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これはデスゲームを見守る簡単なお仕事です。①-入社編-  作者: 三嶋トウカ
Stage1_D

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ショウカクシケン_コウ_2


 改はもう一本串を持つと、実川の右頬へとあてがった。そしてキリで穴を空けるように回しながら頬を押すと、プツリと音を立てて少しの血が流れ始める。


「ぐっ、あぉぉぉぉぉぉ!! おぉぉ……おぉぉ……」

「口開けてないと、頬だけじゃなくて歯茎とか舌も貫通しますよ? 嫌なら口開けててください」

「おっ、お、おおお、ぉぉぉぉ――」

「あ、意外と素直ですね」


 ズズズ、ズズズ――


 ガタガタと震える顎へ刺さないように改は器用に串を貫通させていった。


「お、反対側……!」


 ズズズ――ズズズ――


「おぉぉぉっ……えぇ……あぁぁぁぁ……」


 ――プツッ。


「ううう〜……」

「あー、良かった。ちゃんとこっち側貫通しましたね。思ったより叫ばないなぁ。残念。痛くないってことなのかな?」

「あー……あー……」


 痛くないわけではなく、声を出すと頬に響いて余計痛くなるため、実川は叫ばないようにしていた。口を開けば串が引っ張られるし、舌が当たってひんやりとした感覚が気持ち悪い。


「……別に閉じても良いんじゃないですか? 口。喋らないなら、ですけど」

「おおあ……」


 実川はゆっくりと口を閉じる。既に顎は疲れ果てていて、プルプルと震えながら時々歯を串に当てていた。その感覚も嫌いだったようだが、ほっておいてもいずれぶつかってしまうのなら……と、実川は改の提案を飲み込んだ。


「スー……スー……ズズッ……ズズズッ、スー……」


 口を閉じた以上、酸素の供給は鼻を頼りにするしかない。垂れ流しの鼻水を一生懸命啜りながら、実川は呼吸していた。


「もう一回、ルーレット回そうかな。……でもなー……もう汚くなっちゃったしなぁ……」

「ふぅぅ……ふぅぅ……」

「……げ。しまった……! 先に服脱がせておくんだった。……刻んじゃっても良いよね?」

「んんんー――!! ううぅぅ――!!」

「こっちもオッサンの汚い裸なんか見たくないですよ。仕事のために仕方なく、です」


 改は大きな裁ちばさみを武器置き場から探して持ってくると、実川のスーツを切り始めた。


 ――ジャキッ――ジャキッ。


「んんん――!!」

「そういえば、実川さん良いスーツいつも着てましたよね。……あ。これもそうじゃないですか! いやー、僕にはこんなに高いスーツ、とても買えなかったですよ。……さすが、部下の手柄を自分のモノにしてのし上がった人間は違いますね~?」


 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。


「う、おぉ……ふー……ふー……」

「いやー、僕もこんなスーツ、一度で良いから着てみたかったな? お金はあるんですよ? うん。今の職場、私服で良いから買っても着るタイミングが無くて」


 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。


「んぅ――!!」

「買っただけで着ないのも、なんだかもったいないじゃないですか?」


 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。


 切り刻まれていくスーツを、ポロポロと涙を流しながら実川は見つめていた。実川がスーツに強いこだわりを持っていたことは、改も良く知っている。同じ会社で働いていたころ、いかに自分が仕事のできる男かを説明するのに、スーツを話題に出していた。家庭にギリギリの生活費しか入れず、手取りのそのほとんどをお小遣いにしていた実川は、スーツの他に靴と時計にも力を入れていた。ほぼ、実川にとってそれらは自分の功績を表すステータスだった。……したくてもできなかった改のやっかみも幾らか含まれているが、大事にしていたからこそ実川に与えるダメージは非常に大きかった。


 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。

 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキッ。

 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキッ。

 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキッ。 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキン。

 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキン。 ――ジャキッ――ジャキン。


「……ふぅ。やっと脱がせられた! 長かった~」

「うぅぅぅぅ……うぅぅぅぅ……」


 時々間違えて実川の皮膚を切ったのはご愛敬だ。まだ綺麗だった上半身も傷だらけになっている。真新しい傷の上を流れる鮮血が痛々しい。それでも、致死量には程遠かった。


「あ、大丈夫ですよ。さすがに下はやらないんで。気持ち悪いですし」

「ふぅぅ……んぅぅ……」

「もう良いかな? ……あー、ダメだ。頑張ろうって思ったのに、もうネタ切れ。まだまだだなぁ。結構色んな資料も見て、話も聞いて、司会もしてきたって言うのに。……はぁー」


 改は大きな溜息を吐いた。


「こう、なんていうか、もっと僕できると思ってたんですよ。残酷に、芸術的に。難しいなぁ。殺さないって。まだまだ、全然加減とかわからないや」

「うぅぅ……む、う、うぅ……」

「やっぱり、最期は中身見せてくださいね? 内臓出たら流石に死んじゃうと思うから、今までお疲れ様でした」

「んんんー!! んんう――!! ふぅ――!! おぉぉぉぉ――!!」

「そんなにいきまなくても。目、飛び出しそうですよ? ……あぁ。目、ねぇ」


 思いついたようにジッと実川の目を見た。


「……? ……!! おぉぉぉぉぉ――!!」


 イヤイヤと実川は首を大きく振っている。身体も大きく捩って、改が考えたことに反対しているようだった。

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