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めぐみ206号室  作者: 琴吹
3/3

同居人:梅の木

         入居にあたって







 この度は当アパート「ボーダークロッシング」にご契約いただきありがとうございます。

 つきましては2点、ご契約時にお話しさせていただいた件について、こちらの書類で記載させていただきます。



 ・部屋に住み着く妖精「菊見 梅」について

 1番日当たりがよく、当アパートで管理を行なっている梅の木に近いとういことでこの206号室に滞在しております。

 指導は行なっており、過度な迷惑行為等は行わぬよう徹底しておりますがご契約の際説明させていただいた通り、彼女によって起こったご部屋での被害などは、当アパートでの責任は一切負いません。また、菊見 梅に関する不当な扱いが発生した場合はご退去を命じさせていただいております。ご了承ください。


 ・206号押入れについて

 当お部屋の押し入れの一部(窓際左手の右の戸)は異界の住人の部屋へと繋がっております。押し入れ前にぶら下がっているホワイトボードにてどこのお部屋にも繋がりますのでご不要の際は「物置」と記載のほどよろしくお願いします。(例 人間 と記載して頂くと別の住人の部屋に、獣人 と記載していただくと、異世界の獣人のご契約をいただいてる方のお部屋につながります)

 挨拶回りによろしけれ一度ご利用ください。


 以下長文











「...若狭さんって.....なにもの.......?」

 あたしは現状を確認するべく押し入れにあった紙を読んだ。

 後半の方は普通の入居書類のように見えたので割愛。


「梅ちゃん...管理人さんって何者.....?」

「世界を救った聖女。今はしがないアパートの管理人でスローライフを謳歌中よ」

「そんな異世界系小説みたいな設定なんだ...」


 まあもうこの際いいか。

 今は目の前のことを考えよう。


「梅ちゃん、あたし今日からお世話になるけど...」

「若狭が決めたことよ。もう私は何も言わないわ」

「そう...ありがとう。これからよろし

「週に1回、プリンを持ってきなさい。それが仲良くする条件」

「.....はい」


 こっっっっっっんの!!!!!

 なんであなたなんかにあたしのお小遣いでデザート買ってこないといけないのよ!!!あたしが食べたいよ!!!!






 ------------------------------------------



 荷解きも済んでお気に入りの座布団の上に座る。

 紆余曲折あったが今日から私も一室のあるじだ。

 余計なのいるけど....


 ふいに横に目をやる。

 梅ちゃんだ。窓際をふよふよしながら少年漫画を読んでいる。

 黙っていれば美人ってやつかな。やや童顔で黒の綺麗なサイドテールが陽に当たって綺麗に揺れている。


「梅ちゃんってさ」

「...ん?」

「いきなり初対面の人と同居してもなんとも思わない?」


 思ってることを聞いてみた。


「ん〜まああんたで3人目だし、慣れたもんよ」

「へ〜」


 漫画を読みながら答えてくれてる。

 慣れてるってのもあながち間違ってなさそうだね。


「その漫画面白いの〜?」

「んー....かなり、私は好きよ。荒廃した東京で能力者が戦うやつ」

「へ〜」


 なんだかんだ受け答えをしてくれるし仲良くなれそう...?

 ちょっと集中が切れるぐらいまでからかってみようかな。


「ねえ〜梅ちゃ〜ん」

「...うっさいわねぇ!!漫画に集中できないでしょ!!!」


 思ったより早く爆発した。

 本当に早かったなぁ....


「いいじゃんー、今日からひとつ屋根の下だよ?あたしたちにはもっと会話が必要じゃない?」

「あなたが良くてもあたしが良くないのよ!!!今いいとこなんだから!!」


 ちょっと度がすぎちゃったか。あたしも本読んでる時はちゃちゃ入れて欲しくないタイプだしやめておくか、作戦変更

 泣き落とし仲良し作戦



「ごめんなさい...梅ちゃん....仲良くしたくて.....迷惑だったよね......」


 ちょっと大袈裟に謝ってしまったか?まあ謝りたいのは本心だしこれで向こうが折れてくれると話しやすくもなるしね!


「.....っああーもう!何よ!私が悪者みたいじゃない!」

「いいや悪いのはあたしだよ...本当にごめんね....?」

「その卑屈なのをやめなさい!いいわよ、好きに話しなさいよ!仕方ないから相手ぐらいならしてあげるわよ」


 作戦成功。やっぱり善意を刺激するに限るねひひひ


「で、何が聞きたいのよ。私のことなんて聞いてもつまんないわよ」

「梅ちゃん何歳なの?」

「60から数えてないわ」

「ろく..?!」


 妖精なのは聞いたけど「結構なおばあちゃんだね」

「声に出てるわよ」


 おっと驚きのあまり


「私は妖精なの。人の年齢なんかに当てはめたらそりゃそうでしょう。私からしたら60なんて若いものだわ」

「なんで60から数えてないの?」

「このアパートで実体化するようになったのが樹木として60年目だったってだけよ。深い意味はないわ」

「へ〜」

「あんたも私が漫画読んでるの知ってるでしょう?俗世の創作に目を通し、記憶する。私の脳はそれを記憶する為でしか使ってないわ。歳なんて数えるなんて人間だけよ」


 なんか今の発言に人と妖精の差がちょっと見えた気がする。長い時を生きそうな種族って年齢数えないんだね。まだおばあちゃんぐらいの年齢だけど

 ちょっと調べてみようかな

 梅 樹 年齢 検索


「...ちょっと、それなによ」

「えっ...なにってスマホだけど」

「その板で何してるのよ」

「調べ物だよ、この部分に文字を入れて...」

「???」


 なんだかどんどん顔に(しわ)よってる。もしかしてスマホ知らない?


「...触ってみる?」

「いいの!?」


 梅ちゃんはたどたどしい手つきでスマホを触っていく。机の上にスマホを置いて人差し指でぽちぽちしてる様は可愛い子供のよっだった。


「こ...こう?」

「そうそう、そしてここの検索ってところを押して...」


 梅ちゃんに操作方法を教えながら、なんだかうまくやっていけそうな気になれた気がした。




















「うぅ〜これ、目がチカチカするわ!」


 結局梅ちゃんは電子機器にうなされ途中で諦めた。


主人公の名前が実在したので漢字を変更しました。


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