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これはデスゲームを見守る簡単なお仕事です。①-入社編-  作者: 三嶋トウカ
Stage1_D

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ショウカクシケン_コウ_4


「『立場わかってる』んですか? 実川さん?」

「ぐうぅぅぅぅぅぅぅ――!!」

「え、元気ですね。ホントに目玉落ちちゃいますよ?」

「じ……じね……! じごぐに!! おぢろ!!」

「そうですね。こんなことしてる僕は、地獄に落ちるかもしれません。……でもね? 実川さん」


 ズズズズズ――ズズッ――ズルウゥゥゥゥゥ――


「あがぁぁぁぁぁぁ!!」

「実川さんだって、地獄に落ちるんですよ? 会いたくないですね? お互いに」


 実川の目の際から、上手に指を滑らせて、ゆっくりと眼球をほじくり出した。くっついた神経や血管は途中でちぎれて、見たことのない汁がまとわりついている。


「酷い性格してても、目はそこそこ綺麗なんだなぁ。……気持ちわる」


 クチャッ。


「ギイィィィィィィ!!」


 ――ピッピッ――ザリザリザリザリ。


「要らないですもんね。もう」


 手のひらで転がした後、改は眼球をそっと包み込んで優しく潰した。そうして出来上がった残骸を床へ投げ捨て、足で丁寧に部見潰した。


「あぁぁぁ……あぁぁぁ……」

「うへぇ。実川さん、なんか無残な姿になっちゃいましたね」


 まるで他人事のように改は口にした。そして持て余していたマチェットに手をかける。


「じゃあ、そろそろバイバイですね」

「ううう……うぐっ……ふうぅぅぅ……あぁぁぁぁ……」

「全然なんていうか、スッキリしなかったですけど。最後に一言だけ」

「うぅぅ……あぁぁ……」

「さよなら実川さん。お世話にはなっていませんが、どうぞ泣かせてきた人たちに、死んで詫びてくださいね」


 ドスッ――


「――!? ゴフッ……お、あ……」

「僕、本当に。アナタのことが大嫌いでした」


 ズズズ――


「カッ――アァ――オエェェェ――ゴホッ、ゴホッ――オ……ア……ッ……」


 ピチャッ――ピチャッ。


 胸から縦に割いたお腹の中から、実川の臓物が溢れ出る。


「……きたな……。げ、なんかニオイする……うえぇ……おえっ、げぇぇぇぇ……」


 終わったことで緊張の糸が切れたのか、改はその場で嘔吐していた。この場に残ったのは、内臓が飛び出し血まみれになった身体も欠損している実川の死体と、その死体がまき散らす異臭に自分が潰した眼球の感触、そしてたった今自分が放出した吐しゃ物だった。


「はぁー……はぁー……」


 『もう慣れたから吐くことはないだろう』と、改はそう思っていたが、実際はそんなことはなかった。確かに慣れはしたものの、知らないところの自身のキャパシティを、軽く超えてきていたらしい。


「……」

「……え、あ……。ありがとう、ございます。すみません、なんか、変なところお見せしてしまって」

「……」


 サポートに入っていたうちの一人が、改にタオルとペットボトルに入った水を手渡した。どこから持ってきたのかはわからないが、吐き出すことは想定の範囲内だったらしい。貰ったタオルで口元を拭き、口内を水ですすぎその場に吐き出した。


「……はぁ、はぁ」


 途中から目の色が変わり、まるで別人のように実川に接していた改も、憑き物が落ちたように穏やかな表情を見せた。


「みなさん、お手伝いありがとうございました。本当に助かりました。……誰かが近くにいるっていうのは、力強いですね。お陰様で、最後まで頑張ることができました」


 お辞儀をする改に、三人も同じようにお辞儀をして返す。


「……ええっと。……嘉壱さん……? 聞こえていますか……?」

『――あぁ、聞こえているよ改君』

「実川ですが、さすがにこの状況は生きていないと思いますが……。掃除班の方々、お願いできますでしょうか」

『すぐに向かわせよう。もう少しそこで待っていてくれ』

「わかりました」


 正確には、まだ試験は終わっていない。掃除班が実川の死を確認したそのあとで、嘉壱と三律がこの部屋へやってくる。そうして二人にも確認してもらってようやく、今回の試験が合格か不合格かの判定が下りるのだ。実川は死んでいる。が、直接『合格』の言葉を聞くことができなければ安心できない。


 改は祈りながらまず掃除班の到着を待った。


 ――ゴゴゴゴゴ――ゴゴゴゴゴ。


 この部屋へ入る時に聞いた、ドアの開く音が微かに聞こえた。


 カツカツカツカツ――。


 靴の鳴る音が近づいてくる。


「――お待たせいたしました。お相手の方は……こちらですね。ルールですので、念のために確認いたします」

「よろしくお願いします」


 掃除班が実川に近づく。


「――呼吸無し。心肺停止。――よし、全員同意見。実川アオサの死亡を確認しました」

「はぁ……良かった……」


 改はほっと胸を撫で下ろした。


「社長たちを呼んでもらって構いません。私たちはこのまま掃除を始めます。少々気にはなるかもしれませんが、どうぞ、そのまま」

「すみません……あの、内臓結構ぶちまけてしまって……」

「いえいえこれくらい。掃除のしがいがあって、逆にこちらとしては面白いですよ」

「あはは、ありがとうございます。あ、それにその、僕も戻してしまって……」

「よくあることですから。気分は大丈夫ですか? 吐き気止めや胃薬なんかもあるので、辛かったら教えてくださいね」

「は、はい……!」


 掃除班の優しさと守備範囲の広さに感動しながら、改は嘉壱へ再度繋いだ。


「――嘉壱さん、改です。実川アオサの死亡を確認していただきました」

『ありがとう。それじゃあ、そちらへ向かうよ。……お疲れ様、改君』

「はい。ありがとうございます」


 一気に力の抜けそうな身体を奮い立たせ、改は嘉壱と三律の到着を待った。

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