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63.スキルは脅威的な力

誤字祭り是正に深く感謝であります

「スキルにも講釈があるってのか?」


「講釈というか、種類についてね。スキルを使っているなら多かれ少なかれ、自分なりの理解をしているでしょうけれど……それも入手したスキル次第のところがあるもの。きちんと説明していくわよ」


 と、俺より遥かにゲーマーっぽいカスカが言うんで否やはねえ。


「ぜひ聞かせてくれよ、カスカ先生」

「ふふん、ゼンタの割には聞く姿勢ってものができてるわね」


 カスカはすげえ満足気にしている。

 にやにやとした笑みが隠せていないあたり、こいつはマジで人の上に立って尊敬されることが好きみたいだな。


 ま、その趣味にとやかく言うつもりはねえが、今は早いとこご教示を願いてえところだな。


「わかってるわよ。えーっと、まずスキルは大別して三つのタイプに分けられるわ」


「タイプだって?」


「ええ。と言っても魔法における属性みたいなものの話じゃなくって、発動の仕方に違いがあるって意味ね」


 ひとつ目は自分で発動するかどうかを好きに選択できる能動発動型、アクティブタイプ。


 ふたつ目はランダムだったり適した状況になると本人の意思に関係なく使用される自動発動型、オートタイプ。


 三つ目が状況やタイミングを問わずいつでも使用されている常時発動型、パッシブタイプ。


 カスカの見聞きした範囲ではこれらがスキルのタイプ別系統である、とのことだった。


「私で言えば、【翼撃】はアクティブタイプ。【宣告】はオートタイプ。【収納】はパッシブタイプね」


「ん? 【収納】はアクティブじゃねえのか?」


「出し入れするときはそうなんだけど、収納空間には常に物が仕舞ってあるからね。使っていないように見えても【収納】は常時発動しているスキルなのよ」


「へー……待てよ、ってことは【収納】ってSPを消費しねえスキルなのか!?」


 俺が持ってる常時発動型のスキルと言えば【SP常時回復】だが、こいつはSPを消費しない変わったスキルだ。まあ、SPを回復させるためのスキルなんだからそれは当然と言やぁ当然なんだが。


 それと同じなんだとすれば、【収納】ってマジでめちゃくちゃ便利じゃねえかよ!


「お察しの通り【収納】はSPを使わないスキルよ。確かにこれには助けられているけど、私からすれば【SP常時回復】のほうが羨ましいわ。道理で、あれだけスキルを連発してもなかなかSP切れにならなかったわけだわ」


 他の来訪者から冷静にそう言われると、何をするでもなくSPが勝手に回復していくってのはやっぱ破格なスキルだと改めて実感する。カスカのやつ、本気で羨むような目をしているし……つってもこいつには俺にはねえMPがあるんだがな。


「隣の芝生は青いってやつね。全員、そういう強力なものを何かしら持ってるんでしょう。歌手シンガーのカナデも、流星騎手メテオライダーの天満くんも、敵にするとかなり厄介そうだったしね」


 説明に戻るわよ、とカスカはスキルのタイプ別のさらなる詳細について語り始めた。


「言った通り、このアクティブやパッシブっていうのは大まかな分け方でしかないわ。実際にはもうちょっと細かく系統が別れるはずよ」


「するってえと、どんな風に?」


「そうね……たとえばそれこそ、常時発動型でも【収納】や【SP常時回復】とは違って、SPを消費するようなスキルがあるかもしれない」


「おいおい、それは使い勝手が悪すぎるだろ」


「でもそのぶん、強いスキルになると思わない? こういうのってデメリットがあると効果が強力になったりするものだから……デメリットばっかり目立ってぜんぜん実用的じゃないクソみたいなスキルとかも、ゲームによっては普通にあるけどね」


 うひぃ。そんな外れスキルに当たらないことを祈るばかりだ。ただ弱いだけなら使わなけりゃいいだけの話だが、持ってるだけで勝手にSPを食いつぶしていくんじゃ疫病神もいいところだぜ。


「それとは反対にアクティブ、自分の意思で発動するタイプでもSPが減らないスキルとかもあるかもね」


 そっちは使い勝手がよくて助かるな、と呑気に思った俺だったが、考えてみりゃあ俺はそういうスキルを既に持ってたぜ。


「そっちはあるぞ。俺の【補填】と【心血】がそうだ」


 SPを減らしてそのぶんHPを増やす【補填】と、反対にHPを減らしてそのぶんSPを増やす【心血】。

 どっちも使うときにSPは消費しないタイプのスキルだ。


 そのことを話すと、カスカは面白そうにふんふんと頷いていた。


「ふたつのスキルでHPとSPの量をいつでも操作できるってこと? ゼンタのくせに器用なことするじゃないの。変換率が数値そのままじゃないからこればかりに頼るとどっちも目減りしていくだけなのを、あんたは【SP常時回復】で解決してるってわけね。なかなか見られない戦い方だわ。スーサイド戦法とはちょっと違うけど、命をやりくりするのは少し死霊術師ネクロマンサーっぽい気もするわね……興味深い」


「おーい、カスカさん?」


「……聞こえてるわ。ちょっとゲーマーとしての血が騒いだだけよ。ゼンタが聞くほどに面白いビルドをしているものだから」


「ビルドって?」


「キャラクタービルドね。とはいえこっちは職業クラスもスキルも運任せだから望んだ構成になんてできっこないけどね」


 やれやれと肩をすくめるカスカに、俺は曖昧にしか返事できなかった。

 こいつの話す内容はちょっとコアすぎるぜ。

 俺にはてんでついていけん。


「まあそんなわけで、スキルには効果以外にも違いがあるってことよ。他の例も挙げると、パッシブスキルは条件が満たされると勝手に発動されるものだけど、アクティブスキルにも条件が整っていないと発動が選択できないものもあるわ。人を助けるためじゃないと使えない【清き行い】や、相手に触れてないといけない【接触】なんかがその代表ね」


 あんたにもそういうのない? と聞かれて自分のスキル欄を見直してみる。


「あーっと、お前と同じ【接触】と、あとは【隠密】があるな。こいつは他人にばっちり見られてる状態だと使えん。や、使えはするんだが効果が出ないって感じだな」


「それはいい情報ね。それを知ってさえいれば、同じく【隠密】を使う相手がいてもそれを防ぐことができるかもしれない。少なくとも、その可能性はぐっと増すわ」


「ああ、まあそうだな。スキルLVでもまた変わってくるかもしれんが」


「そうね、そこは実戦での要注意ポイントね」


 【接触】対決でも思い返してるのか、そうもっともらしく同意するカスカだが、さっきからなんか違和感があるな。


 こいつの口振りはまるで、スキルを持つ相手といずれ本気で戦り合うことを想定しているようにも聞こえるぞ。


 不審に思った俺は、その疑問をはっきりとぶつけてみた。

 するとカスカは「そうだけど?」となんでもないように認めた。

 これには少しびっくりだぜ。


「どーいうこった? なんでそんな用心の必要がある。来訪者ってんなら俺たちと同じ境遇の――」


「――仲間だろ、なんて言うつもり? それは危機感の欠如ってものよ、ゼンタ」


「危機感ってお前」


「だってそうでしょ? スキルは脅威的な力よ。だから来訪者は多少なりとも、どこへ行っても注目されるし、多少なりとも特別扱いを受けるわ。で、そういう連中に悪人が一人もいないっていう保証は、どこにあるの?」


「……!」


「クラスメートならまだしも、この世界には他の来訪者だっているのよ。どんな人間かなんて未知数だし……そもそもそれを言うなら、クラスメートの中にだって危ういのはいるわ。あんた以外の三ヤベなんかは言うまでもなく、ね」


 階戸辺シナトベ蓮夜レンヤ

 三毒院サンドクイン迦楼羅カルラ


 ――あの二人であれば確かに、カスカの危惧もまったくの杞憂とは言えねえかもな。


 どっちも中坊とは思えねえくらいにハチャメチャな性格をしている奴らだ、来訪者になって特別な力を持ったとなればとんでもなく増長して、ヤベーことを仕出かしてる可能性だってあるにはある。


 常識の通用しねえ異世界に来てるんだから少しは自重ってもんを期待したいところだが、あいにくと二人ともそんなことで委縮するようなタマじゃねえしな……。


「ね。私の言いたいこと、わかるでしょうゼンタ。想定は甘く見積もっていいことなんてないわ。決闘モードじゃない、本気での戦闘。それが起こるとも起こらないとも言い切れない以上は、備えだけはしておくべきなのよ」


「だからカスカは、そんなにも熱心にスキルやステータスのことを調べてんのか?」


「いいえ? これは単に好きでやってるだけ」


 思わずなんじゃそりゃとずっこけた。


 というところで、カスカの講義はひとまず終了となった。

 なんつー終わり方だよ、おい!


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