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81.女王様からご返済

人生初のレビューを頂きました

まことにグラッツェ! 超うれしいです

「……どうするつもり?」


「小せぇのはお前たちに任せる。俺は奥のデカい奴だ。タイマン張らせてもらうぜ」


「他のネズミさんたちも決して小さくはないですけどね」


 ルーナもステインもしっかり戦える。そこにメモリが加わり、危なくなってもそんときゃサラの『プロテクション』で立て直しができる。これだけのネズミを相手にも数分くらいは持つはずだ……その数分以内にケリをつけねえとな。


「ちょ、ちょっと待て! アレと一人で戦うつもりか!? 正気じゃない、ふたつのチーム総出じゃないと危険だと組合長は判断したんだ! それに実際に見てわかったがアレは育ちすぎている! もっと高ランクの冒険者を呼ばなければ!」


「呼びに戻れそうにもねえから戦うってんだぜ。犠牲なしじゃ、な」


 そう言うと、血相を変えたままでステインの表情が固まった。その視線は眠ったままのランドに向けられている。この状況で無理に逃げ出そうとすれば、真っ先に死ぬのは自分らのリーダーだと改めて気が付いたんだろう。


「だけど、どうやって近づくの? クイーンラットはあそこから少しも動こうとしないよ」


「そらまあ……勢いで」


 勢い!? とルーナとステインは声を揃えて驚くが、俺だって別にやぶれかぶれで言ってるんじゃねえぜ。せっせとこしらえたんであろう隠れるための壁は、モルグを戦闘不能にするために何度も尻尾攻撃を重ねたことでほとんど瓦解している。奴が引っ込むための場所はもう丸見えになってんだ。


 要はそこまで、ネズミにも尻尾にも邪魔されずに一気に突き抜ければいいわけだろ?


「まあ見てろって。冒険者としちゃお前らのが先輩なんだろうが、俺だってそれなりに修羅場をくぐってきてんだ」


 兵隊ネズミたちは任せた、と二人の肩を叩いて俺は女王のほうへと駆け出す。


 そこにはメモリの虫との激戦区域を抜け出した根性あるネズミがいて、当然噛み付いてこようとするが。


「お前たちにゃ構ってらんねーよ! 【活性】発動!」


 今度はフルでSPを消費する。そして跳び上がる。今度は中央ではなくその反対、壁に向かってだ!


「ぉおおおおおおっ!!」


 接地した瞬間に足の回転をめいっぱい速める。壁からずり落ちるより先にもっかい蹴ることでいくらか進むが、さすがに限界、というところでもう一度跳躍。


 お次の足場は――天井だ!


「! 【集中】発動!」


 接近する俺にクイーンラットは例の伸びる尻尾で狙撃しようとしてくる。逆さまの視界で奴の尻尾がこっちへ向いたのが確認できた瞬間、俺の時間は引き伸ばされた。めっちゃスローだ。この時点で尻尾は目の前にまで来ていたが、そこからはのんびりとしか進んでこない。


 メイルの石槍とはてんで違うな……こんなもんに当たるはずがねえ!


「おぉうりゃ!」


 身を捩じって尻尾の先っちょをやり過ごし、そのまま天井を蹴ってすれ違う。

 どしゃっ! と下水を撒き散らしながら用水路へ着地。


 やった、思った通りにできた――天井を走ったぞ、俺! アクションスターだってできねえぜ、こんなの!


 まあ走ったっつーか単に跳ねて落ちたって感じではあったが、それでも拍手もんだろこいつは!


「【武装】発動!」


「ギキィイイゥッ!」


「『不浄の大鎌』ぁ!」


 我ながら天晴れなアクションの感動にもっと浸っていたかったがそうもいかねえ、なんせすぐ傍でクイーンラット様が怒りの鳴き声を上げてるんだからよ。


 ネズミにしちゃやけに長い前脚を打ち下ろしてきたが、俺はそれを鎌で受け止めた。体格はもはやヘビーとフライどころじゃねえ差があるんだが、筋力ステの恩恵なのかさほど重くは感じなかった。


「こいつで何回か斬りゃあてめえも終わりだ……!」


「ギキィッ!」


 連続で鎌を振る。だがクイーンラットもこいつの刃に宿る不浄のオーラのヤバさを本能で感じ取ってんのか、丁寧に俺の攻撃を払いやがる。二本の前脚を器用に使いこなし、合間に背中側から尻尾の狙撃までしてくるじゃねえか!


 こっちも負けじとグイングイン鎌を振り回しているが、それでようやく攻撃回数は互角ってところだ。


 だーもう、難儀だぜ! これが鎌じゃなくて普通の剣とかならもっと簡単に刃を当てられるってのによ!


「うっ!?」


 打ち合ってる最中、不意の痛みで俺は顔をしかめた。


 なんだぁ? クイーンラットから攻撃は受けてねえはずなのに、急に足へ刺すような痛みが……。


「キィ」


「っ、まだ兵隊を手元に置いてやがったか!」


 サラたちが戦ってるのよりは小さなネズミが、見える範囲だけでも何匹か体を登ってきていた。そしてクイーンを守ろうと俺の肉を齧り出している。これもおそらく女王の指示による行動だろう。


 小さいってのはつまり隠れやすいってことだ。クイーンラットの体毛にでも潜んでいたか、あるいはこの浅い用水路に元から放していたか。


 いずれにせよ女王様はマジで知能が高いぜ――ここまで戦略的に用心してるネズミなんて聞いたことがねえ!


「こうなったら……【武装】解除!」


 ガジガジと身体のいたるところを噛まれて俺のHPはみるみる減っていく。


 ひと齧りぐらいならなんてことねーが、それが何匹も、それも高速で牙を立ててくるとなればさすがにマズい。

 いくら菌にやられねーとは言ってもHPがゼロになれば俺はゲームオーバーなんだからな。


 だからこそ、ここはあえて無防備になる。


「! ギキッ!!」


「ぐあっ……!」


 賢いだけあって、クイーンラットは俺の隙を見つけるとすぐに突いてきた。比喩じゃなく、文字通りに例の尻尾で俺の腹目掛けて突き刺してきたんだ。かなりの衝撃で俺は胃の中のもんを吐き出しそうになったが、それだけだ。HPもまだレッドゾーンにはなってねえ。


「へっ、ランドみてーに腹をぶち抜こうったってそうはいかねえぜ。俺の体にゃこいつは刺さらねえ」


「ギィっ!?」


 来訪者は血を流さない。

 どれだけ傷付けられてもただHPが減るだけで、手足が千切れることもなければ体に何かが刺さることもない。


 怪我をしねえってのはこういうときに助かるぜ。


「だけどお前は血を流すだろ!? 魔獣とはいえ生き物は生き物なんだからよぉ……【武装】発動!」


「ギ、キィイイッ!」


 失策を悟ったクイーンラットは尻尾を引っ込めようとするが、腹にぶち当たった先っぽは俺がしっかりと握っている。逃がしゃしねえよ。盛大な一撃を誘って捕まえるために、わざと武器を手放して食らってやったんだからな。


「『肉切骨』!」


 骨のナイフを突き立てる。

 太くて硬い尻尾は焼いたウインナーみたいな感触でぶっつりと表面が裂けた。

 膿みてーな色をした血がそこから飛び散り、クイーンラットは一際暴れた。


 よーし、もう目的は果たしたんだ。尻尾を返してやろう。


「血ってよりか体液って感じだが、とにかく条件は満たした」


「ギキィイイィィイィ!!」


「そう怒んなよ。お前にとっての地獄はこっからなんだぜ……【血の簒奪】を発動だ」


 久しぶりに使ったが、効果は如実に表れた。


 クイーンラットは明敏に自身の違和感を嗅ぎ取って探るような仕草をしている……が、そいつはもうお前にはどうすることもできやしねえよ。


 ガジガジガジ! と兵隊ネズミは今も女王を守るべく必死に齧ってきているが、もうそんなもんは気にならねえ。むしろ俺のアシストをしてくれているようにすら思えるほどだ。


「おう、その調子でどんどん減らしてくれよ。俺のHPが減ったぶんは女王様からご返済頂くんでな」


「……!」


 ――クイーンラットは、本当に頭がいい。


 理論立てて考えてんのかどうかは知らねーが、自分の不調と俺の余裕とが関連づいてることと、それへの対処のために一息で俺を仕留めることを思い付いたらしい。


 基本は部下を前線に立たせる慎重策から一転、その巨体で策も何もねー突進を仕掛けてきた……が。


「ふんっっ!」


 それを俺は真正面から受け止めてやった。


 レベル20のステータスを、舐めんなよ……! 体力を減らしたお前なんざもう怖くねーぜ!


「【武装】発動!」


「!?」


「かっ飛ばせ『恨み骨髄』!!」


 これまで食らったダメージを、力に変えて。


 恨みのパワーを纏った骨の剣がクイーンラットに命中。自分でも意外なほどのパワーで奴は中央にまで吹っ飛び、そんでちょっとじたばた藻掻いたあとにガクッと動かなくなった。


「おお、すげえ……あの巨体をこんなにか」


 なんか俺、いつの間にかかなり人間離れしてきてる気がするな?


 ま、そうでもなきゃインガにリベンジするって目標はとても叶わねーんで、ぜんぜんウェルカムだがな。


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