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500.招待状

「で、鼠少女。俺たち四人を集めた理由ってのを、そろそろ聞かせてくれよ。俺ぁあの『手紙』関連のことがようやく動き出すのかと思って身構えてたんだが……ひょっとして今日は別の用件なのか?」


「いいや、その認識で合っているとも。君たちを呼び出した訳というのは紛れもなく、カーマインくんによって届けられた例の手紙に関するものだ」


 そうあっさりと俺の疑問に答えた鼠少女はシェルターの中心まで行って、誰よりも台座に近づいた。そこに置かれた紅蓮魔鉱石を覗き込んで、それからひとつ頷く。


 また特殊な目の力で何かを見たのか? それとも単に石の様子を確かめただけか。


 なんにせよこちらに向きなおった鼠少女の顔付きはやけに明るかった。


「ゼンタくんもとうに気付いているだろうけれど、一応はぼくの口からも言っておこう。あの手紙とは即ち『招待状』だと」


「招待状ね……なんも書かれてなかったあの紙切れがか?」


 これもまた一応の問い。その意図を正確に読み取ったらしい鼠少女は微笑む。


 俺の右にはユーキ。左には委員長。そのまた左にマクシミリオン。示し合わせたわけでもなく自然と横並びになって話を聞く俺たちに、彼女は満足そうにしていた。


「そう、あの白紙の紙がだ。だけどここで思い出してほしい――カーマインくんは『灰』からの伝言として、手紙だけでなくこんな言葉も届けていた。『ソースコード』。そして『それだけ言えばぼくになら伝わる』ともね……あにはからんや、その通りだった。ぼくの目には見ようとしなくても見えたからね。言うなれば暗号であり、呪文であり、数式である。そうやって秘匿された無字の文章というものが。直接脳内に飛び込んでくるそれらの解析にはぼくとしたことが少々手こずったよ――何せこの目を前提とした情報処理が必要となる代物など、長い人生でも見かけたことはなかったからね」


「文字通り初めてお目にかかった・・・・・・・ってわけだ。そんで? その隠された文章とやらの内容はどうだったよ。まさかそこに俺たち四人の名前が書かれてたのか?」


 向こうからの要望っつーならこの人選も割と納得がいく。


 俺とユーキは言うまでもなく、今代の『勇者ブレイバー』とその相棒である『死霊術師ネクロマンサー』だ。さらに言やぁ、おそらくは上位者の望み通りに魔皇をぶっ倒してもいるくらいだからな……かつて先代魔皇を打倒したのちにマリアと魔皇にも『灰』からの接触があったことを思えば、俺たちにも同じことをしてきたってなんにもおかしかねえ。


 そして委員長にマクシミリオンも、片や『聖騎士パラディン』であり、片や世界最高の冒険者ギルドだけでなく人類全体のリーダーにまでなった男だ。そしてどちらも魔皇軍との戦いにおける功労者でもある。


 リオンドやヴィオの言葉を信じるなら二人とも『灰の手』からの警戒度はとても高く、翻って『灰』からの注目も高いってことは想像に難くねえ。

 連中が協力者たる『灰の手』をどういう基準で選んでいるのかは定かじゃねえが、少なくとも委員長もマクシミリオンも、『灰』からすりゃ手に入れられるものなら是非とも欲しい駒のはずだ。


 だからこの面子であれば招待状とやらに名前が連なっていても納得できると思ったんだ。そして鼠少女には、俺たちを一堂に会させるようにと指令でもあったんじゃねえか、ってな。


「まあ、だとするならここにカルラのやつがいねーのはおかしいけどよ」


 あいつも魔皇戦における立役者だ。ダンジョンで混乱に乗じて自ら姿を消して以降の、影での暗躍。ここぞという場面で援軍を引き連れての帰還――あれがなければ統一政府セントラルはきっと跡形も残っちゃいなかったろう。


 実際その功績は『灰の手』もしっかりと認識しているようで、リオンドの口からはきちっとカルラ・サンドクインの名も出ていた。


「うん、実を言うとだ。本当はこの場に彼女もいるはずだった……けれど唯一、彼女だけがあっさりと袖にしてしまったんだよ。他の三人は話を聞いた上で、頼むまでもなく自ら志願してくれたんだけどね……変わり者だらけの来訪者の中でもあの子は特に扱いが難しい子のようだ」


「そりゃあ、元の世界でも自分のことを姫と自称するようなヤベーやつだったからな。扱いが難しいってのはクラスメートの俺たちが一番知ってるぜ」


 と、そこはいいんだが。

 今こいつ、他の三人はって言ったよな?


「あれ? もしかしてお前ら、なんで集められたかもう知ってんのか」

「はい」

「うん」


 そう左右の二人に訊ねれば、当然のように肯定が返ってきた。思わず委員長越しにマクシミリオンを見上げれば、彼もまた「ああ」と頷いた。


「つい今朝方のことだがな。これから何を行うのかは、既に彼女から聞き及んでいる」


 はぁー? じゃあなんも説明なしに呼び出されたのは俺だけかよ。なんか扱い悪くねーか? 気遣いってもんが感じられねーよ。


「どういうこったよ、鼠少女」


「そう睨まないでくれよ、ゼンタくん。だって君の場合は話の中心にいるんだ。丁寧に頼む手間をかける必要もないだろう? そんなことをしなくたって君だけは確実にこの場に立ってくれると、ぼくにはわかっていた。それだけのことさ」


 この招待状だってそうだよ、と鼠少女は手品みてーな手付きで頭に被ってる帽子の中から例の手紙を取り出して見せた。


「ここに名前が書かれているのは君だけ・・・だ」


「……!」


「向こうからのご指名と言うのであれば君一人のみ。だから応じてくれなかったカルラくんを含め、残る四名は皆ぼくの独断で選ばせてもらった。君を守るための最強のパーティを組んだつもりだよ」


「俺を守るためだって……?」


「そうさ。用心は要るだろう? ここに書かれているのは『灰』が……あるいはその裏の上位者が。君に強く興味を引かれているらしいということ。あとは面会のための手段についてのレクチャー。それだけだからね。君と会って何を話すつもりか。もしくは、何をするつもりなのか。そういうことは一切説明がない、不躾もいいところの内容さ」


 珍しく声に不愉快さを滲ませる鼠少女。けどそうもならぁな。手紙っつーよりこれじゃあ実質、命令書。それも赤紙みてーなもんだ。


 その解読とセッティングのために鼠少女はていよく使われてるってことだもんな……そりゃ若干不機嫌にもなるぜ。


 だからせめてもの意趣返しとして、指名のなかった人物まで勝手に面会の場に立ち会わせようとしてるってわけだな。そしてそれは、いざってときに俺を守るためでもあると。


 俺としても単身で『灰』と対峙するよりは断然助かりはするが……けどそんな勝手をして、逆にマズい状況にならねえのかっていう不安もあるにはある。


「なぁに構うまいよ。君を必ず呼べとは書いてあったが、それに他者を付き添わせてはいけない、とは書かれていなかったからね。これはあちら側の不手際だよ。注意を受ける筋合いも怒られる理由もない」


 なんてうそぶく鼠少女は、言ってるそれがただの屁理屈だってわかってんだろう。だがなんとしても押し通す気でいると。


 そんなのが果たして『灰』に通じてくれるかっていうと、ぶっちゃけかなり微妙ではあるが……まあ、これくらいで目くじら立てるようならその程度の奴らだってことだ。そんな連中なら恐れる必要もねえわな。


「だが考えてもとんとわからねえな。なんで『俺一人』なんだ? 注目されるのも呼び出されるのも、勇者枠のユーキとセットならともかくだぜ。どうして相棒枠の俺が単体で奴らんとこへ招待されなきゃいけねえんだ?」


「君の考えが『灰』に伝わったからだろう。そして上位者にも。『灰』の接触を待たずしてその存在を知り、神を知り、そしてその上で自ら・・神との対面を求める。ぼくの目で探っても過去にそんな来訪者はいなかった。かつての彼ら彼女らの生き様と死に様。それらが積み重なった末でのことではあるが――君こそが史上初。上位者に抗うことを決めた来訪者なんだよ」


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