表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/557

85.特急の運行馬車

誤字ばっかりでほんと申し訳ナス

「わー! 見違えましたね、ゼンタさん!」

「……かっこいい」

「そ、そうか? 自分じゃ着られてる感すげーんだが」


 サラとメモリにも手伝ってもらった服選び。俺の新コーディネートは無難と言えば無難な仕上がりになった。



『装備:【手堅い革のジャケット】

   :【服を選ばないタンクトップ】

   :【上質な革の魔具ポーチ】

   :【動きやすいジーンズ】

   :【冒険者ブランドのシューズ】』



 これと言って冒険はしてねー組み合わせだ。履き物だけはクエストのことを考えて選んだが、他はヴィジュアル重視だ。俺の好みというよりは、サラとメモリの好みだけどよ。


 最初に購入を決めのはジャケットだった。中からタンクトップを着るのはいいが羽織ものは持っておけとサラが言うんで、これになった。


 そんで実際に着てみて、早速試したんだよ。

 こいつに傷がつくかどうかってのをな。


 結果はまったくの無事。『肉切骨』を力いっぱい突き立てたがほんの微かな引っ掻き傷すらもつかなかったぜ。


 これで来訪者が着るならどんな服でも『来訪者の装備』扱いにあるってのが確定したことになる。


 今思えばカスカも制服は着てなかったが……あいつは職業クラスがエンジェルだからな。あんま参考にできねーわな、気持ち的に。


 にしても、改めて全身を鏡で見ると違和感がありありだ。

 制服以外じゃ施設を出た連中のおさがりくらいしか着てこなかったんで、キメた服装がまったく似合ってる気がしねーぜ。


「そんなことありませんよ。ゼンタさんは年齢の割に体格もいいですし、よく似合ってると思います! というかそうでなければ私たちも選んだりしません! ね、メモリちゃん」


「……そう。わたしはいいと思う」


「まあ、お前たちがそう言うんなら……俺も着られりゃ別になんでもいいし」


 なんかおだてられてるだけって気もするが、女子二人から褒められて悪い気分にはならねー。……俺も大概単純だよな。今の姿を姉貴に見られたら、色んな意味で生意気だってぶっ飛ばされそうだ。


「なんか気持ちも一新って感じだな」


「みんな見た目が変わりましたからねー」


「……まだ慣れない」


 はは、そりゃそうだ。たった半日で馴染みはしねーよな、自分の恰好も仲間の恰好も。明日にもなればもうなんとも思わなくなってそうだけどよ。


「そうだね。ぼくから見ても全員よく似合っていると思う。だからすぐに違和感もなくなるはずだよ」


「だろ? 俺はともかくサラとメモリは……って!」


「鼠さん!? なんでこんなところに!?」


 いつの間にか傍にしれっといたのは、ポレロで二万リルをポンとくれたあの鼠少女だ。


 俺たちのリアクションにふっと笑いながら指先で帽子を傾けさせた少女は、相変わらずのキザっぽい口調で言った。


「いやなに、少し野暮用があってパヴァヌを訪ねていたのさ。すると奇遇にも君たちを見かけたものだから」


 そういや、大ムカデ騒ぎのときはいくら探してもこいつを見つけられなかったんだっけ……道理でな。ポレロを離れてたってんならそれも納得だぜ。


「君たちは冒険者のお仕事かな?」


「お、おう。まあそんなとこだ」


「はい、それはもう大忙しで……今はちょっと息抜きをしてるところなんです」


「そうかそうか、それはいいことだね。息抜きは大事さ。体もそうだが、心にも休息は欠かせないからね」


「だよな。俺もそう思うぜ、ははは……」


 しかしまあ、こいつ自体に思うところはないんだが、つい昨日下水道のネズミ駆除というクエストをやったせいでどうにも気まずい。サラも話すのに気後れしているような感じだし。メモリなんか俺の後ろに隠れてまったく会話に参加する気ねーし。


 そんな俺たちの態度に気付いてんのかどうか、鼠少女はいつもの如くアドバイスを口にした。


「だけど仕事も休息もほどほどにね。重要なのはそのバランス感覚だ。……ところでポレロにはいつ帰るつもりなんだい?」


「あーっと、そこをどうしようかまだ考え中でな」


「クエストが片付いているのなら、ホームへ戻るべきだと思うよ。明日の朝一で特急の運行馬車も出る。それに乗ったらどうだい?」


 少人数だけを大急ぎで運ぶ馬車が、こっちで言う特急だ。

 パワフルな馬を使って休憩もなるべく減らすスケジュールで走るため、通常の運行馬車よりも移動にかかる時間は断然短くて済む。


 そのぶん乗ってる側の体力は削られちまうが、時は金なりとも言うからな。利用者はそれなりにいるんだとか。


「……じゃ、そうすっか?」

「悪くないと思います」

「……、」


 サラもメモリも反対しない。

 二人とも、さっさと街を離れちまえば例の謎のマスク連中に見つかることもないと考えたらしい。


 しかしいずれはポレロで出くわすことになる気もするが……ま、先延ばしにできるんならそれでもいいか。


 ぶっちゃけポレロで顔を合わせたほうが俺たちにとっては有利だ。

 あそこはトードやパインを始め、顔見知りがたくさんできてっからな。味方が多いってわけよ。


「お前はどうする? 俺らと一緒に帰るか?」


「誘ってくれてありがとう。でもぼくには別の移動手段がある。せっかくだけど遠慮させてもらうよ。それじゃ、またポレロで会おうじゃないか」


「あ、おい。もう行っちまうのか?」


 くるりと背を向けた鼠少女は、いつものように片手を上げてニヒルに去っていく。ポレロでもパヴァヌでもやることが変わらねーな、あいつは。


 ところで野暮用ってのがなんだったのか聞きそびれたな……訊ねても答えてくれなかったかもしれんが。


「鼠さんって本当に不思議な子ですよね」


「……何者?」


「さあな。未だに名前も知らねーし」


 でも悪い奴じゃあないってのは確かだろうよ。

 どころか、見ず知らずに身銭を寄越すようなとんだお人好しだ。


 いやに神出鬼没ではあるが、ま、そういうやつだってことだけ覚えとけばいい。


「買い物も済みましたし、今日はもうホテルに戻って休みますか?」


「……明日の朝が早いなら、そうしたほうがいい」


 こっちで泊まってる『ホテルルーベル』は『リンゴの木』よりも部屋が広くて綺麗だ。それに見合って料金も高いけどな。


 ちょっとした旅行気分で味わう贅沢にはちょうどいいと思って奮発したが、なんだかんだ居心地で言えば『リンゴの木』のほうに軍配が上がる。あくまで俺個人の感想だが。


「ただ客層はやっぱルーベルが勝ってるよな? 上品っつーかなんつーか」

「そんなこと言ったらパインさんに怒られちゃいますよ、ゼンタさん」

「わたしたちも、リンゴの木の客」


 なんてことを話しながら、アンダーテイカーの買い物ツアーは幕を閉じた。



◇◇◇



『シバ・ゼンタ LV21

 ネクロマンサー

 HP:111(MAX) 

 SP:77(MAX)

 Str:98

 Agi:79

 Dex:61 

 Int:1 

 Vit:67 

 Arm:62

 Res:32

 

 スキル

 【悪運】

 【血の簒奪】

 【補填】

 【SP常時回復】

 【隠密:LV3】

 【活性:LV2】

 【心血】

 【集中:LV2】

 【察知:LV1】

 クラススキル

 【武装:LV4】

 【召喚:LV4】

 【接触:LV2】

 【契約召喚】

 【血の喝采】

 【偽界:LV1】』



 レベルが21になったことで、ステータスの伸びがまたよくなった気がする。あくまで気がするってだけではっきりしたことは言えんが。


 そして新スキルがいっぺんにふたつも手に入ったぜ。


 そのうちのひとつ【察知】のほうは、どういう効果か考えなくてもわかる。潜んでいる敵やらその攻撃やらの気配に敏感になれるんだろう。パッシブタイプのスキルだな。ただこれまでの例で言うと、LV1ではそこまで大した力にはならないはずだ。ま、成長に期待枠だな。


 そして気になるのがもうひとつのスキル、【偽界】だ。こいつはちゃんと説明を読んで調べんといかん。なんせ字面からじゃ効果がさっぱりだからな……とりま、ポチっとな。



『【偽界】:君臨者は望むままに世界の在り方を変質させる』



 ぐおー! 覚悟しちゃいたがやっぱりなんもわかんねー!


 結局はどのスキルも体感で覚えるしかねーとはいえ、もう少しまともな説明文を載せてくれませんかねえ!?


「それでは出発しまーす! 走行中は席をお立ちにならないように!」


 あの【悪運】にも匹敵するくらいに意味不明な文章に頭を抱えてると、御者が元気よく馬車を走らせ始めた。特急というだけあって、速い。速度だけならバワーホースにも負けてねえくらいだ。


「わあ、もうパヴァヌがあんなに小さくなってますよ!」

「……窓から身を乗り出すのは、どうかと思う」


 どっちが年上かわからんサラとメモリのやり取りに苦笑しつつ、画面を閉じる。


 馬車には俺たちだけ……ではなくもう一人客がいる。若いが人相の悪い男だ。


 乗り込んできた際には先に乗車してた俺たちをじろりと見てきたが、それきりこっちを無視するように顔を背けている。


 明らかにコミュニケーションを拒否してる雰囲気なんで、俺たちからも話しかけたりはしない。


 とまあ、乗客は全部で四人しかいない。

 狭いと言ってもあと二人くらいは乗っても余裕はありそうだが、朝一のしかも特急ともなればこんなもんだろうな。


 とんっ、と。


 混み合わなくて助かったな、なんて考えてる俺の耳に、そんな軽やかな音が馬車の後方から聞こえてきた。若い男が座ってる側のほうだ。


 いったいなんの音だろうかとそちらへ顔を向けると、そこには。


「な……!?」


 真っ白なマスクに真っ黒なローブの怪人物が、揺れる馬車の中で仁王立ちしていやがった……!


『シバ・ゼンタ LV20+1

 ネクロマンサー

 HP:105+6

 SP:72+5

 Str:91+7

 Agi:72+7

 Dex:55+6

 Int:1+0

 Vit:62+5

 Arm:57+5

 Res:28+4


 スキル

 【悪運】

 【血の簒奪】

 【補填】

 【SP常時回復】

 【隠密:LV3】

 【活性:LV2】

 【心血】

 【集中:LV2】

 【察知:LV1】New!

 クラススキル

 【武装:LV4】

 【召喚:LV4】

 【接触:LV2】

 【契約召喚】

 【血の喝采】

 【偽界:LV1】New!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ