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163.俺様と共に来い

「なんの冗談だ? レンヤ。忘れたくても忘れられねーよ、お前みたいな暴れん坊は」


「ヒャハ! そうさ、忘れたなんて言わせる気もねえ。だがてめーに暴れん坊と言われちゃ俺様もお終いだな!」


「俺ぁお前ほど喧嘩っ早くねえっての。……お前のこった、どうせこっちでも好き放題やってんだろ?」


「ハン、流石に俺様のことをよくわかってやがるじゃねえの。当たってるぜ。俺様はなぁ、ゼンタ。この異世界で君臨することに決めたよ!」


「く、君臨だぁ?」


「おうよ! 出てこいてめーらぁ!」


 困惑する俺を他所にレンヤが誰かを呼んだ。すると、レンヤとともに物陰に潜んで俺たちのことを見ていたらしい奴らが続々と出てきた。その数は全部で四名――そしていずれもが見覚えのある顔だった。


 全員、クラスメートの男子に違いない。


「……!」


 こんだけいっぺんにクラスメートと再会すんのは初めてなんで、俺はかなりたまげた。しかも探すまでもなく向こうから会いに来てくれてわけだからな。


 ……けど、悪いとは思うんだが、こいつらの名前がパッと出てこない……一人もだ。


 ぶっちゃけほとんど絡みのない男子たちだし、そもそも俺に友人らしい友人っつーのがいないって問題もあるし……うん、これは仕方ねーよな。別に俺が薄情ってこたぁねーはず……ねーよな? とりあえずそう思っとこう。


 で、だ。


 常に捜索中のクラスメートたち。それが一気に五名も見つかったってのに素直に喜べねー理由がもうひとつある。


 それはこいつらが、よりにもよってあの・・レンヤに引き連れられているってことだ。


 俺の懸念を知ってか知らずか、レンヤはにへらと笑ってみせた。


「ま、こりゃただの顔見せだ。ここへ来た用件とは関係ないから気にしなくてもいいぜ」


「用件ってのは、なんだ。自分らの無事を知らせにきたってわけじゃあなさそうだが」


「ヒャハ! 俺様が無事かどうかなんて知らせるまでもねーこったろう? いつでもどこででも俺様は俺様として生きている。欲しいもん手に入れて気に入らん奴をぶっ殺して! 世界が変わろうとそれだけは変わらねえのさ!」


 ……やっぱこいつはこういうやつだよな。カスカ命名の三ヤベの一人。俺と同様クラスの連中や教師たちからは不良扱いされてる乱暴者――いや、扱いっつーかこいつはマジもんの不良なんだがな。


 ちょいとトラブルに巻き込まれやすく、その解決のために結果として暴力沙汰に発展しちまうことが多々あっただけの俺とは違い、レンヤは自ら率先して荒事のほうへもっていこうとする悪癖がある。


 喧嘩大好きマンのこいつと仕方なく喧嘩しちまう俺。

 戦場が重なって共闘したこともあれば、敵同士としてガチの殴り合いをしたこともある。


 まあ、そんなんだから学校ではまとめて不良っつー括りに入れられてたわけだが。


「お前も……良くも悪くも変わってねーんだな」


「ヒャハハ、変わるもんかよ。お前だってそうだろ? ゼンタ。訓練か喧嘩か知らねーが仲間を容赦なく殴り飛ばすたぁな……ヒャハ! 腑抜けてなくて安心したぜ! それでこそ誘いにきたかいがある」


「なんだよ、どっかへ遊びにでも行こうってか」


「バーカ、違ぇよ。こりゃ勧誘だ。――ゼンタ、俺様と共に来い」


 共に来い。

 色々と解釈のしようがある言葉だが、ここでの意味は考えるまでもない。


「おいおい、俺を引き抜こうってのか? 一ギルドのリーダーを?」


「ヒャハハ……そう強がるなよゼンタ。お前、焦ってんだろ」


「……!」


「変わらねえとは言ったが、ここは異世界。元の世界にゃなかった警戒すべきもんが多くある。多すぎるくらいだ! 流石の俺様をしても用心は必要でなぁ……所謂情報収集ってのを常に欠かさねーようにしてんだ。今の俺様には顎で使える部下も大勢いることだしな。だから、お前とお前のギルドの置かれた状況だってよーく知ってんだぜぇ?」


 顎で使える部下、だって? こいつにそんなもんができたのか?


 後ろで整列してる四名の男子のことを言ってるのか……雰囲気的にはそう見えるが、しかし大勢と言ったからにはこの場にいる人数だけではない気もする。


 しかしどういう風の吹き回しなんだ。一匹狼を気取って馴れ合いを嫌ってたくせに、今はなんかの族でも立ち上げたってのかよ。


「へえ、俺の状況? そりゃどんなもんか是非教えてもらいてえな」


「ヒャハハ! なら答えてやるよゼンタ。お前が欲しがってるもんはずばり戦力……! 不思議はねえさ、魔皇軍との戦いを控えてるんだからそれも当然だよなぁ。だがその内心とは裏腹に、ひっきりなしに訪れる入団希望者は全員不合格にして追い払っているって言うじゃねえか……そりゃ何故だ? 答えは簡単、そいつらがてんで弱っちいからだ!」


「……、マジかよ」


 ギルドの近況だけでなく、まだ一般には出回ってないはずの対魔皇軍の招集についての噂まできっちり拾ってやがる。侮れねー情報収集力に思わず喉を鳴らしちまった。


 レンヤの言ってることは本当だ。


 魔皇案件が世の明るみに出て以降、そのきっかけとなったユニフェア教団事件のことも広く知られるようになり、その結果……ギルド『葬儀屋アンダーテイカー』には多くの加入を望む者たちがやってきた。


 それは今、少しでも戦力の補強をしたいと考えてる俺にとっちゃ嬉しいもんではあったんだがな。けれども残念ながら、誰一人として入れてやるわけにはいかなかった。


 彼らの大半は俺たちの活躍に憧れたり、魔皇軍に義憤を燃やしてるようなのだったんだが、それじゃ認識が甘いと言わざるを得ない。魔皇軍と切った張ったの矢面に立つことを想定してるやつも少ないながらにいはしたが、そういう連中も強さが足りていなかったんだ。


 俺たちはこれから危険の真っただ中へ突入しようとしている。ここで戦力として成り立つのはアップルやテッカに並べるくらいの強者だけだ。そしてそれだけの強さを持つやつは誰もいなかった。


 一から鍛えたり成長を待ってられるような猶予がない以上は、訪れた全員を断るしかなかったってわけだ。


 ギルドハウスの強化やビートとファンクの成長度合いを確かめたのも、人員補強ができないからこその補完的な行動とも言えるだろう。


「ったく……馬鹿だぜゼンタ。お前は馬鹿だ。何を大人しく長いもんに巻かれようとしてやがる?」


「あぁ? どういう意味だ」


「セントラルなんかに従おうとしてるのがまず間抜けだってんだよ。そんなことに意味はあんのか? なんでお前が魔皇軍と戦う必要がある? 現地の問題は現地民に任せてよぉ、俺様たち来訪者は気ままな異世界生活を楽しむべきだ! そうは思わねえのか?」


「へっ、なんだ。つまりは心配してわざわざ来てくれたってわけか? そりゃあ俺だって、やらんで済むことならやりたかねーけどよ」


 だが魔皇を放っておくことはできんだろう。

 もしも魔皇軍がセントラルを下せば最悪この異世界は滅んじまうかもしれねえんだぜ。


 まだ魔皇が何を狙って逢魔四天を動かしてんのか読めてないんでなんとも言えないんだが、少なくとも。それはきっとまもとな理由じゃないし、魔皇が勝ってまともな世界になるはずもない。


 俺はそう確信してる。

 だから戦うんだ。


 そんな理屈を抜きにしても、こっちにゃこっちで因縁もあることだしな。


「俺が抜けてアンダーテイカーが解散しちまえば、招集も空振りになるってことだろ? 政府様の命令でも従わなくて済むと……気遣ってもらっといて悪いが、なんだかお前にしちゃコスい策としか思えねえな」


「いいや? 俺様の策はもっと先で活きる。ただお前を戦争の駒から外すってだけじゃあねえ――勝利者にしてやろうってんだぜ」


「……? それは戦争の勝利者ってことか?」


「ヒャハハ、違ぇ違ぇ! 全然違ぇよゼンタぁ! ……俺様が言ってんのは、戦争の終わったあとの話さ。魔皇が勝とうがセントラルが勝とうが、軍配の上がった側も決してただじゃあ済まない。無事には終わらない、疲弊しきっている! 戦争ってのはそういうもんだろう?! 圧倒的なワンサイドゲームにさえならなけりゃ美味ぇ美味ぇ漁夫の利がそこに転がるんだぜ……!」


「レンヤ……お前、まさか!?」


「ヒャハ、お前にも俺様の目的が読めてきたかぁ? だったらここらで改めて自己紹介をしようか!」


 着こなしている白のロングコート。その襟を返した裏側には傷痕のような『三本線』が縫い付けられていた。


「闇ギルド『廃れ屋敷アバンダンド』所属、階戸辺レンヤ! それが今の俺様のくそったれな肩書きさ――ヒャハハッハハハハ!」


 げらげらと笑うレンヤの手元じゃあ、忌まわしい三本線も一緒になって愉快そうに揺れていた。


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