45.ずっと一緒に生きよう
絡みつくホロウを、骸骨が肘打ちで引き剥がし、それから腰の入ったアッパースイングで顎を吹っ飛ばす。
骨だけのくせしてメモリの呼び出した骸骨たちはマッスルな戦い方をする。
次から次へと新しいホロウを生み出すレガレストホロウに比べて最初に呼び出したままの数だけでメモリは戦っているようだが、一対一だと基本的に骸骨のほうが断然強いんで、戦局はメモリのほうが優勢だ。
しかし言った通り、どんだけ倒してもホロウは次から次へと供給される上に、メモリは骸骨への命令に忙しいらしくその場から一歩も動けずにいる。数VS数の戦いは終わりの見えない泥沼の様相を呈していた。
――つまり骸骨でもホロウでもない俺とボチの力でどうにかするしかねえってこったな!
「おらおらおらおらぁ!」
ダブル肉切骨で周囲にいるホロウをめったやたらに切りつける。
俺もメモリの骸骨を見習ってマッスルに戦うぜ!
「おぉら一丁あがりぃ!」
集中的に切り刻んだホロウの一体が空気に溶けるように消えてった。これがホロウの死のようだ。元から死んでるモンスターを殺しなおすってのも妙な感じだが、アンデッドってのはそういうもんだと納得しておく。
「効きづらいってだけでダメージは通っちゃいる……だったらやり様だっていくらでもあるぜ!」
次の一体に目ぼしをつけて、また切りまくる。他のフリーになってるホロウが俺をバシバシ叩いてくるが、そっちは無視するかボチの牙で追い払ってもらう。とにかく一体ずつ確実に、俺の手で倒すことが重要だ。
何を考えているのかって?
そりゃ当然。
『レベルアップしました』
――これに決まってらぁ!
「めんどくせえ戦況ならこれに限る! 名付けてスキルガチャだ!」
ただの運任せかよってツッコまれそうな気もするが、こいつには実績がある。なんせ俺はこのやり方で森を生き抜いてきたようなもんだからな。
手に入ってすぐに役立たないスキルってのは、これまで【悪運】と【死体採集】くらいしか例がない。それ以外は全部、即使える有用なもんばっかりだ。つまり状況を打破したい際に新たなスキルへ期待をかけるってのは、そう分の悪い賭けでもないはずなんだ。
「早く早く! ステータス画面を見せろ!」
戦闘中で気もそぞろな俺が注文をつけると、それに応えてかパッとすぐ画面が開いた。
『シバ・ゼンタ LV14
ネクロマンサー
HP:80(MAX)
SP:48(MAX)
Str:64
Agi:48
Dex:29
Int:1
Vit:44
Arm:40
Res:14
スキル
【悪運】
【血の簒奪】
【補填】
【SP常時回復】
【隠密:LV2】
【活性:LV1】
【心血】
クラススキル
【武装:LV4】
【召喚:LV3】
【接触:LV2】
【契約召喚】』
うわ、マジかよ! 新スキルが手に入ってねーじゃんかよ?!
変化があるのは【接触】と【武装】か……どっちもLVがひとつずつ上がっている。
だが本家っぽい相手にいくらLV2になったとはいえ【接触】が有効打になるとは思えねえ。
ってことは、【武装】で何ができるようになったのかに全てがかかっている……!
『選択可能:【肉切骨】
【骨身の盾】
【恨み骨髄】
【不浄の大鎌】』
ふ、不浄の大鎌だと?
それが俺の新しい武器か。
また嫌な文が書かれているんだろうなとは思いつつ、説明も見る。
『【不浄の大鎌】:腐った臓物を固めて作られた蝕みの鎌。刃はついていないが、触れた者は切られるよりも苦しむことになる』
ほらやっぱりな。
いつも通りの悪役が使いそうな感じの武器だ。
刃のついてない鎌か……肉切骨も恨み骨髄も似たようなもんだしそこは別にいいんだが、さすがに臓物で出来てるってのは使うのを躊躇っちまうな。振り回していいのかよ、そんなもんを。
てか『触れた者は』ってあるが、これまさか持ってるだけで俺にも悪影響があったりする系じゃねえだろうな? 呪いの装備的な。
……正直、気は進まん。
進まんが、これが現状唯一の打開策になり得るものだ。
ええい、ままよ!
「【武装】! ――『不浄の大鎌』!」
俺の手が自然と動き、空間から引き抜くようにしてでっけえ鎌を取り出した。まさに死神が持つような大鎌。しかし説明にあった通り刃の部分は臓器がいくつも密集したようなもので出来ており、しかもそれが脈打ってる。
き、気持ち悪い……!
骨張ってはいるものの柄の造りが普通(?)の鎌と同じなのは幸いだったが、持ってていい気分はしねえぞこれ!
「だが……悪影響みたいなもんはなさそうだな。単に異様にキショいだけで」
そこは一安心ってところか。まさか使い手を呪うようなもんがスキルから出てくるとは思いたくねえが、ネクロマンサーだとそれも割とあり得そうなのが怖いんだよ。
まあそれはともかく、今はこいつの性能を試してみるとしますかね!
「やるぜボチ! 俺を援護してくれ!」
「バウッ」
鎌を担いで俺は走り出す。その横をボチもついてくる。俺を狙って飛んでくるホロウを常にボチが牽制してくれるおかげで、移動はスムーズに済んだ。
「オォロロロロ!」
「! 気付きやがったか」
さっきはメモリとの指揮対決に集中していて、ボチの攻撃を食らうまで視線も寄越さなかったレガレストホロウが、今度は先んじて俺の接近を察知してこっちを向いた。
ちっ、無防備なままなら攻めやすかったがそう都合よくはいかねえか。
だがこの反応の早さはレガレストホロウが俺のことを――いや、俺の持つ『不浄の大鎌』を警戒してる何よりの証拠だ!
「……! ホロウの勢いが弱まった。拘束する」
俺が勝負に出ようとしているのを察して、レガレストホロウの隙を突いてメモリが骸骨の動かし方を変えた。
「『死の軍勢・涯』」
地面に引っ込むように骸骨部隊がまとめて姿を消した。すると次の瞬間、レガレストホロウの真下の地面から骨だけの巨大な腕がにょっきりと生えた。
「――オォロロロォ!」
骸骨の腕に足を掴まれて、レガレストホロウは移動ができなくなった。
すげえなメモリ、こんなこともできんのかよ!
「メモリちゃんのほうが遥かにネクロマンサーらしいことしてる気が……」
なんて声が離れたとこから聞こえたような気がしなくもないが、気にしねえ! メモリがくれたチャンスを無駄にはしねえぜ!
「ボチ、頼む!」
「バウ!」
今度はさっきと逆に、ボチが俺の前に出て足場役をしてくれた。
その上に飛び乗って、俺はボチの跳躍と合わせて跳び上がる!
「【活性】発動! うぉおおおおおおっ!」
「!」
ボチの助けと身体強化によって、レガレストホロウの頭の高さまでジャンプできた。そんな俺を、骸骨の腕を振りほどこうと必死になっていたレガレストホロウは見たが、もう手遅れだぜ。
俺の鎌は既にお前に狙いを定めてんだからよ!
「蝕め、不浄の大鎌ぁ!」
鎌を振り下ろす。レガレストホロウの頭をざっくりと切ったそれは、一見はなんの手応えもなく擦り抜けただけのようでもあったが。
「オ――オォ――オォオォオォォォオ!」
じわぁ、と切った部分から毒々しい色をした何かが、よろめくレガレストホロウの全身に広がっていく。そしてそれに、こいつはどう見たって苦しんでいる。
これが不浄に蝕まれた状態、なのか? アンデッドに対しては効果がないことを一応は覚悟してたんだが、そんなことはねえみたいだ。
不浄の大鎌は生きてる相手だろうと死んでる相手だろうと関係なく、切った対象を蝕んじまうんだな。
「よっと」
「――リームス村長!?」
「ん?」
レガレストホロウの尋常じゃない苦しみ方からして、これで決着だろうと思いながら着地した俺は、ミルスの声に振り返った。すると、ほとんど四足歩行の獣にも近い走り方でこっちに駆けてくる村長が目に入った!
「うわっ!? ……あ?」
襲いかかってくる、かと思いきや村長は俺の横を猛然と駆け抜けてレガレストホロウの下へ。
「ミェル! おお、ミェル! 痛いのかミェル――わしの体を食え! 村人たちを食って力を付けたように、今度はわしを使え! そうすればミェル、きっと大丈夫だ――あぁミェル! こっちを見ておくれ!」
「オォォオォォオォォォォォオォ!」
「っ、そいつはあんたの娘じゃねえぞ、村長! そこにいちゃ危ねえから離れろ!」
絶叫し続けるレガレストホロウの体からは閃光が走っていて、今にも弾けそうだった。俺でも危険だってわかるってのに、村長は自分からレガレストホロウに近づいていく。まるで俺の声なんかちっとも聞こえてねえみたいだった。
「ミェル! さあ! わしを食え! わしの血肉をお前の力にするんだ! そしてずっと一緒に生きよう! 新しい身体で蘇って、ずっとずっとわしと――」
「くそったれ、この盲目ジジイが!」
言っても聞かねえならぶん殴ってでも連れ戻すしかねえ。
ぶっちゃけ俺も今のレガレストホロウに近寄りたくはなかったが、そうも言ってられねえんで村長のとこへ走ろうとすると――。
「ダメです! ゼンタさん!」
「なにっ、」
サラの鋭い静止に、思わず俺が止まった瞬間だった。
「うぐぅおおおおっ!?」
ドパァァン! ととんでもない激しさで、案の定レガレストホロウの全身が爆散しやがったんだ。
『シバ・ゼンタ LV13+1
ネクロマンサー
HP:76+4
SP:45+3
Str:60+4
Agi:44+4
Dex:26+3
Int:1+0
Vit:42+2
Arm:38+2
Res:13+1
スキル
【悪運】
【血の簒奪】
【補填】
【SP常時回復】
【隠密:LV2】
【活性:LV1】
【心血】
クラススキル
【武装:LV3】+1
【召喚:LV3】
【接触:LV1】+1
【契約召喚】』




