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8.クヨクヨしようがしなかろうが

「うーむ」


 俺は一人、唸っていた。

 時間的にはたぶん深夜。場所は超太い幹をした木の下だ。


 ボチも子猫もとっくに眠っていて、親猫は見張りのために木に登っている。

 あんな体格でよくするすると登れたもんだ。

 まあ猫ってのはサイズ問わず身軽な動きをするもんだしな……とそんなことはともかく、俺のことだ。


「何度見てもさっぱりだな」


 デカ鹿を狩ったことで(奴は俺たちの夕飯となった)レベルアップした俺のステータス画面には、こう出ていた。



『シバ・ゼンタ LV4

 ネクロマンサー

 HP:35(MAX) 

 SP:11(MAX)

 Str:24 

 Agi:17

 Dex:8 

 Int:1 

 Vit:20 

 Arm:12

 Res:5』



 なんか上がるのと上がらないのとの差が激しいな。今度はやけにAgiが上がってるが……なんの数値かわからんから喜んでいいものかどうか。

 相変わらずIntってのはうんともすんとも変わらんしよ。


 とにかく見るべきはHPとSPだな。

 このふたつさえ大事にしとけば問題ないだろう。

 うん……どっちも順調に上がってるな。

 HPと比べるとSPの伸びが悪くも感じるが、レベルアップのたびに確実に上がってくれてるだけでも御の字だ。


 HPが多い分にも別に困ることなんてねえし。むしろ助かるし。ゲームオーバーを恐れる身としちゃな。


「んで、次だよ」


 ステータス欄から、スキル欄へと移る。そこに出てる表示を読む。



『スキル

 【悪運】

 【血の簒奪】

 【隠密:LV1】

 クラススキル

 【武装:LV1】

 【召喚:LV1】』



 レベルアップで得たニュースキルは、【隠密】である。ちなみに条件を満たして取得した【血の簒奪】もきちんとここに書かれている。


 なんか名前からして死霊術師ネクロマンサーにぴったりな感じがするから、てっきりクラススキルのほうに入ってると思ったんだが、普通に通常スキルのほうだな。

 こっちを通常スキルって呼んでいいのか知らんけど。


 とりま、【隠密】を押してみる。



『【隠密】:隠れ潜むことをあなたはいずれ苦と思わなくなる。誰の目にも映らなくなろうとも』



 こんな説明ある? 

 つーか説明になってねえよこれ。

 どんな効果かまるでわからねえじゃねえか。


 ……ま、いいか。

 ないよりはあったほうがいいだろうぜ。

 特に、危険な野生動物ひしめく森の中で生き延びようって時には、隠れられるのはかなりグッドなスキルだ。


 スキルの不思議な力で隠れるのが上達するのか、それとも単にじっとすることに我慢強くなるだけなのか、ちょっと文章からじゃ読み取れないのが不安っちゃ不安だけどな。


「にしても、こっちにもレベル表記があるのか」


 【悪運】以外のふたつのスキル、【武装】と【召喚】にはくっつくようにレベルの表記がある。そんでどっちもクラススキルのほうに書かれてある。


 だからなんとなく、クラスと繋がりのあるスキルにレベルアップの概念があるんだろうと考えるともなく考えていた俺だが、それが覆った。


 通常スキルの【隠密】にもしっかりとレベルがあるじゃん……つまりこいつも、何かあればレベルアップするスキルだってことだ。


「逆に言うと【血の簒奪】は、これ以上強くはならないってことか」


 残念に思うと同時、そりゃそうだろうなとも思う。

 だってこいつ、もう既にめちゃくちゃつえーもんな。

 どうにかして血さえ流させれば、ずっと体力回復するんだぜ? しかも敵から奪うっている構図で。そりゃつえぇわ。


 ただつえーはつえーけど、やっぱ発動には条件がある。

 デカ鹿で試して判明したぶんだけでも、


 ①対象を自分の手で傷つける(流血必須)。

 ②対象の近くにいる(最低でも半径五メートル以内くらい)。

 ③自分のHPが最大じゃない間しか敵のHPを奪えない。

 ④HPは戻っても本来の意味での体力は消費したまんま。


 というのが見つかっている。


 たぶん、他にも色々あるんだろーな。

 試せてねえけど、有用なスキルなだけに、早いとこ調べておきたいではある。

 たとえば投擲なんかで傷付けたときに発動するのかとか、対象を複数にできるのかとか。

 そんときの回復具合もな。


 しかしよくよく考えてみるとこれ、使える相手は限られるな。


 発動のためにまず自分がやられねえといけないってのがまず厳しいし……HP回復の保険にはなるが、一発で殺されるとそれも意味がない。

 HPを奪えるのはいいが、デカ鹿は数回やってようやく動かなくなったってのを思うと、これだけをあてにして戦うとえらい目に遭いそうだぜ。


 少なくともデカ鹿よりパワフルでエネルギッシュな動物を相手には、どうしようもねえ。

 だってデカ鹿でギリギリだったわけだからな。

 それもボチたちの助けありきで。


「【隠密】も【血の簒奪】も助かるっちゃ助かるけど、やっぱなぁ。もっとこう、ガツンといけるような攻撃的なのが欲しいよな」


 今んとこ攻撃手段は【武装】で出す骨のナイフだけ。

 あとはボチの噛み付き攻撃ぐらいか。

 これじゃあ猛獣たちを相手には、いくらなんでも心許ないってもんだ。


「! 待てよ、もしかするとだぞ」


 そこで俺は閃いた。

 スニーキングでデカ鹿に近づいたあとのレベルアップで【隠密】が出たこと。


 これはひょっとしたら、俺の行動次第で得られるスキルが変わるってことなんじゃねえのか!?


 条件取得ってもんがあることはわかってるが、そっちは何をどうすりゃいいのかちっともわからんから狙ってゲットは期待できない。

 だが、レベルアップ時に狙ったスキルを貰うことを期待するのは悪くない作戦なんじゃなかろうか。


 つまり何が言いたいかというとだ。


 隠密して【隠密】スキルが出たなら、これから先戦えば戦うほどにそれに適したスキルが降ってくるんじゃねえかってこと。


「我ながらこいつは天才的な発想かもな……!」


 当たってる可能性は十分にあるぜ。

 だってそうでもなきゃこんなタイミングで【隠密】は出てこないだろ?


 ってぇことはだ。

 親猫指導のもとで狩りの経験を積めば積むほど、戦闘に適したスキルが手に入るし、レベルも上がるってわけだな?


 食料も確保できて、万が一の場合の助けも保証されてる。……最高じゃねーか! 知らず知らずのうちに俺、すげぇ好条件の待遇にいるじゃねえの! ビックリだわ!


「ありがとう、親猫。やっぱ猫に悪い奴はいねえな」

「?」


 俺の声が聞こえたのか、木の上からのっそりと顔を見せた親猫は「なんのこっちゃ」というような表情をしていた。

 いやいいんだ。

 俺が勝手に感謝してるだけだから。


「昼間も寝たけどよぉ、そろそろ眠くなってきたから俺も寝るぜ。見張り交代してーときは起こしてくれよ」

「がう」


 はいはい、って感じの態度だ。

 さては俺の夜番能力を甘く見てんな? 

 ……まあぶっちゃけた話、俺らを狙った肉食動物が息を殺して忍び寄ってくるのを事前に察知できるかっていうと、ぜんっぜんそんな自信はない。


 だからここは大人しく眠らせてもらうとするぜ。


「ようし。明日からもっと狩りに精を出すぞ」


 目標は、あの熊やらお化け蟹やらを一人で倒せるくらいになることだ。


 レベルが上がるごとになんかパワーも上がってる感じするからな……ステータスは参考にならないがこのままレベルアップを続けて、そんでいい感じのスキルも手に入れば、きっといつかはそれが叶うだろう。


 本当にそう上手くいくのかっつー、怖さだってあるにはあるさ。

 だけどクヨクヨしようがしなかろうが状況は変わらねーしな。


 だったら楽観的に、きっと何もかも上手くいくって信じたほうがいい。体にも心にもそのほうが健康的だ。


「ひとまず今日はおやすみだな……」


 未知の世界に怯えずに済むほど強くなった自分を夢見て、俺は眠りについた。


『シバ・ゼンタ LV3+1

 ネクロマンサー

 HP:29+6

 SP:9+2

 Str:21+3

 Agi:13+4

 Dex:7+1

 Int:1+0

 Vit:17+3

 Arm:10+2

 Res:5+0』


この書き方ポケ○ンっぽいすね

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― 新着の感想 ―
[一言] あのいやら戦法でもINT上がらないのか、素質ないな
[一言] ネクロマンサーと言うよりアサシンw
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