、とにかく八の字に曲がりまくったり、空高くまで舞い上がったりした。

 もう気持ち良すぎる。これはもう半端ないって。

 あー、楽しい! マジで異世界最高だわ! 来てよかったわ!



「あの神様には感謝しないとな! でも異世界と言っても森ばっかでよくわかんないなぁ」



 空を飛べるので異世界なのだろうが、しばらく飛んでいる限りでも見渡す限り木ばっかりでいまいち良さが伝わって来ない。異世界なんだからもっとこう地球にはないハッピーでデンジャラスなものやイベントが待っていてもいいはずだ。


「んー、ひとまず下に降りてじっくり探索して見たりしたほうがいいのかなー……って、ん?」


 上空から見下ろしていた俺は、木々の隙間を通る道のような場所を見つけた。

 いや、それ自体なら今までもいくつか見つけている。

 俺の目を引いたのは、そこに動く生命体のようなものを発見したからだ。

 こ、これは、もう行くしかないだろ! 異世界で神様を除き初めての生き物。果たしてどんなやつなのだろうか!


「今行くぜ!」


 俺はその場所に急降下した。

 散々練習した成果もあり、地面スレスレで勢いを完全に殺し、地面の上数センチ程度の場所で静止した。見た今の? ガチで完璧なハンドリングだろ。もう完璧にこの能力を使いこなしてるぜ。ガチでセンスあるんじゃないか俺様。


「いや、そんなことは良くてだな……およおよ」


 気を取り直し、目の前を見てみると、そこにはやはり生物がいた。

 気持ち悪い顔をした緑色の生物が複数体。

 そして人間の女の子っぽい感じの生物が一体だ。


 ……やばい、なんだあいつら、キモチワル! ガチでエイリアンじゃないか。なんだろ、やっぱりここは異世界だったんだ。マジで信じたわ。なんの生物かは知らないが、こんな気持ち悪いやつが日本にいるわけない!


 そしてそんな生物たちは、うずくまる女の子を取り囲むような形になっていた。


「も、もう終わりです……一巻の終わりです……私の物語は、ここで幕を閉じるのです……」


 女の子は完全に頭を抱えてうずくまってしまっていた。

 何やらもう終わりみたいなことを永遠と呟いている。

 何してんだろ。このままじゃやられちゃうんじゃないか? 周り囲まれてるから逃げられる感じでもないし。確かにありゃ一巻の終わりだな。

 どうしよう……みすみす死なせるのか?

 いや、それは流石にちょっとな……でも俺なんて喧嘩の一つもしたことないし、この状況でできることなんて……いや、違う。俺には能力があるじゃないか。びびるな、この能力であの女の子を助けるんだ!


 俺は仕方ないので、今にも女の子を攻撃しそうな化け物共に標準を合わせた。


「おい、クソども! こっちを見やがれ!」


 俺はあえて気づくように大声を上げる。

 すると当然俺の方に気づいたそいつらは、こっちを一斉に見てきた。

 う、うーん、とりあえず威勢よく啖呵を切ってみたけど……いや、怖気づくな!


 その化け物どもは俺を標的と捉えたか、全員でこちらにダッシュし襲いかかってきた。

 近づいてきたところで俺は能力を発動させた。

 化け物たちはふわりとその場に浮いた。


「ぎっっっっっっぎぎ!」


 そいつらは手足をジタバタさせるが、地面より数メートルくらい上に浮いている状態なので何も行動することができていない。まるで空中に釘付けにされたような絵だった。


「ふぅ、なんとかうまくいったな」


 俺はうずくまる女の子に近づいていった。

 うお! 化け物のやつ木の棒を投げてきやがった! そんなの持ってたのかよアブねぇな。でももう何も持ってないっぽいな。もう流石に安心だろ。


「神様……こんな子でごめんなさい……ああ、神様……今度生まれ変わったら私を時計にしてください……」


「おーい」


「ひぃ!」


「……大丈夫か?」


 俺が声をかけるやびくんと跳ね上がる女の子。

 そして恐る恐るこちらを見てきた。


 うーん、なるほど、近くで見ると分かったがめちゃくちゃ可愛いなこの子。歳はたぶん中学生くらいかな。ショートカットの金髪碧眼ってやつ? 髪がさらさらで目も大きくて普通に可愛い。泣いてて目が潤んでるのも相まって、ちょっとこれはやばいかもな。って何俺考えてんだろ。


「大丈夫かと聞いてるんだが」


「……あなたは……悪者二号ですか?」


「二号? いや、普通に善良な一般人だが」


「あいつらはどこに……?」


「ああ、それなら俺が倒しといたぜ」


「え?」


 女の子は座ったままキョロキョロとあたりを見渡した。


「あれ、いない? ということは、本当に……」


「だからそう言ってるだろ」


 そこで女の子はひょいっと元気に立ち上がった。


「ふ、ふふふ」


 何やら笑いだした。え? なんだ急に。


「ふふふふ、そういうことですか。私にも完全に付きが回り始めたようですね」


 後ろを向き何やら笑っている。

 怖い、怖いよ、なんなの? この子精神破綻者だったのか。


「まぁ考えてみれば当然ですよね。この私がこんな良くわからないシケた場所で死ぬわけないですもんね。はぁ、泣いて損しちゃいました。いや、別に泣いてなんかないですけど」


 少女はすごく偉そうにしていた。

 だがどう見ても子供が見栄を張って頑張っているようにしか見えない。


 俺はとんでもないやつと出くわしてしまったのかもしれなかった。


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